見出し画像

私が夏に思うこと

私が夏に思うのは
故郷の山の濃い緑
うるさいほどの蝉の声
熱く蒸れた土の匂い
私が夏に思うのは
故郷の海の深い青
寄せる波は絶えることなく
いつも独りを教えてくれた

私が夏に思うのは
冷たい雑踏と室外機の熱い風
孤独の街の白い無機質
私が夏に思うのは
能面を付けて歩く人の群れの中での
独りを告げる耳障りな足音

どちらも私たちが住む世界。
同じ青い空と白い雲が広がるが、同じ空の下の世界とは思えない。
何が違うのか、ただ私の勘違いであるのか、私には分からない。
住む場所、生活する場所で『独り』の意味が違うようである。
山の中や海の上での独りは享受できるが、都会の人ごみの中での独りには辛いものがある。
自身で独りを求めるならばいい。でも、求めていない独りは暑い夜もさめざめと私の背筋を凍らせてくれる。

私が夏に思うこと
もう見ることの出来ない故郷の山河
私が夏に思うこと
また今日も歩かねばならぬ焼けたアスファルト



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?