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梅雨の思い出 (薔薇でおもいだす)

大阪は中之島公園

『ほろり落とした幸せを
 あなたと二人拾う街』

クールファイブの中之島ブルースの舞台でもある。
普段はそれほど人は多くなく、いつも仕事の帰りにここを通りその日の上司への報告を歩きながら考えた。
しかしながら、この時期だけは特別であった。

五月、一年で一番素晴らしい季節を独り占めするかのように中之島公園のバラ園は一斉にカラフルな薔薇の花で一杯となり、それに群がる蝶のようにたくさんの人で歩きにくくなる。
人はその目に、その心に美しい薔薇の姿を焼き付けたくてやってくるのであろう。

私のよく知る女性は薔薇は強い、その強さに負けるから薔薇を苦手だと言う。

実は私もある時から薔薇が苦手である。

やっとこの梅雨時期に入り、人影はまばらになり、目にする薔薇の花は少なくなって私は足を踏み入れる勇気が出た。

私はここの薔薇を見るたびに悲しい思い出が甦る。

もう二十年以上も前の事である。
中之島公園付近の公の施設の免震工事の計画が水面下で動き出した。
いち早くその計画を進める委員会の存在を突き止め、座長の旧帝国大学の某教授とコンタクトを取り専門メーカーと共に技術協力を申し入れ、受け入れてもらった。
打ち合わせは数十回一年以上に渡った。
外堀、内堀まで埋めて、その仕事は間違い無く流れてくるはずであった。
しかし、そうはいかなかった。
どこからか私たちが動いている情報が漏れ流れてしまったのである。
もともと施工した会社が強いという業界でのしきたりが、まだ当時はあったのだ。
完全にオミットされ、入札にも入れなかった。
ちょうどこの時期だった。

簡単に書いているが誰もがしない事をするには、誰もしたことのない努力がいる。
それを『しきたり』という簡単な理由だけで排除出来るそんな業界だったのである。
今は多少は変わっていると聞くが、歴史がそうさせてきたもの、世の中の仕組みと同じでそんな簡単に根本まで変われるものではないと思っている。

梅雨時であればその鮮明な色をまとう薔薇は気持ちを上向かせてくれるはずなのに、私にはそうではない。

たぶん花には縁の無い男なんだと思う。

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