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嚔(くさめ)

クシャミの古語である『くさめ』に縁のある人はそれほど多くはないだろう。

私も同様、高校の古文か、ずいぶん以前に風邪薬のCMで「くっさめ、くっさめ」とやっていたのを思い出すくらいである。

妙に頭に残っている『くっさめ』が気になり調べると1985年の風邪薬のCMであった。

なんと私が社会人となった年である。

基本的にテレビはNHK以外はみない。

思い起こすとこの時は東京都足立区竹ノ塚の会社の独身寮にいた。

この独身寮、私がいた建設会社が、受注目的で証券会社の女性独身寮を買い取りコンバージョンしたもの、作り付けのベッドが妙に小ぶりだったのを記憶している。

食堂ではいつもテレビが付けっぱなしだった。 

ここのテレビで旅客機の山中への墜落事故もみた。

盆休みに帰省もせずにずっと関連の速報をみていた。

それと同じ時代のテレビでみた『くっさめ』なのである。

私たちが社会人になった時代、バブル期にまっすぐに向かっている時代で忙しくて風邪など引いている間は無かった。

『くっさめ』など無縁の時代だった。

古語だからというわけではないが、この『くっさめ』にはゆるりとした時間の流れを感じる。

現在より、社会人になりたての頃、それよりも前の子どもの頃、それよりもずっと昔の『くっさめ』の時代。

今を逃げるわけではないが時々思い出さなければならない感覚だと思う。

遅れ出立しゅったつした日本のデジタル化、ますます時間は速く進み、無駄は無くなってしまうのだろう。

そんな街中を、ビジネス街を『くっさめ、くっさめ』と、もちろんマスクもすることなく、歩く老人がいたらふと我に帰り、置いて来てしまった大切な時間を思い出せるかも知れない。


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