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生を感じる朝

発散の方法を知らぬ若さであった。
仕事で身体も心もクタクタで、帰ってゆっくり休めばいいのにそんな事は許してくれない若さがいた。
道着に着替えて合気道の稽古を始めると、流れ出る滝のような汗は私の身体に張り付いていたネバネバした嫌な汗を全て落としてくれた。
そして帰りは決まって酒だった。
流した汗のもとを取り返すかのように浴びるほどの酒を飲んだのであった。

その年齢のタイミングでなければ出来ないことがある。
その年齢のタイミングでやっておいた方が好ましいことがある。

しかし、往々にしてそうはいかないのが人生でもあろう。
だから面白いのだと、私は思いたい。

外してしまったタイミングを嘆きたくはない。
外してしまったタイミングを誰かの所為せいにはしたくない。

それが自身のベストのタイミングなのである。
一度の人生、そう考えて前向きに生きる方が賢い生き方である。

足らなくなってしまった体力は少しふくれた知恵が補ってくれる。
揉まれて生きて来た時間はいい意味での狡猾さを育ててくれた。


暑さの夏に耐えてきたからこの先に予感できる。
繰り返しやって来る四季の中で生きるから感じることの出来る予感がある。
失敗も生きるために必要だったんだと思わせてくれる季節がやって来た。
ああ、この日本で生まれ育ってよかったなと、父に母に感謝する朝がやって来た。


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