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おもいださせる一枚の絵葉書

まったくそんな気がしないのだが、暦の上ではとうに立冬を過ぎてしまい季節は冬となっている。
なんだかはっきりしないこの気候は我々高齢者予備軍の脳に悪影響を与えるような気がする。

昨日、叔母さん、知人たちにハガキを書いていてストックの絵葉書に柳原良平の絵葉書を見つけた。
柳原良平の絵が好きである。
郷愁を感じさせる。
忘れ去られつつある時代、昭和の匂いがするからかも知れない。

「トリスを飲んでHawaiiへ行こう!」
今、このキャッチコピーをご存知の方はそんなに多くないのではなかろうか。
調べれば1961年、昭和36年に寿屋(現在のサントリー)が当時売り出していたウイスキー『トリス』の景品にハワイ旅行を登場させた。
まだ海外旅行が夢であった頃だ。
その時のキャッチコピーである。
作ったのは寿屋宣伝部にいた山口瞳、軽快で記憶に残るキャッチである。
柳原良平も宣伝部の人間だった。
柳原の描いたウイスキー樽を彷彿させるおじさん、アンクルトリスが登場する。(ヘッダー画像のおじさんがそれ)
まだ一般に普及していないウイスキーを根付かせるための作戦だったのだろうか。
だとしたら、それは成功したのだろう。
我が家にもトリスやニッカの廉価版ウイスキーのレッドの大瓶があったのを憶えている。
当時のまだものの溢れていない時代に、このハワイ旅行の景品が、このキャッチコピーが、そしてアンクルトリスが、人々の耳も目も心も奪ったのであろう。
さすが、山口瞳、柳原良平、そして開高健もいたサントリー宣伝部である。そして、今なお私の記憶には残り、遠い昔になりつつある昭和を思い出させる。
過去にすがるつもりは無いのだが、今より生き易かった時代、人を助ける気持ちを持った人間が多かった昭和だと思う。

以前、わが道場の人の良いアンクルトリスに誘われて、通天閣の下あたりにある『会員制』となっているバーに連れていってもらった。
そこでマスターに見せてもらったのがこの『ウィスタン』である。
名前の通りのウイスキーの炭酸割り。
今はコンビニでも買えるハイボールの前身である。
時期早尚だったのであろうか、それとも価格の問題か、知る人は少ない。
希少価値のある年代物のハイボールであった。
さすが通天閣である、自身の膝元にこんな昭和の遺物を残していた。

中身は入っていた、サビとヘコミが経った時間を感じさせた

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