『違法の冷蔵庫』 #ショートショートnote杯 応募作品　その２

白物家電が売れなくなり、業績低迷していたM電機は予想を上回る台数の冷蔵庫を出荷し、特別賞与の支給も必至だった。
開発を担当した宮本は不思議だった。
「なぜこれだけのことで、、」

従来密閉式の冷蔵庫に冷気を閉じ込めたままで空気を入れ替えることの出来る新型の換気装置を宮本は開発した。
庫内に新鮮な空気を保つこの冷蔵庫は健康食ブームに便乗しての大ヒットとなった。

不思議な売れ方に宮本は疑問を感じた。
単身者が大型冷蔵庫を買う。

事件は起きた。
停電となったワンルームマンションの一室の冷蔵庫から入居者の死体が発見されたのだ。
他殺の疑いで警察は捜査を始めたが、すぐに事故死と判定された。
この冷蔵庫で冬眠をする若者たちがひそかに増えていたのだ。
将来に絶望し、流行り病で職を失った若者たちが、寝てこの難局を乗り切ろうとした。

すぐに販売禁止となったが、この『違法の冷蔵庫』の回収されていない台数は未だ把握できていない。

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