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『しゃべるピアノ』 #ショートショートnote杯 応募作品 その5

十八世紀、イタリアで生まれたピアノは、今ほどおとなしくなかった。その頃はとてもおしゃべりだった。しゃべることが当たり前のことだった。
当時は教会で神父の指導のもと、信者と讃美歌を歌い、神父とともに懺悔を聴いた。神父の良きパートナーだったのである。
神父との仲のこじれは少女アンナへの恋からの仲違いからだったのである。神父の少女への禁断の恋、そしてピアノのピアノ界での逸脱の行為、二人は道を外していた。神父は神に仕えて初めて嘘をついた。自身の禁断の恋を棚に上げ、ピアノの逸脱だけ神に報告したのであった。
神はおしゃべりが過ぎていたピアノにお灸をすえる機会を見計らっていたところであった。
そして、『しゃべるピアノ』は現在のピアノとなった。
そんな大人の事情など知る由もないアンナがおじさん神父など相手にするわけがなかった。
音楽を愛したアンナはピアニストとなり、死ぬまでピアノを愛で、大事に弾き続けたのであった。





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