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母を訪ねて三千里(その1)

目が覚めると昔見た台湾の海が眼下に広がっていた。オレンジ色のタンカーが少し離れて同じ方向に向かう姿が異様だった。
以前台湾にやって来たのはもう10年も前になる。その時にも淡水の老人ホームにまで行き黄絢絢に会った。
絢絢とはかれこれ50年以上の付き合いになる。台北の大学病院で看護師をしていた絢絢は台湾に初めて導入する透析の研修のために日本まで派遣されてきていた。その研修先の病院に母がいた。大勢の研修生がやって来た。母は分け隔てすることなくどの研修生も同じように面倒をみていた。里心がついた彼女たちによく台所を開放し、故郷の料理を作らせた。活気ある台湾の言葉が飛び交い、嗅いだことのなかった香辛料の匂いで小学生だった私は行ったことの無い異国を感じていた。

関空から日本を離れた。はじめてのピーチ、やや不安。

何十人という台湾の女性たちが私の家を出入りしたが、最後まで付き合いをしたのは絢絢だけであった。私の母ハルヱよりも年上の絢絢といまだに付き合いがあるのは不思議ではあるが、人の相性というものであろうか、不思議とこの絢絢には事あるごとに何を言われても腹が立つことが無かった。

ひさびさの台北駅、相変わらずホームレスっぽい人がいる。

でも高校二年の時、進学を選択せずに就職を希望した私に台湾で絢絢にこんこんと説教らしきことをされたことがある。真剣に私の将来を案じてくれているなと感じた。でも私はそのことよりも兄のことで絢絢と口げんかになったことが記憶に濃く残っている。「ひできがどうしてそこまでお兄ちゃんのことを考えないといけないの。」「お父さんとお母さんの問題よ。」「あなたは自分のことだけ考えなさい。」そう言われたが納得いかず、ずいぶん反論したのである。

元気な台北の街が好きです。

でも50年過ぎてしまえば、私は東京の学生生活で実家を顧みることは無く、流れで就職したゼネコン・設計事務所では仕事を理由に家により付くこともしなかった。最後の最後に仕事を放り出して両親の死に水を取り兄を施設に放り込んだ。筋の通らぬ生き方に反省しか思い浮かぶ言葉は無いのである。
絢絢は110歳近くまで生きたお母様と最後までともに生きた。そして、最後を共にしたお母様のいらした老人ホームに今一人で生活している。いい意味で言葉と違う生き方をして来た絢絢を私は尊敬もするし人間として好きである。そして若かった私に影響を与えてきた絢絢の一言一言が心に沁み残っている。でも、もう時間は残っていない。コロナの喪の明けた台北に思い立ってやって来たのであった。

体調が万全ではなく重いものは食べたくなく、エビワンタンメン150元、600円くらいでしょうか、中山のまあまあ高級店に入ったので値段は少し高め、気温34℃涼しい店を避難所に選びました。

なんだか街がところどころ綺麗になっているような気がした。半導体の国、台湾のイメージが私にはあるが、観光立国でもあるから国の施策でこんなところにも税金を使って入るのであろうか。以前と変わらない雰囲気のなかに歯抜けになった一軒家ほどの面積の公園がパラパラとある。施工と管理は誰がしているのか気になる。こんなところまで来てもそんなことが気になるのを職業病というのであろう。

大きな公園も小さなさんこんなにも花が咲きます。私の知らぬ花、日本では見られない花です

ふと気がつくとオブジェが、自然と調和させたウィットの利いた置物かと思い近づくと、、。
なんと本物の鳥、初めて見る鳥であった。

まったく動かず、この鳥も私と同じで暑さに参ってるのかと思いきや、、

この日の最高気温は36度だったとのこと。
日本の暑さにもまだ慣れぬ身には厳しい日中の行軍だった。
この鳥は何を考えているだろう。
そんなことを考えてもわかるわけもないのにずっと見つめていたがまったく動く気配は無し。
そのうちどこかからネズミでも走り出てくるのでしょうね、きっと。

考える鳥🐦

そっとしてその場を離れた。
私を歓迎してくれている違いないと勝手にそう思い。

龍山寺

近接にビルがある街のなかにある龍山寺は見慣れていない私には不思議な寺である。でも。こんな場所にあった方が人は寄り付きやすいだろう。皆さんの信仰の熱心に頭が下がり、日本に欠ける何かを感じる場所である。

ウロウロせずに帰って寝ました。

荷物をホテルに置いて龍山寺まで足を延ばした。この龍山寺は40年以上前に絢絢に連れて来てもらった思い出の場所。たぶんまた二人で来れることはないであろう。この歳までにもう少し台北まで足を向ければ良かったと短くはない自分の人生を振り返って龍山寺の界隈を歩いた。
でも、疲れた。
早々に引き揚げてシャワーを浴びて寝た。ここにやって来る直前に急に頼まれた仕事のためにした二晩の徹夜がきいた。明日は絢絢に元気な顔を見せなければならない。そう思いホテルのベッドに吸い込まれるように寝たのであった。




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