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夏のみかく

旬の味覚。
秋には敵わないだろうが夏にも多い旬の味。
生きとし生けるもの全てが力強く活動する時期、一番元気な命を頂いているのがこの夏の味覚ということになろうか。
だから私たちは心して頂かねばならないのであろう。

関西に来てスーパーでハモ皮をよく見かける。
高価な本体には手が出ないが安いハモを時々買って酢の物にする。
鱧は自分で料理する魚じゃない、玄人の手で歯ごたえもあるなんとも言えない夏の味覚に変わる。

梅肉で食べるのが定番だが、私はわさび醤油がいい。
暑い時期の梅肉は爽やかだが梅の味が強すぎて鱧のコクを殺してしまうような気がする。
そして少し早いが松茸の土瓶蒸しの鱧の出汁をちびちびやるたびに口に広がるコクが好きである。

これまで鱧を買って自宅で食べたことは無いが鱧皮はよく買った。
スーパーで買ったハモ皮はフライパンで空炒りしてオマケに付いてくる甘だれを使って酢の物を作った。
ハモ皮は私に酢の物を教えてくれた。
二杯酢三杯酢を教えてくれた。
きゅうりの輪切り、千切り、蛇腹切りを教えてくれた。
鱧は私の料理の師匠かも知れない。 

社用で行った料理屋の鱧は私がスーパーで買うハモ皮とは別物のようである。
ゼネコンでの営業時代、京都でよく食べた鱧は視覚、味覚では美味いものだったのだろうがこの歳になると変わった。

早い午後にハモ皮の酢の物を作り冷蔵庫にしまう。
しばらくは暑さに耐えて家の片付け事を済ませてシャワーを浴びる。
そしてクーラーを効かせた部屋で冷えたハモ皮酢を突きながら熱燗で一杯やる。
こんな心での味覚は金で買えるものではない。

知らねばすんだものを知って後悔する事もあるが、知らねばたどり着かない事も多々あるように思う。
鱧は私の人生の師匠でもあるのかも知れない。

さあ、今日の休みはスーパーで鱧皮を探してみようか。



写真は母の実家から届いたこの夏の味覚、鱧皮の酢の物の写真はそのうち登場させます。

あなたは陽を浴びた温かいブドウを食べたことがありますか?

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