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梅田の夜はふけて

昨日は休みの日、昼から梅田に出かけて人と会った。
私より年上であるが活力のある先輩である。
技術屋でありながら文学歴史への造詣が深い。
読書会を主催してもう三十年も続けている。
仕事を通じてのお仲間が多く、そこで関係を深めて実際の仕事にもつなげている。
ご自宅まで何度か伺ったが奈良の有名な神社近くに50年以上も前に居を構え、お宅の前の小高い丘は古墳である。
貸農園で奥さんと野菜を作っている。
伺った帰りにはたくさんの野菜を土産で持たせてくれる。
お子さんは三人とも娘さん、二人はまだ嫁がずその一人は新聞社の文芸部長、一人は物流の会社で配属されたタイに居着いたまま30年も帰ってこなかった人。
もう一人の娘さんだけ家族を持ち私大の職員をするキャリアウーマンである。そこのお孫さんが目に入れても痛くないほど可愛いそうである。

私はいつもプライベートな話まで伺いながら、仕事につながる相談をしている。
傘寿を越えた大先輩は梅田の都市開発の歴史を作って来て、これまでの梅田の歴史に明るい人なのである。
どんなプロジェクトにもこんな人が必要だった。
そしていつも『井戸を掘ってくれた人』を大切にして来た。

この回遊魚のような先輩にいつまでもお元気でいていただくためには私のような頼りない偽扶養家族も必要なのである。
ゼロから有形のものを作り上げるには定石はいつも無かった。
人と付き合い、酒を飲む。
一見無駄に見えるそんな中からいろんなものが生まれてきた。
『1+1=2』は分かり易く簡単である。
でもいつまでも『2』でしかない。
『X』を入れた掛け算をしなければならない。
時々そんなことも考えながら酒を飲む。

歳とともに酒は弱くなり、体力も落ちて来る。
こんな夜のためにも身体を鍛え、いつまでも現役でいたい。
大先輩を見習おうと思いながら途中までお送りし、ふらふらと早春を感じる夜風に頬を撫でられながら自宅に向かった。


一軒目
三軒目
四軒目(二軒目は欠番)

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