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今日という一日

昨日のことである。いつもこの師走の上旬に私たちが所属する合気道の団体の演武会がある。場所は大阪城にある修道館、大阪市の武道館である。
そこで所属各会の子ども、学生、成人達が一年間の稽古の成果を披露するのである。
私は行って一日審査のお手伝いをするだけである。四段までのまだ真っ盛り、これからまだまだ稽古に励まねばならない方達の演武披露の場である。

通常、この演武会の日は異常に寒いのだが昨年と昨日はそれほどでもなかった。それはそれでありがたいのだが、やはり冬が温かくなっているのかと、ふと気になった。

森ノ宮駅で降車し、大阪城公園を突っ切り修道館にむかう。樹々の赤黄はどんよりした冬空が伝播したかように黒く変わりつつあり、その足元に寒さから自身の身を守るかのように積もり広がる。こんな時期、冬の入り口はいいものである。静寂の中に静かな生を感じるのだ。まだ遠い先の春に芽吹く何者かが隠れているように感じるのだ。

大阪城に近づくと、もうたくさんの旅行客が天守閣に向かい、帰ってくる団体もいる。どの団体から漏れ聞こえる声も、お隣の国からいらしているようであった。増えつつある感染者に妙に納得して歩いた。

会場は窓を開け放し、マスク・手洗いは当然のこと、マスク着用での演武であった。審査はなかなか難しい。五人の審査員の眼が皆違うからである。この五人の眼を一様に唸らせるのは至難の業である。でも、この瞬間にモチベーションを感じて一年間稽古をするのも間違いではないと思った。

今回はいつもより少し時間がかかった。帰りの時間には日はすっかり暮れ、外へ出ると空気は冷たく私の頬を撫でた。

森ノ宮で会の若い子と新しい餃子屋が出来ていたからメシを食って帰った。その餃子屋、注文はスマホからなのである。非接触型でこんな店は私が知らないだけで少なくはないのだろうが、なんとも味気ない。料理はたぶん誰でも簡単にできるものばかりだった。メニューでは凝って見えるがマニュアル通りにすれば誰でも出来るファミレス方式の餃子居酒屋であった。餃子ももちろん冷凍だろうが、スーパーで買ってくる自分で焼く餃子の方が美味かった。『魔法の粉』をつくるメーカーの冷凍餃子がよく売れるのは納得出来る。

それにしてもこの業態の店は年寄りに優しくない。スマホを客の全員が持っているという前提が気に入らない。そんな客は必要ないということなのであろうか。てなことを考えて飲んでいたら少し飲み過ぎた。
日曜の遅くない夜、JRの乗車客は決して多くはなく八尾駅まで座って帰れた。

そろそろ一年も終わりである、師走を肌で感じつつ駅から家までフラフラと帰り、シャワーを浴びてバタンキューと眠り、今日という一日を終えた。



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