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生きるためにやって来た仕事のはなし

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なかなか理想を仕事とすることは難しいもの、食べるため、生きるためにしてきた私のサラリーマン人生です
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2022年10月の記事一覧

他力本願

筆記具をたくさん持っている。 ペンやメモ・ノートの類だけならばセコハンの文房具屋を開けるくらいはあると思う。 以前ここにも書いたことがあるが、私の文房具は神様からの授かり物のお守りのような他力本願の対象なのである。 ゼネコン京都営業所時代、大阪支店の会議や難しい打ち合わせに行く時には京都丸善本店の文房具コーナーで必ず何かを買いポケットに入れていった。 梶井基次郎の『檸檬』の舞台になった丸善京都本店は、私にとっても梶井と同様に儀式の場だったのである。 それは100円のシャー

生きるためにやって来た仕事(そこで出会った人たち その5)焼うどんの思い出

ゼネコンに入社して二年目ぐらいだろうか、まだ右も左も分らないまま建設業の事務に頭を悩ませていた。 そんな時である。 やっと『半ドン』の制度が会社にもやって来た。 今のお若い方はご存じないだろう、今のような週休二日などまだ夢の話の時期に、世の中の多くの会社の土曜日の営業は午前中だけになったのである。 8時半に始業の会社だった。午前中の三時間ほどでやれる仕事は限られている。身の回り、机の引き出しの整理などしていた。皆、この半ドンを楽しみにしていた。 いつもより丁寧に女性社員が

生きるためにやって来た仕事(そこで出会った人たち その4)

実はこの話、私がnoteにやって来てまだ間もない昨年2月に記事といたしました。 その時おひたちさん、きゃらをさん(あいうえお順)から初めてオススメをもらい、大変嬉しかったことを記憶しています。 仕事師には分かってもらえるなぁ、と一人悦に入りました。 モーレツな上司の営業部長は大阪支店のみならず、会社を代表する建築作品をいくつも世に残す営業をやっています。 それをすべて自分一人の力だと人に知らしめたい、そんな薄っぺらなところがあったのです。 それをせずとも、言わなくともその部

酒を飲み考えていること

この男、よく酒を飲む男である。 しかしながら以前からただ酒を飲む男ではなかった。 まわりの話をよく聞く。 厨房の店員の動きや板場の調理人の手さばきを見る。 酒を味わい、料理を楽しみ、季節の移ろいを感じながら人生の縮図を感じとって酒を飲むのであった。 昨日も飲みながらいろいろ考えていた。 この男の付き合いは濃い、とことん付き合う。 だから、裏切られることも少なくはなかった。 無駄に時間を過ごしてしまったことに悔いてはいたのだろうが、裏切ったわけではないからそれでよかったと頭の

生きるためにやって来た仕事(そこで出会った人たち その3)

建設業界で30年以上メシを食わせてもらって来た。 ゼネコンでの営業10年の最後の一年間だった。 京都営業所に事務時代を含めて二度目の赴任、片道切符で大阪支店から出された京都営業所の所長は百戦錬磨の黒い噂のある所長だった。 しかし付き合ってすぐに多くを語らぬことにそんな噂のもとがあることは理解できた。 私は自由に動き回り、その所長に好きなように仕事をさせてもらった。 中国地方の営業課長から「ここで世話になっている社会福祉法人の理事長が兼務している京都の衛星都市の障害者施設で