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歌声、楽曲センス、全てが天才的に光る紫今 1stワンマンEpisode0ライブレポ

※メモ一切せずに楽しみながら書きましたので、MCの内容などは「こんな感じだったな…」くらいの気持ちで読んでいただけると幸いです。
また、主観部分も多いと思いますがご了承ください。

19時ぴったりに暗転し、「待ってましたー!」と物語る歓声が湧き上がった。
いきなり爆発音が響き渡り、会場の全員何が起こるか分からず、シンとなる。メンバーと、
ペンキで遊んだレインコートのような上着(セルフプロデュースだそうだ)を着た紫今が登場した。すると、ゴリゴリのロックチューンで初めて耳にする新曲が披露されたのだ。紫今の曲といえばEDM調のメロディが特徴的だったが、このロックな新曲はバキバキにギターやドラムが鳴っていた。だれも予想できなかっただろう始まりに、皆が引き寄せられて1stワンマンは幕を開けた。
続く曲は、2023年の1月にSNSのXで少しだけ紹介されていた『正面』という曲だ。これは、かごめかごめをモチーフにして作った曲とのこと。日本の童謡は奇妙な雰囲気があるが、紫今のアレンジが加わると、とてもポップかつキャッチーなメロディとキュンとくる歌詞に仕上げられていた。「好き、嫌い」と指差しする姿と、「ぐるぐるぐるぐる廻ってる」という歌詞がお茶目で、とても胸がときめく曲となっている。(『正面』は9月25日にリリースが決まっており、曲の全貌が見えるのももうそろそろだ)
1曲目と2曲目の振り幅が大きすぎて、この数分だけでも紫今の歌唱力、作曲センスが十分伝わってきた。
未公開曲2曲を歌い上げた後は「あっついよー!」と叫び、最初のMCへ。
「今日ね、楽しみで私寝れなくて。徹夜みたいなの。でもさ、その方がアドレナリンで120%の力でできるって言うじゃん??
だから、今日は150%の力で行きたいと思うけどついてこれますかー!」そう話すと、3曲目は『エーミール』だ。キラキラとしたピアノサウンドに馴染んで溶けていく紫今の伸びやかな歌声と、ラップでのヘイトが物語性を強めるエーミール。ラストサビでのGt. 近藤寿の歌うようなメロディが、生ライブならではのアレンジだ。
ここで再度MCへ。
「私よく聞かれるのが、歌詞から書きますか?曲から作りますか?で、基本的に歌詞からなの。で、次の曲は特に歌詞を重視してて。
"もう僕は子供じゃないよ/ねえ君は大人じゃないよ"
がそうなの。大切な人とずっと一緒にいれたらって思うけどさ、みんなそうでもないじゃない?夢の中でも一緒にいれたらって思いを込めて書いた曲です」。そのMC後に披露されたのは、『夢遊病』だ。夢・遊・病、とあるように、歌詞の内容は全て夢の中の出来事。幻想的で純粋無垢な恋愛模様を、うっとりとする声で歌い上げる様はとても芸術的だった。そして、続いた『Soap Flower』も幸せそうな雰囲気で始まり、夢遊病からの流れが抜群であった。こちらも多幸感あふれる曲かと思いがちだが、実は歌詞がとても切ない。失恋で希望を失い彼を忘れられない、でも強く生きるヒロインに胸がギュッとなる作品だ。表面上では立ち直っている風だが、心の中では悲しい感情を隠している、歌詞はそんな内容となっており、失恋したヒロインの心の中は、歌詞を見て初めて知ることができるのだ。先ほどの夢見心地な恋愛が理想だとしたら、これは現実を謳っているようだ。紫今は、曲のメロディからは想像されないような、予想外のストーリーを描くのが本当にうますぎる。

紫今といえばギミックを盛り込んだ情報量の多い曲、というイメージだが、さらに続く『ギンモクセイ』は、スーッと耳に入ってくるほど清い曲だ。彼女自身も「みんなの自己肯定感が高まりますように」とSNSでも話しているものであり、純粋にヒューマンドラマ的な立ち位置でできた曲は初ではないだろうか。大人になり社会の波に揉まれると、ほとんどの人が個性を忘れていってしまう。今はSNSが発達しているため、より自分を惨めに感じてしまうだろう。そんな人にとって、どんな自分でも全てふわっと受け入れてくれる、母のような、パートナーのような存在でいてくれる曲だ。紫今は目を閉じて優しくも全力で、「あなたはあなたらしく」というメッセージを届けてくれていた。
バラード調の3曲をゆったりと嗜みながら聴くと、彼女自身は一つの作品に多くの意味を落とし込み濃厚な作品とすることを好むような気がした。そのため、歌詞から書き、それに歌を載せるというのはとても腑に落ちた。
ここで、最近友達から魔性の女いじりされるというMCに入る。少し女の子っぽいことをすると「でた出た魔性の女〜笑」と言われるので何とも言えない気持ちになるそうだ笑 (たしかに想像してみたらしんどいと思った笑)
「みんなからは言われるのは全然良いんだけどさ〜笑 …だから自己肯定感を上げるために、みんなの紫今の魔性の女ポイント教えて😌笑」と促すと、黒髪艶っぽい!サングラス似合う!などの褒め言葉が飛び交い、彼女の自己肯定感は十分上がったようだ。
この流れから始まったのは、もちろん『魔性の女A』だ。上着を脱ぎ、色気たっぷりの赤ドレス姿へ変身。魔性の女Aはリリース前からTikTokを中心に話題になっており、リリース後はただちに海外まで広まった。MV再生回数は現在900万回を超えており、街中でも紫今の曲をよく耳にするようになった。赤いライトに不気味に照らされた紫今の姿は、MVの序盤を連想させる。MVでもモチーフになっていた"変身"の様を生で見たようで、とてもゾクゾクとした。目まぐるしく変わる曲調での表現力は凄まじく、多種類の表情を見せていく。また、曲前に「歌ってね!わたし歌わないから!」と宣言していた「クレオパトラも見惚れちゃう」の部分をファンに歌わせ、魔性の女Aという曲は新たな化け方をしていた。中盤とは思えない盛り上がりで、美しい和サウンドにて魔性の女Aは収束した。しかし、緊張感のある空気感を残したまま怪しいサウンドが充満し、魔性の女Aと対になる歌詞の、オカルト感たっぷりな"NotQueen"が始まる。この曲の時、紫今は毎回Not Queenを憑依させて絶望感たっぷりに歌っている。歌詞中では赤は似合わない、私にお似合いな色はカラスのような黒だ、と言っている曲だが、黒髪に赤ドレスが映える紫今の姿は、黒よりも圧倒的に赤が似合う、正真正銘のQueenだった。「私はハーレイじゃなぁい!」と叫ぶ姿は、Queenとなったヒロインが暗かった時代を謳っているようで、更に迫力・狂気を増していた。
ここで色気満載の紫今タームはひと段落付き、『無言電話』へ。声だけでも届けたくとも、もう届けることはできない。この曲でも、大事な人を失った喪失感が歌われている。いつ会えなくなるか分からない、とはよく言われるが、その一言を無言電話に例えているようだ。サビでは手をウェーブさせるノリ方を促し、現場のライブならではの場面だった。
そして、次曲は吸い込まれるようなアカペラで始まった『酔い夏(すいか)』。力強くも、スゥッと空気として消えていくような、儚くもサスペンス感を帯びている曲だ。Bメロの大輝のドラムが、禁忌を犯そうとしてる自分の迷いや焦りを心音として表しているようで、紫今のうねるようなロングトーンも、波に飲まれる少女の葛藤を表しているようだった。生演奏での様子を見ているだけで、ストーリーが自然と頭に浮かんだ。
続く『学級日誌』は、青の祓魔師のEDというタイアップが付いているものだ。「この教室には私がいます、笑わせてくれるバカもいます」という歌詞をファン一人一人の顔をみながら満面の笑みで歌い上げていたところが印象的だった。
ゆったりとした曲調の中で繰り広げられる多様すぎる歌唱表現、ゴスペル調な展開は、楽しかった思い出と喪失感を観客に伝え、更に曲の世界へ没入させた。見ている全員が息を呑むようなステージだった。啜り泣くファンが何人もおり、紫今の歌声に完全に心を動かされていた。

最後のMCに入り、紫今は真剣なトーンで語り始めた。
「ワンマンが本当に夢だったの。
紫今を世の中に知ってもらったのは去年くらいだけど、中学高校の時から音楽活動をしてて、
色んな人を心配させて迷惑もかけたし…。」と、時折言葉を詰まらせながら今日までの心境を語った。そして、「でも私の夢は東京ドームなので!みんなを連れていきたい!いや、いきます!」と約200人のファンの前で夢を宣言すると、「ついていくよ!」と答えるように、大きな拍手で包まれた。紫今はとても嬉しそうな表情で、「言いたいことはもう言えました!ちょっとしんみり?しちゃったんじゃなぁい?笑 紫今のライブで定番のあれとかまだきてないんじゃない?てみんな期待してんじゃないの〜???笑 ここからがゴールデンタイムでしょ!」と盛り上がりのフラグを立て、紫今節が効きまくった、情報量過多なフェーズへ突入。ライブもラストスパートだ。
紫今が初めてリリースした『ゴールデンタイム』は、拍子の切り替わりが激しく、ダンサンブルなメロディでの彼女の歌唱表現がとても映える。こちらもTikTokでバズったもので、世の中に紫今を一番早くに知ってもらえた曲だ。音楽に関する知識がない中で作った曲なのだそう。表面上の明るい拍子の深くで吐き出される闇深いリリックは、ボロボロな主人公が殻をかぶって楽しいフリをするストーリーを表現しており深く刺さるものがあった。
ダンス空間は継続され、『Server down』へ。一目惚れをコンピュータウィルスの感染に例えたこの曲は、セキュリティも解いてしまうほど、相手に夢中になっている様子がかかれたキュンとくる曲だ。 Ba.わちゅーの太くて渋いベースで始まり、紫今の甘い歌声が全身に広がる。サビ前の「サー、バー、ダウン」の合いの手は完璧で、会場全体が湧き上がっていた。
セクシーな雰囲気から、軽々しいピアノ音へ。心から解放されるようなクラップが鳴り響き、『フラットライン』がスタートした。これを聴くと、楽な道を選んでいると腐ってしまう、とハッとさせられる。苦しみや落ちる経験をしてこそ、最高の未来へ登れる。不器用でもいいから落ちて上がってを繰り返していこう、と勇気をもらえるのだ。フロアも盛り上がっており、皆現実を忘れて軽く高いジャンプを見せていた。その後間髪入れずに、紫今のライブの最後に相応しく、ライブで一番盛り上がる『凡人様』のイントロが流れる。「みんなもっと前おいで!」と紫今が煽ると、ファンはどっとステージへ押し寄せ、ライブハウス仕様かつ超過密状態の凡人様が出来上がっていた。「天才!」の合いの手やクラップのタイミングが完璧で、紫今のテンションも徐々に最高潮へと近づいていった。サビがくるごとに「行くぜ!!」と投げかけ、半端なく高いテンション感でステージとフロアとがぶつかり合っていた。ラストサビ前の「囚われないで天才カテゴリー」以降は歌唱全部をファンに託し、紫今は「聞こえないよー!」と耳に手を当てるジェスチャーをしていた。約半分の割合で紫今とファンで歌われた凡人様は、ライブだけの特別ver.で、とても胸が熱くなった。
今までに自身がリリースした全15曲を歌い上げ、ライブは終了。紫今は最後までフロアのファンに「ありがとうー!」と感謝を伝えていた。
フロアの興奮は冷めず、長い拍手が鳴り響いた後、ファン全員が清々しい顔でそれぞれ感想を口にしていた。
今回の東京公演がSOLD OUTして大阪公演も決まり、10月の東京追加公演は倍以上のキャパにまで広がっている。彼女が人気になるスピードはとても早く、気がついたら東京ドームまでかなり近いところにまで行ってしまうのではないかと思った。紫今の生パフォーマンスに触れるファンが、人との繋がりを通したり、対バンツアーに呼ばれたりなどで増えていくことを強く願った日だった。

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