UTYOASOBIライブレポート「暗い夜で自由に瞬く。小さな青い光たち。-Film by YOASOBI-」
UTとのコラボを記念して決行されたYOASOBIの唯一無二のライブ。ユニクロのUTのスローガンが「WEAR YOUR WORLD」になっているとのことで、ライブタイトルは「SING YOUR WORLD」
今回の舞台(ライブ会場)は有明本部内の「ユニクロシティー東京」。
19時になると、ドローンによってYOASOBIメンバーのいるところまで案内される。
ライブステージに着くと、目の前にはたくさんの本。そして、今回のライブ衣装を着たAyaseとikura。
YOASOBIといえば、小説をモチーフとした楽曲だ。Ayaseとikuraの衣装は、「音と文字を楽しく操り魅せるサーカスの団長…!!?」と、すぐにイメージが沸き、このときはそれを信じ込んでいた。毎回最新技術を駆使し、良い意味で斜め上のライブを魅せてくれるYOASOBI。
さて、今回は音、光、映像を操ってどんな物語を見せてくれるのだろうか?
「SING YOUR WORLD」の幕開けを飾ったのは、本日から配信開始になった「三原色」。サンバ調で、思わず体を揺らし歌い出したくなるポップな曲だ。3人の幼馴染をそれぞれの色に例え、疎遠になってしまったものの再び出会い、繋がるストーリーがモチーフになっている今曲。ikuraの背面にあるスクリーン、Ayaseのキーボードが赤、緑、青と鮮やかに点滅する。3人の幼馴染が成長して酸いも甘いも経験して子供の頃を懐かしむ風景が思い浮かび、リズミカルだが、何ともアンニュイな、切ない、不思議な気持ちにさせる。
「三原色」に続き2曲目を飾ったのは、「ハルジオン」。きらきらしたバンドサウンドとアップテンポに進むリズムと反して切ない歌詞を、ikuraが噛み締めながらも情感たっぷりに歌い上げる。
2曲を終え、ここでMCに入る。
今回のライブタイトルは、SING YOUR WORLD。皆さんにも、自分の好きを歌ってほしいですとのこと。
暖かなメロディーが鳴り始め、3曲目に演奏されたのは「もう少しだけ」。
もう少しだけでは、ポップな曲調、そして優しい照明にikuraの歌声が重なる。コロナ渦で暗くなってしまう世の中の朝を少しでも明るく起きられるようにしてくれるこの曲。
「暗いニュースが流れる朝に気持ちが沈んでいく朝に「自分はいらない存在?」」という歌詞が胸に刺さる。
ikuraは歌いながらゆっくりとオフィス内のカフェを回り、触れるもの一つ一つを大切にするように歌い上げる。まるで私たちに一人一人の大切さを伝えるように。
明るく歌いながら歩いていたikuraが、曲の終了と同時に立ち止まり軽く俯く。
4曲目に演奏されたのは「たぶん」
カメラワークは、儚げに歌うikuraのソロカット。カーテンとたくさんのコラボTシャツが飾られており、見た目はとても鮮やかだ。しかし、鮮やかで楽しい見た目とは逆に切なさ、寂しさを感じさせる。まるで、恋人と別れた悲しみで散乱した部屋の中、独り寂しく無気力に過ごすワンシーンのようだ。
曲が後半に差し掛かるとikuraは別の部屋に移動し、ピアノを弾くAyaseの元へ行く。ピアノ以外の音楽機材は特にない、ごく一般的なワンルームでikuraの指パッチンによって曲が締めくくられた。
「たぶん」でしんみりした雰囲気を残し、次はどの曲が来るのか、と待っていれば、いきなり怪しげなトライアングル音が冷たく鳴り響く。そして次の舞台はPCが並んだ部屋。そして赤いペンライトに赤い照明。「お、これは…?」と多くの人が思ったのではないだろうか。トライアングル音の次には女性の悲鳴と共にビート音が重く鳴る。今にも下から何か禍々しいものが出てきそうだ。曲と同時に聞こえたのはikuraのうめくような、ドスの効いた声。そう、しんみりとしたバラードの後に持ってきた5曲目は、「怪物」。
「たぶん」と「怪物」。パッと聴くと両極端なこの2つのつなぎ方が本当に鳥肌もので、Ayaseのセンスの良さ、YOASOBIのレベルの高い音の遊び方を魅せつけられた。
PC室のなかで舞う激しく舞うコピー用紙、同じく激しく赤く点滅する照明、YOASOBIのオブジェ、酔いそうなくらい目まぐるしく回る、カメラワーク、暴れまわるステージ。
ikuraの背後に大きな彼女の影が映し出され、本当にikuraの中の怪物が出てきて部屋の中をかき乱しているような、とてもハラハラと鬼気迫るものを感じまくる時間であった。
激しいステージの後は「Epilogue」が流れ、怪物を押し込めて平穏を取り戻した(…とでも表現したいのでしておこう)ikuraとバンドメンバーが映し出される。
6曲目に演奏されたのは、「アンコール」
カメラにはバンドメンバー一人一人がしっかりと写される。
このメンバーで
”好きな音を鳴らそう”
前回の「KEEP OUT THEATER」でも感じたが、コロナ渦でこのフレーズが本当に心にしみる。明日世界が終るとしても、このチームYOASOBIで、好きな音楽を奏でる。そんな決意を思わせる。暖かくも強さを感じる演奏。
アンコールを奏で終えたとともにライトが消える。
7曲目に演奏されたのは、YOASOBIの代表曲「夜に駆ける」
照明がカラフルに、リズミカルにライトアップする。音と光で遊ぶ。まるでダンスフロアーのようだ。ここでも激しく動くカメラワークだが、とてもハニカミ顔で楽しさがこぼれ出るバンドメンバーを逃さずとらえる。曲のビートに合わせて体を横に揺らすikura。楽しそうに笑みを浮かべるAyaseとバンドメンバー。
この曲で凄まじい勢いで売れ、ついていくのに精一杯なくらい駆け巡った去年。目まぐるしい状況でも楽しむYOASOBIを表しているようなステージであった。
ここで、ikuraとAyaseのMCタイム。
「THE オフィスでお送りさせていただきます!ちょっと疲れたな笑 YOASOBIはねえ、普通のライブはしないんですよお~。今回のオンラインライブなのですが、演出が映画みたいな、編集したみたいな。ものになっております」とAyaseとikuraが話す。ここではコメントも拾いつつ。「まじオンラインなの?」という視聴者の声に、「えーと…なんか証明できるものないかな…晴れてます!!笑」とikura。
「スクショタイムが欲しいです!」には、「キュンです」ポーズで答える二人。ゆるく茶目っ気のあるMCで、ほっこりとしたブレイクタイムとなった。
ちなみにikuraは、今日のためにインナーブリーチをしてきたそう。
Ayase「次の場所へ行こうと思います。次が最後のステージです!」
(私は、まだやってくれるの!!?とワクワク満載でした。)
カメラ(ドローン)がこれまでの曲を演奏した場所とユニクロのオフィス内を映しながら、次の場所へと案内する。
「次の場所」でYOASOBIの2人が映し出され、曲が始まる。
始まったのは、「ハルカ」。
…だが…何かが違う。先ほどとは異なる、とても重厚感に溢れた壮大な演奏…。Ayaseとikuraの直後に移されたのは、なんとオーケストラ!!
そしてよく見ると、全員制服を着ている。オーケストラの子たちの正体は大阪桐蔭高校の吹奏楽部の学生たちだそうだ。そして、編成は1,2年生のみ。初お披露目のステージとのこと…!コロナ渦で密を避けるために大人数は禁止とされていたが、フェイスシールドをしソーシャルディスタンスを保ち、172人という大人数が集まって演奏している光景には感動が込み上げてきた。学生たちのたくさんの音をまとめ上げる指揮者のようなikura。
私はここで、今回のライブ衣装は指揮者の燕尾服をイメージしており、この「最後の場所」を伏線として引いていたのだと納得した。
出会いと別れを繰り返し一人の少女が大人になるまでを描いたこの楽曲は、学生たちと奏でるにはぴったりの曲だ。オーケストラとともに歌い上げる「ハルカ」は、盛大なパーティのオープニングを想像させる。ikuraは、「AyaseさんのPC1台からできた曲が172人と奏でられる時が来るなんて…」と感動に浸っていた。
次の曲でラストのようだ。
学生と一緒に演奏するなら、あの曲をやらなくちゃ、というように、
フィナーレを飾ったのは「群青」。まず吹奏楽verで奏でられるサビ。これは吹奏楽部の子たちで考えてくれたものだそう。そして、ikuraの雨粒のような歌声がぽつぽつと心に沁みてくる。
そこにAyaseと吹奏楽の演奏が重なり曲はどんどん進み広がってゆく。「知らず知らず隠してた…」のフレーズとともに重なるクラップ、そして青く白く光り舞う紙吹雪。
楽しくも切ない、一瞬で終わってしまう青春の絶頂期を噛みしめるようだ。
温度がじっくりと上昇していき、最高潮で迎えるサビ。ikuraが率いるチームYOASOBI+大阪桐蔭高校吹奏楽部の大合奏。
前回のオンラインライブはYOASOBIバンドで一つになったが、今回はその何十倍もの人数と一つになった。輪がどんどん広がっているのを感じる。
コロナ対策のため声は出せないが、ラストに大人数の心の中でのシンガロングが響き渡る。
全てのライブが終わり、「ありがとうございました!YOASOBIでした!」との挨拶。
そして、「お疲れさまでしたー!!!!」と、それにこたえる「フウウう~!!!」という大歓声。大きな拍手。学生ならではの、青春の温度を感じた。コロナがあって制限のかけられた学生の思い出の1ページとなったのは間違いないだろう。
ラストには、前回と同様、ライブ会場にデザインされたスタッフクレジットが写された。
前回は床や階段、壁だったが、今回はコラボTシャツに印字されている。これだけの大感動を与えたライブ映像の製作には、本当にたくさんのスタッフの方々の力があったからだと身に染みる。スタッフ1人1人を欠かさず示し、関わった全ての人に感謝を発信している。
信頼関係があってこそ、人と人との繋がりがあってこそ、今夜のような素晴らしい作品が出来上がるのだと証明されたのではないだろうか。
コロナ禍でありつつも人との繋がりはあるべきだ。たくさんの人と繋がることで、どんどん可能性は広がる。前回のオンラインライブは関係者のみだが今回は高校生とコラボし、とても感動的なステージが実現した。YOASOBIは、コロナ禍で忘れがちな人と人との繋がりを遊び心をフル活用し教えてくれた。大変なご時世ではあるが、7月4日、小さな星がたくさん光り何筋もの光となった日だと思った。
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