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"LIVE LIKE ANIMAL " THE ORAL CIGARETTES対バンツアー「MORAL PANIC」神奈川2日目ライブレポ

今回のTHE ORAL CIGARETTES(以下オーラル)主催の「MORAL PANIC」は久々の対バンツアーかつコロナ禍に入って初の声出し解禁ツアーである。
場内に入るとステージには「LIVE LIKE ANIMALS」との文字。そして黄色×黒、赤×黒といった、いわゆる危険を意味するカラーで彩られている。今回の対バンアーティストは、ROTTENGRAFFTY、coldrain、SPARK!!SOUND!!SHOW!!、キュウソネコカミ、Age Factory、ハルカミライ、HEY-SMITHと、ラウドロックや独自のパフォーマンスが魅力なバンドが多い印象だ。また、オーラルと深い関わりを持つアーティストだけでなく、若手バンドとの公演もある。これらのアーティストと作るライブを動物のように荒々しいものと表現しているのだろうか。以前のライブハウスがようやく戻ってきた状態でのこのツアーの期待度は高まるばかりだ。
 今回は横浜2日目のレポであり、ROTTENGRAFFTY(以下ロットン)のvo.NOBUYAが初日終了後に喉の不調を訴えたことから、この日はロットンの出演がキャンセルとなった。開演は18時半から19時に変更されたが、18時半になると出演キャンセルとなったロットンのメンバーと、オーラルのVo.山中拓也(以下、山中)が登場。まずはロットンの出演キャンセルの謝罪がなされる。次の対バンは絶対完全体で出たい!とのことで、ロットンと次も対バンすることがこの時に決定された。山中は「今日は絶対に忘れられない特別な日にしますから!!」と宣言し、その後は注意事項の説明に入る。モッシュダイブ禁止の他「痴漢するやつはまじぶっ○す!女の子も男の胸板とか触るのだめやで」と、ジョークを交えつつ皆が安全に楽しめるように注意喚起をして一旦再度待機となる。
そして19時定刻、暗転後SEを合図に歓声と拍手で沸き立つフロア。「一本打って!」から始まるお馴染みの4本打ちをし、山中の煽り後に一発目にキメられたのは遊び心溢れるサウンドにダークな世界観を絡ませた『BUG』だ。しょっぱなからモッシュ全開で高密度な中でも皆腕を上下に振りまくり、「バッテンです!」のところでは腕をバツにする完璧ぶり。コロナ禍でも盛り上がっていた曲だが、規制が解禁になると更に派手さを増し、大きく頭角を表した。
そして、久しぶりの披露となる『容姿端麗な嘘』、去年リリースされた、ヒップホップとロックが融合した『ENEMY』にて思い切りジャンプをさせ、途中途中で入るコールアンドレスポンスの揃い具合はとても気持ちの良いものだった。
ここで、 山中のMCに入る。郡山でロットンと対バンしたとき、山中の声が出なくなった。そのときに助けてくれたのがロットンとのこと。バンドマン同士の繋がり、出会いに感謝して。と話し、『出会い街』へ。山中の艶やかな声で1フレーズを弾き語りにて歌唱し、その後は激しく危うくも、色気があるメロディに乗せられる。オーラルがずっと大事にしている、人と人との信頼関係で作られるライブを体感したのではないだろうか。
以降も、シャープなギターソロが耳を貫き、サビは疾走感満載な『MIRROR』が歌われる。「とびっきり」や「しずかに」と観客も思い切り歌い、ラストのテンポダウンする部分で一旦シーン…となった後の、どこで誰が入るか否やで沈黙になる瞬間ではメンバー間で笑いがこぼれるなど、ライブハウスだからこそ細かい空気感も伝わり、楽しさで溢れていた。続く『Red Criminal』では、緊迫するサウンドに対して観客もコールアンドレスポンスを送る。そして山中が「座れー!!」とフロアに指図。密着状態でなかなか難しいが、ファンは皆座り、「俺の合図で思いっ切り飛べよ!」「3.2.1! Get down!!」と山中の合図にてジャンプが爆発。ステージとフロアとが一体となったパフォーマンスの快感で脳内が満たされる。
声出しが解禁となったため、コロナ禍で出されたBUG、ENEMY、Red Criminalは、その曲の完全体をようやく見ることができた。

本日は急遽オーラルの演奏曲が少し多くなったため、次の曲は30分くらいで合わせたとのこと。ミスったらごめんなと山中は言いつつも、全くぶっつけ感を感じさせない『通り過ぎた季節の空で』が演奏される。これは春の歌であり、今にぴったりだ。心地よく流れるような美しいメロディと山中のファルセットの効いた切ない歌声に胸がきゅっとなる。出会いと別れは背中合わせだが、人間関係や信頼関係というものはこれを通して作られる。今回の対バン相手とオーラルとの関係もそうだ。会場はエモーショナルな空間となり、客席から伸びた手はウェーブを作って曲を飾った。
 感傷に浸る心地よい雰囲気は一転し、ガチャっと扉を開ける音、そして靴音。このフラグでファンの大半は察し、歓声が上がっていた。こちらも久々の曲、『マナーモード』だ。オーラルのダークな世界観が満載であり、イントロでは山中は妖艶に体をくねらせ、時には操り人形のように腕をカクカクと時計回りに動かす。先ほどの曲からの流れで聞くと良い意味で感情の起伏が激しいバンドだなと再認識させられた。
その後、『Naked』、『カンタンナコト』でフロアは地面が抜けるほどのジャンプを見せる。どちらも人間の裏側、リアルな部分を歌っており、オーラルの原点の部分だと思考が巡った。
「やっぱり自分の向かいたい方向に進むのが1番」という山中の言葉からの最新曲『Enchant』。激しさを抑えつつも疾走感のあるメロディからは、内に秘める強さのようなものが感じられる。Nakedやカンタンナコトで地の底まで落ちた自分をEnchantで這い上がらせているようなストーリーが頭に思い浮かんだ。2/7にリリースされたばかりで初披露に近いが、歌詞やサウンドに込められた意味も含めて日に日に浸透した暁には、さらにオーラルとファンが格好良い関係になれるのではないだろうか。ファンと共に高みを目指す世界線を想像すると、とてもワクワクした。
ここで、オーラルの代表曲『狂乱Hey Kids!!』が投下。再びボルテージは上げられ点火状態、フロアはもみくちゃだ。ヘドバン、コールアンドレスポンス、Gt.鈴木とBa.あきらの高らかなジャンプからのギターソロ、これら全てが完全に揃いTHEライブハウスな空間と化した。今回は体力的に休みのないセトリであり、この時点で限界突破しそうな勢いだったがコロナ禍でのブランクの分、この空気感が堪らなく愛おしく感じられた。
続く『mist…』での「ムラムラするぜ!」の熱い叫びには心が掻き立てられた。ラストのサビの大合唱部分では、山中が「お前ら150点やないか!」と言うほどの、コロナ禍でのブランクを感じさせないクオリティであり、あきらは「そんな理性の/感情も/速すぎた僕の弾丸で/どこに行ったの」と1フレーズが終わると「はいっ」と音楽の先生の真似をし、熱気あり笑いありなステージであった。

 今回の声出し解禁にて、セットリストは客席に歌わせる楽曲がほとんどを締めていた。特に本編ラストの『5150』では、山中が「これはもうみんなにサビだけじゃなく全部歌ってもらおうと思います。隣のやつが音痴で最悪でした!とか書かんどいてな笑」と言っており、曲が終わるまで1人たりとも置いて行かない大合唱で、高い一体感があったことが印象的であった。山中は終始笑顔で歌っており、今回の5150は今までよりも光要素が強く清々しい雰囲気に感じられた。一曲を共に歌っているだけなのに、そこにはオーラルとファンとが心で対話してるのを感じ取れる光景が広がっていた。全員が歌詞ひとつひとつを噛み締め落とし込み、各々で沢山の決意をしたのではないだろうか。山中はファン一人一人と目線を合わせ、それを汲み取ってるようだ。
 途中のMCではメンバーとファンとの直接的なコミュニケーションも解禁され、いつも通りのアットホームで賑やかな場も戻ってきた。メンバーの名前を呼び捨てにするヤジや煽りの声を聞き、「本当にうるさいなあ!」と中西と山中は叱る場面も。この日だけのまさやんショッピングも、フロアと一対一でのやり取りが懐かしく思えた。
まさやんショッピングを挟み、アンコール一発目に演奏されたのは『起死回生STORY』だ。ばっちり揃ったクラップがオーラルに向けられる。いつだって初心は忘れないと常に伝えているオーラル。この曲がリリースされた時と比べると、オーラルは幅広い方向にベクトルを広げている。しかし、今回の新旧織り交ぜられたセトリからも、根本は全く変わらず新たな武器を身につけている段階なのだと納得できる。それを改めて身に染みさせる時間であった。

アンコールラストには、ロットンメンバーVo. N∀OKI、Gt. KAZUOMI、Ba. 侑威地、Dr.HIROSHIにオーラルが加わり、山中がNOBUYAパートを担当、Gt.鈴木とのツインギターで『金色グラフティー』特別ver.が披露された。(あきらはスマホでの撮影係を担当)ダイブ解禁されていたらずっとダイバーで埋め尽くされていたのではと思うほど、この日イチのボルテージであった。N∀OKI はサビ部分で何度もマイクを客席に向けており、特大の歌声が返ってきた。 NOBUYAがかなり重なるほど山中のシャウトやデスボはキマっており、鈴木とKAZUOMIの並んでのギターソロも見応えがあった。
 アンコール後の写真撮影では、「早く戻って来いボケェ!」とNOBUYAにメッセージを送り、最後は全員で手を繋ぎ万歳三唱でめでたく締められた。
しばらく後にロットン×オーラルがまた実現し、ここにNOBUYAを入れた景色は今日を確実に超えるのだろう。いずれ来るその時がとても待ち遠しく、また、今後のMORAL PANICの公演でライブがどのような色を出すかも楽しみだ。

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