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原石鼎を研究する 初読篇①

ひょんなことから原石鼎を研究することになった。

目標は、作家論を書くこと。

事前知識は、

「頂上や殊に野菊の吹かれ居り」
「秋風や模様のちがふ皿二つ」

のみである。

吉野の頃の句を読み始めてまず気付いたこと。

「杣山」、「杣人」についてかなり詠まれている。

樵人に夕日なほある芒かな
諸道具や冬めく杣が土間の壁
杣が往来映りし池も氷りけり
腰もとに斧照る杣の午睡かな
囀や杣衆が物の置所
杣が蒔きし種な損ねそ月の風
老杣の蚊払ふ団扇ひゞきけり
杣が子の摘みあつめゐる曼珠沙華

などなど。
               
ほか、大正元年~二年で気になった句。

鹿垣の門鎖し居る男かな
 ただそれだけなんだけど、なんとなくさみしい

崖なりに路まがるなり曼珠沙華
 曼珠沙華も崖なりに路なりに、まがってゆく

蜂の巣を燃す夜のあり谷向ひ
 大きそう(こなみ) ただのほのおじゃないところが、いい

山畑に月すさまじくなりにけり
 すさまじく

猪を追けたる雪の二峰かな
 なんと二峰 壮大

猪の足趾のぞく猟師かな
 まだ新しそう

雪峰の月は霰を落としけり
 月から落ちてくるのだなあ、

山国の暗すさまじや猫の恋
 こちらもすさまじい すがたは見えずとも、猫の恋とわかる

春雨や山里ながら広き道
 平易なことばで描かれる景がここちよい ひろびろ

虎杖に蛛の網に日の静かなる
 並列と読んだ

山寺の鐘に日当る四月かな
 四月がちょっと意外に感じたが、しっくりくる

高々と蝶こゆる谷の深さかな
 うつくしい蝶の景かと思いきや、その深さを思うと怖くなってくる

やま人と蜂戦へるけなげかな
 けなげだなあ

石楠花に馬酔木に蜂のつく日かな
 こちらの並列もよい

梅雨の水ひゞき流るゝ山路かな
 写生であり、音のひびきを感じる心がある

向日葵や腹減れば炊くひとり者
 向日葵や←かなりおもしろい

雨降りし土の黒さや粟を引く
 好き

犬呼ぶに口笛かすれ小春かな
 小春がちょうどいい