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原石鼎を研究する 初読篇③


大正四年、めちゃめちゃ良いかもしれん
時期としてはホトトギス社に入社した頃か

肉太な水仙の葉や日当たれる
 観察+やの力強い驚き きらきらしている

雪解や西日かゞやく港口
 遠近が効いている

藻に浮きて背筋光れる蛙かな
藻に浮きて日に光りたる蛙かな
 推敲の過程、いい

海鳴の静かな夜や鳴くかはず
月隠す雲の黒さや鳴くかはず
 後者の景のほうがおもしろい

蝶々凧たび/\映る水田かな
 素直さ、写生

各々よ凧揚げ競へ高く/\
 各々よ!!

鳶飛んで影ひらめくや春の谷
 春の谷としたことで影がうんと深く、鳶がうんと高く見える

麦刈のみめよきが我を見上げゝけり
 照れてるけど綺麗な一句

麦埃掃きて灯すや家広し
 や切れからの家広し、きれい

門内に牛繋ぎある若葉かな
 なんでもない景がいい

若葉見る机に肱の白さかな
 これも気付き

五月雨や水にうつれる草の裏
 裏なのがいい

姫目高のつゝいてゐるよ蓮の茎
 この「よ」すごい

蝙蝠や草に埋るる寺の塀
 季語の離し方

夕立や浮草を走る水の玉
 因果でなく客観写生として

炎天を恐れず見るや巨樹の下
 思い切りのある句

午寝人団扇はなさぬ畳かな
 おもしろがり方がいい

しろ/"\と古き浴衣やひとり者
 自嘲っぽさ

芥子散るや壁にかたむく衣紋掛
 季語の離し方と写生と

なめくぢの落ちて静かや庭の奥
 奥

日輪をめぐる地球になめくぢり
 これは好き

コレラ人よき衣を着てやかれけり
 やかれけりなのだよなあ……

風鈴やコレラの家の軒つゞき
 この軒つづきはさみしい

二つ買うて夫婦としたり金魚玉
 作為っぽい句のようにみえて、景がそもそも作為だから成立しているところがある

腹鳴りをきかれてさびし蚊帳の中
 恥ずかしいね

この秋や巷に住みて座敷掃く
 この秋や!

高々と薄き黄色や葉鶏頭
 この「や」はひとりごとのようでいい

身の秋や俳諧に生きて悔もなし
 この年でこんなこと言えるのか

われも来てよりかゝる窓や秋の海
 海なのがいい

酔去つて二度入る風呂や秋の雨
 笑っちゃった

われ一人にとまる電車や秋の雨
 わかる 共感の句

蓮の葉のゆるゝにまかすとんぼかな
 ぐわんぐわんとゆれていそう

踊子を泣かせてもめし若衆かな
 あーあってかんじ 切り取る景がおもしろい

秋草による心あるコレラかな
 コレラかな!

句に生きて句にのみ心栗笑ふ
 季語おもしろすぎる

芋畑に二百十日の日かげかな
 不穏ぽくていい

白きもの着て寝し夜より秋の蚊帳
 夜よりのわくわく感

秋雨にぬれて居るなり金魚池
 把握のおもしろさ なり

秋蝶や犬よぶ人をめぐりとぶ
 めぐりとぶの揶揄い方

黄菊より白菊高く育ちけり
 シンプルな置き方をしているからこそ気になる

ランプ釣つて炬燵へだてゝ友うれし
 うれしって感じだ 釣つて、の音の跳ね方

北国の夜の星深しクリスマス
 ベタだけどかわいい