ニートになる夢が叶わなかった先の話

小学生の頃から、ニートになりたかった。
働かないでパソコンだけ弄って生きていく。
夢のような生活だと思ったので、それが人生の夢になった。
当時は匿名掲示板全盛期だったから、私は匿名掲示板の一人になりたかった。

断っておくけど、電車男のドラマを見て夢見たわけじゃない。
あんなの、幼い自分でも分かるぐらいには嘘だった。
電車男の元スレが嘘だとして、ドラマはさらに誇張したものだから嘘すぎる。流石にそんなものに夢を見ない。


自分という存在が認識されることが昔から嫌だったんだと思う。
名を隠して生きていくことが出来るのならそれに越したことはないし、自分がどうなりたいとかそういうのではなくて、ただただ何もしたくなかった。
これって平穏を望んでいるとかそういうものではなく、怠惰なだけだ。
世の中、怠惰でいるのにはそれなりの代償が必要だけど、それは分かっていなかった。

私には代償に値する努力をする根性も決意もなかった。
何より自分のなりたいものを勘違いしていた。

私が勘違いしていたのは、匿名掲示板の彼らが人と関わらずに生きていくのが好きな人種だということ。
そんなことはない。そもそも彼らはツイッターすらない世界でインターネットで交流を計る、交流中毒な連中だ。
根は社交的なのだ。奴らは。
人間と人間のふれあいを諦めていない、殊勝な連中だ。
結局人間とは社交的でさえあれば何とかなるから、どうにかなっているんだと思う。
それでいえばネトゲにハマる人も社交的だと思うよ。

今考えれば、彼らがニートという設定すら相当怪しい。
ニートだとしても、どうにでもなりそうなタイプのニートだ。
多分、ニートの中でももっと救いようのない奴らがいるはずで、私がもしニートになるならそっちになる。
自分が社交的ではないことに自覚的になって生きていれば、もう少し現実的な夢を持つことが出来たかもしれない。

私はニートになる夢を叶えることが出来なかったから、今は夢が破れた人生を生きている。
もう「働いたら負け」なんて思えない。
だって、働かなくても、どちらにしても負けなんだから、わざわざ言う必要がない。

だからといって結論を焦って自殺するような気概もないし、そんな気概があれば今頃ニートになれている。
自分の身の丈にあった人生がここなんだと納得はしているけど、ニートになれなかった、しくじった人生というのは辛いものではある。

いつでもニートになんてなれるだろ!なんて野暮な話は無しにしてほしい。
何かを変える意思さえあれば、何かは変わるけどそれを諦めている時点で、救いようはない。
だから私は救われないし、夢は叶わない。もう、それでいいと思っている。

ここで一曲。

Ado - 夜のピエロ

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