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シン・仮面ライダーを今のうちに言いたい放題してみよう!

去る2023年2月10日。初代仮面ライダー(1971~1973)の最終回から50年目となるその日に、映画シン・仮面ライダーの公開日が発表されました。
3月17日(金)18時より全国最速上映。明けて18日(土)に正式公開の運びになったそうで。
公開まで残り約一ヶ月と、モラトリアム期間もあとわずかになりました。
今のうちに、前回の特報から現在までに公開されたあらゆる情報を交えつつ、いろいろ書き殴ってみようと思います。


まさかのシン・仮面ライダーチップスの猛攻

さてさて、以前書いた記事において、便宜的にシン・ユニバースと仮称していた括りが、本家本元からシン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバースと正式に命名されたことは記憶に新しいが、それらの作品に共通するのは公開前までの徹底した秘密主義/情報の小出しっぷりではないだろうか。

なんとも感慨深くなる並びである。

SNSの功罪か、とかく世間のトレンドの移り変わりが目まぐるしくなった現代においての映画のプロモーション活動は、いかに多くの人々の興味を引き付け、その興味を持続させるかをポイントに置いたものが多い。
具体的には、こまめに更新されるバージョン違いの特報や、オフショットや本編カットを精力的に発信したり、数種類のTVスポットを視聴率の高い番組中にCM放送する等々・・・
大作になればなるほど、公開日のかなり前からの長期的なプロモーション活動が盛んなものも珍しくない。
そういった数々の予告を繋ぎ合わせれば、大体の内容がわかってしまう時もあったりなかったり(笑)

それらに比べると、公開直前まで作品の情報をほとんど出さないシン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバースのプロモーション活動は特異に映る。
公開まで観客に過度な情報を与えずに、フラットな状態で作品と出会ってほしいという、製作サイドの、特に庵野秀明氏の意図を感じる宣伝広報のかたちと見るが、どうだろうか。

が、そういう意図は理解しつつも、私を含めたファンダムがシン・仮面ライダーの新情報がまったくない飢餓状態にあえいでいる中、本作の公開日が正式発表される直前の2月6日にとある爆弾が投下された。
カルビーより発売されたシン・仮面ライダーチップスである。

それ以前に、カルビーとのタイアップ商品として、シン・仮面ライダーをパッケージに使ったシン・ピザポテトというスナック菓子が先行発売されてはいた。
しかしSNS等のファンダム界隈では、同じくカルビーより約50年前に発売され、当時の仮面ライダーブームの一翼を担った「仮面ライダースナック」のように、シン・ピザポテトにおまけカード(以下ライダーカード)が付属しない点を片手落ちとして批判する声が上がっていた。

右が当時のオリジナルパッケージ。

ただ、そんな界隈の様子を私は、今更言ったとて後出しジャンケンでしかないが「広告宣伝側の想定どおりの反応をしているなぁ」と眺めていた。
のちのち、映画公開のタイミングに合わせて、ライダーカード付属のスナック菓子があらためて発売されるだろう、と予想していたからだ。

だが、より正確に言うと、それが一般販売するとまでは想像もしていなかった。
上に掲載したようなノスタルジー全開の復刻パッケージを、ネット通販かなにかで数量限定で販売するものと考えていたからだ。
まさか、チップスとスナック2種類の商品展開であり、チップスが(一部地域を除いた)一般流通商品、スナックをネット通販限定にという形を採るとは・・・

パッケージは前田真宏氏描き下ろし。

そしてここからが本題なのだが、映画公開に先んじて一般販売された、このシン・仮面ライダーチップス付属のライダーカードが大変な代物だったのだ。
全48種類のカードの図柄が、ここで初公開されるスチール満載であり、キャラクター・キャストもまた、それに合わせて初公開という前代未聞のプロモーションだったのである。
これには正直度肝を抜かれた。と、同時に初代仮面ライダーという題材をフルに活用した、なんとも遊び心にあふれたプロモーション方法だと心底感心してしまった。
製作側がオリジナル作品だけにフォーカスを当てるのではなくて、当時の仮面ライダーブームの雰囲気をも現代に再生させようとする意図を感じたからだ。

こちらはセットでネット販売。パッケージ画は石森プロ・早瀬マサト氏。

そういう視点で見れば、今回のライダーカードでの情報公開は非常に理にかなっているのがわかる。
約50年前の当時発売していた仮面ライダースナックのライダーカードは、番組のストック(放送日程に余裕を持たせるために常時一月分ほど本編を撮りためておくこと)の関係と、製作ナンバーと放送話数がたびたび前後することなども相まって、まだTVで放送されていない情報(主に新怪人)が載っていることもままあったという。
つまり、仮面ライダーブームの渦中にいた当時の子供たちにとっては、ライダーカードはコレクションやトレーディングの他に、番組の新情報を知ることが出来る情報源のひとつでもあったというわけだ。

今回のシン・仮面ライダーチップスにおけるライダーカードの怒涛の情報攻勢は、まさにそれを公開前の映画単位でやってのけたという、おそらく国内映画、いや世界の映画史を見ても非常に稀なプロモーション方法だったというわけである。※1

公開前に絶対に何も情報を入れたくないという方は、購入しても付属カードは開封しないことをおススメする。

かく言う私もいくつか購入してみたが、はじめて見る劇中のカットの数々や、カード裏面の解説文のオリジナルライダーカードへのリスペクトとオマージュに溢れつつ、映画の内容に触れるような結構重要なことも書かれていたりする味のある文章を、うすしおチップスとともに楽しんでいる。

そして本予告公開!

さて2月10日に公開日が発表されるとともに、おそらくTVスポット等を除けば最終予告となるであろうトレーラーも併せて公開された。
加えて、役柄が伏せられていたキャストの詳細と、新たなキャストも同時に発表されたのだった。
ざっと書き出すと・・・

塚本晋也氏が緑川ルリ子の父・緑川弘博士役
手塚とおる氏がSHOCKER上級構成員・コウモリオーグ役
西野七瀬女氏がSHOCKER上級構成員・ハチオーグ役
森山未來氏が緑川ルリ子の兄・緑川イチロー役

折からキャスト発表済みの松尾スズキ氏の役名はいまだ伏せられ、ファンダムでは週刊ヤングジャンプで連載中の本作の前日譚漫画「真の安らぎはこの世になく―シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE―」に登場しているサソリオーグと目されているこのカットの人物も、同じくキャストは伏せられたままである。

公式サイトでは既にサソリオーグのマークは公開されているがはたして・・・?

ではここからは、予告にて公開された新規カットを中心にストーリーに迫って見たい。

故石ノ森イズム溢れるカット。

おそらく本郷猛、緑川ルリ子が一時的に身を寄せるのであろう山小屋で、人間ではない異形の姿になった自身を見やるライダーのカットである。
赤いマフラーを付けていない所から見ても、映画序盤のシーンではないだろうか。
変わり果てた自身の身体を見つめる、仮面の下の本郷の心情は果たして如何なるものであろうか。

向かい合うふたりのライダー。
託された?マフラーを手にする一文字。

この工場地帯の場面でも、本郷ライダーに歩み寄る第2号ライダーと思われるライダーがマフラーを巻いていない点が気になる。
以前の記事でも書いた、シン・仮面ライダー=萬画版仮面ライダー準拠説を採るならば、このライダーはSHOCKERから送り込まれた刺客である、という予想が成り立つ。
TV版のショッカーライダーは色とりどりのマフラーで本物との差別化を図っていたが、本作ではマフラーの有無において差別化しようということなのだろうか。

非常に明快な違いである。

では、主に昭和の仮面ライダーにとってマフラーとはどんな意味を持つ存在なのだろうか。
石ノ森ヒーローの多くがマフラーを巻いているのは、一説によると「静止画である漫画絵を動いているように見せるため」という話があるが、少なくとも劇中においては、009たちや仮面ライダーが「なぜマフラーを巻いているのか?」という点は、デザイン上のワンポイントである以上の意味付けは特に語られない。

2001年版アニメ「サイボーグ009」より。

私の記憶が正しければ、ストーリー上において仮面ライダーのマフラーに特定の意味を持たせていたのは、それこそ和智正喜氏の小説版仮面ライダー1971~1973ぐらいではなかろうか。
一方で、映画シン・仮面ライダーにおける赤いマフラーの重要性は、少し前に発表された3種類のポスターのひとつでも強調されている。

実はこれを含めた3枚のポスターすべてに載っているのはルリ子のみである。

継承、そして魂の自由を取り戻す・・・
このポスターが発表されると同時に、ファンダムでは
「SHOCKERからの刺客として送り込まれた仮面ライダー第2号=一文字隼人が、紆余曲折の末に洗脳から解放されるも、本郷はその代償に戦死ないし重症を負い、生き延びたルリ子によって仮面ライダーの象徴でもあるマフラーと本郷の意思を託される・・・」
といった、概ね萬画版に沿った筋書きがいたるところで喧々諤々された。

ご多分に漏れず私もその説を支持する一人であるのだが、せっかくこうやって記事を書くのならば、少し毛色の違う予想の一つも立ててみたい。
なにより、一昨年の製作発表会にての庵野監督の、自身のコスプレ写真を前面に出した製作側のプロモーションに苦言を呈しつつ語った「自分が見たい作品を作るのではない」という旨の発言にも注目したい。

監督が苦言を呈した広告

「初代仮面ライダーをリブート的に長編映画化する」という企画を、私のような業の深い(笑)ファン層だけではなく、広く一般に向けたエンタメ作品として昇華しようとするならば・・・
特に、もう既に60代に差し掛かかろうという、リアルタイム世代へ向けた一番のサービスはと言えば・・・
それはやはり、ダブルライダーの揃い踏みではないだろうか。

ヒーロー同士はがっちりした握手がよく似合う

もちろん庵野監督自身の好みは、初代仮面ライダーとは萬画版やTVシリーズ初期の所謂旧1号編のような、どこか暗い雰囲気を纏った(実際に画面も暗いのだが)、影を背負ったヒーローであるというこだわりは強く、なかなか動かし難いもののようだ。
そのことは、先日発売された仮面ライダー 資料写真集1971-1973(㈱カラー刊)での、仮面ライダーSPIRITS作者・村枝賢一氏との対談からも伺える。

本書サンプルの対談記事より抜粋。

そうした気分が、本作の予告の節々からにじみ出ているのもまた事実だ。

しかし、そんな旧1号編も、別に1クール中すべてがナイトシーン中心に構成さているわけではない。
大人っぽい雰囲気とはいっても、ゲスト子役を中心にしたエピソードもいくつか存在するし、見せ場の戦闘シーンでのBGMの選曲も主題歌である「レッツゴー仮面ライダー」のノリのいいインスト版が早々に使用されている。
試行錯誤の段階だったとはいえ、後の明るくわかりやすい2号ライダー編の陽性な雰囲気の萌芽が、そこここに認められるのである。

これらを踏まえれば、私は、暗い陰鬱な雰囲気とそれを吹き飛ばす爽快なアクションシーンは、こと仮面ライダーにおいては矛盾しないと考えている。
だから本作においても、ラス立ち(映画の最後のアクション部分)はダブルライダーの一大アクションを期待したいのだ。
初代仮面ライダーの企画書や初期の脚本の作品梗概で謳われていた「本作はSF怪奇アクションである」という所信表明の一文。
これがまさに、シン・仮面ライダーにもぴたりと当てはまる括りになるのではないだろうか。

ライダーキック!

余談の余談

終わりに、ストーリー予想とは無関係の、個人的且つ趣味的なお話で〆たいと思います。
まず上の画像にある本作のライダーキック。
既に多くの方々が評する様に、バッタ特有の強力な脚力から繰り出される渾身のキック!といった風の描写に思わず息を呑みました。
思えばこれまで、映像技術の発展とともに昭和から平成、令和にかけて様々なライダーキックの見せ方が登場してきました。

キックするライダー自身の主観カットを挟んでみたり

仮面ライダー(1979)

ワイヤーを使ってみたり

仮面ライダーZO(1993)

1カットでジャンプから蹴り込むシーンを見せたり

オールライダー対大ショッカー(2009)

ですが・・・特に、近年の作品におけるライダーキックの印象は、どうもキックの姿勢で空中に静止している様がスピード感が欠ける上に不恰好に思えて、やはり1号ライダーからの
ジャンプからカットを割ってキックの真正面のカット

敵に蹴りが当たるアップ

爆発する敵・・・

仮面ライダー555(2003)

という一連の流れを、デジタル技術でアップグレードし表現していた555のクリムゾンスマッシュあたりで、既に完成されていたんじゃないか・・・
と漠然と思っていたので、シン・仮面ライダーにおけるCGモデルを使用した勢いのあるライダーキックは、スピード感やカット割り含め本編での描写に期待大なわけです。

ちなみに、本作は2月10日に公開された本ポスターによって、レイティングがPG-12(子供には刺激が強いよ程度の意で、親同伴でないと見られないというわけではない)とされているので、キックを受けたSHOCKER構成員のダメージ描写も気になるところです。
ライダーキックの威力を視覚的に表現するために、今までの仮面ライダーでは見たことのない破壊描写を期待しています。

おや、複眼の下に・・・

さて、そのポスターですが、これもファンダムではその真っ赤な眼からオリジナル作品における桜島1号を連想させるという意見があります。が・・・

藤岡氏復帰後のスタイル。名前の由来はロケ地から。

私はどちらかというと、旧1号編で度々見られた、変身完了直後の複眼(Cアイ)を赤く輝かせる場面を思い起こすのです。

複眼の上に赤いカバーを被せることで表現された。

旧1号=ピンク色の眼のイメージが強いのは確かですが、第1クール中の折々でこの赤眼のシーンが挿入されるのです。中には1話まるまる赤いときも・・・
個人的にはこのスタイルも、風のパワーが漲った様な迫力が感じられて好きなのです。
そして、もう一点。このポスターのライダーの複眼とクラッシャー(アゴ)の間の黒いライン(通称、涙ライン)をよくご覧いただきたい。

明度を上げております

おわかりいただけただろうか。
仮面の中の本郷猛の眼が透けて見えているのである!
改造された悲しみをこちらに訴えかけているとでも言うのであろうか・・・

閑話休題

実はこの涙ライン、実際にアクターがこの部分を除き窓にして視界を得ているのです。後年になって出たBDなどで画質が上がった初代仮面ライダーを見ると、うっすらと演者の眼が透けて見えるシーンが結構あったりします。

これは極端な例。

そんな、言わばエラーと切って捨ててしまえる様な部分でさえ、あえてディテールとして取り込み、ビジュアル化して公式ポスターに反映させてしまうのには驚きました。
これも庵野監督の意図かは現段階ではわかりませんが、常に見る人をぎょっとさせるイメージを提示し続ける姿勢には頭が下がります。

ぎょっとすると言えば、本作の人間蝙蝠こと、手塚とおる氏演じるコウモリオーグの特殊メイク!

一見して手塚氏とはとても気付かない。

俳優への負担や、予算、デジタル技術の進歩などによって、現在の映画界では見る機会も少なくなっている大掛かりな特殊メイク。
特に今回に関しては、怪人含めキャラクターはメカニカルな仮面を着用するものと思っていただけに、このオリジナル人間蝙蝠を踏襲しつつ現代的にアップグレードされた姿には痺れました。

オリジナル版人間蝙蝠。

そしてそして、個人的にはやってくれた!と拍手喝采を送りたい、無理やりな変形をするサイクロン号。

ナノマシン的ななにかであろうか。

初代仮面ライダーのサイクロン号も、常用形態からスイッチ一つで謎のプレートがぐいっと伸びてきて変形するのですが、それを現代的にアレンジした描写に、これは本作のキラーショットになると確信したのです。
カット割りから何から「変身!」のコールと変身ポーズではなく、風圧を受けて変身していた旧1号ライダーの変身シーンを完コピする気満々ということでしょうね、これは。

オリジナル版。

この人馬一体と言いますか、仮面ライダーとはバイク乗りのスタイルをヒーロー化したものであり、バイクは必要不可欠な、言わば変身アイテムのひとつなのだ、という旧1号のコンセプトがたまらなく好きなのです。

旧1号編における、ショッカー側のライダー封じの作戦の数々も実に良い。
風圧を受けられない狭い密室に閉じ込める、ジャンプできないように天井ごと押しつぶす等々・・・
彼らもまた知恵を絞ってライダーを追い詰めるのです。
まぁ、たしかに2号ライダーのように、好きなタイミングで能動的に変身できないのは作劇上の枷でしかないのもわかるのですが・・・
ヒーローの弱点がはっきりしているからこそ、敵との丁々発止のやり合いや、危機を脱するロジックの面白さなどが映えるわけで。
そのあたりのエッセンスも、シン・仮面ライダーに期待したい部分です。

興奮のままの乱文失礼しました。気が付けば今回も7000字超えの記事になってしまいました。
ここまでお読みいただいた方には深い深い感謝を。
シン・仮面ライダーの公開までのこりわずかです。期待して待ちましょう!


※1
ハリウッド大作などではアメリカ以外の国で玩具のカタログやお菓子のパッケージからネタバレが出るなどという例もあるが、これは例外であろう。


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