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M-1グランプリ2022 全組ネタ感想

私が一年で最も楽しみにしているイベントM-1グランプリ。

M-1グランプリで審査員の点数発表前に採点して遊び出したのはこれで5度目であり、全組の感想記をnoteに書くのはこれで3度目。

過去2年はやたらと冒頭でへりくだって、あくまで素人の戯言だと予防線を張っていたが、今年はチャンピオンがネタ中で「お笑いに分析は要らない」と既に言ってくれている。

「それでもなお懲りずに曖昧な基準で採点して批評的な感想書いてんだな、やべえな」くらいに思ってもらえれば幸いである。

自分のお笑いが正義だと思っている凝り固まった考えは出さないつもりなので勘弁してやってほしい。

ここ数年はM-1グランプリに関して完全に情報遮断して敗者復活戦および決勝を観るようにしていたが、今年は3回戦動画は観てしまった。

そこから先はあえて情報を遮断した、といった形でM-1当日を迎えた。


1.カベポスター

奇しくもトップバッターでトップバッターが優勝する設定の縁起の良いネタ。

一方「トップバッターがピークなのは、大会が盛り下がってる」というツッコミもある、なんとも縁起でもないところもあるネタ。

志らくさんも絶賛していたが「糸電話って数分後にはめっちゃゴミだね」の掴みがとても良かった。

この二人の漫才は、声質、声量にも落ち着きがあり、本当に聞き心地が良い。

めちゃくちゃ褒め言葉で言ってるんだけど、基準になるトップバッターの漫才としては100点であるように思った。

近年は漫才の形が非常に多種多様になっており、面白いけれど視聴にカロリーを使うネタ、少し頭を使う必要があるネタ、ボケ/ツッコミの概念がないネタなど、いろいろある。

そんな中で今回のカベポスターの漫才は、突飛さこそ他の組ほどないかもしれないが、安定感、テンポもちょうど良くて、コンスタントに笑いも取っていたので、トップバッターとして最高であったように思う。

個人的採点:91点

特に印象に残ったフレーズ:のまれたねえ

2.真空ジェシカ

昨年は一日市長、今年はシルバー人材センターと、尖ったコンビなのにネタのテーマの公共性が高い真空ジェシカ。

またシルバー人材センターって。
そんなニッチなテーマでネタを作った事実だけでもまず面白い。

派遣のニューウェーブ人材智則、あんまりマウスばっかり使ってると不安になる、AIに仕事を奪われた人たち…

さすが昨年ジャイロ回転の代名詞で川尻を出したコンビ。ブレてなくて面白い。

人材智則なんてもっとピンときやすいツッコミいろいろあるだろうに。「そんな陣内さんのモノマネ芸人みたいな」とか。

28歳男性にはあまりにも刺さるネタのオンパレード。もし審査員が全員28歳一般男性だった場合、真空ジェシカの最終決戦進出の可能性はかなり高まるように思う。

M-1では若干不利なのかもしれないが、これからもシフトチェンジせずに、彼ら自身の好きなネタを突き詰めてほしいと思ってしまう。

個人的採点:94点

特に印象に残ったフレーズ:
みなさん目は死んでいませんよ 払い損のところすみません

終始面白かったけど、最後の川北さんの長台詞のところが空白というか、お客さんの反応が全くない時間が長かったのが気になってしまった。それで得点としても少し下げてしまった。

実は2番手もトップバッター並に無理ゲーな出順になってはいる気はする。

単純に1組目との上下で比較されやすいし、その日の審査員各々の1点の価値を決定付けるのは、1組目と2組目にどれほどの点数差を付けるかにかかってしまう。

特に1組目より大幅に高い点にすることは、相当度胸がいるのだと思う。

決勝進出者が10組になって以降の2組目の順位は9,7,2,10,10,5。

うち2位になったのは、2019年かまいたちのUFJのネタなので、例外的に突出していたと言えるだろう。

そもそもかまいたちが実力者として完全に認知された状態だったし、コーンフレークが駆け抜けたあの年以外の基準で見ると、文句なしの1位進出になっていた可能性が高い。

そうするとよほどの出来でないと、2番からの最終決戦進出は難しい。

山田邦子さんの84→95の採点にネットがざわついてたけど、序盤でそれくらい得点差をつける審査員がいないと、2,3番手の出順で1位になることは実質不可能になってしまう。

また最終的には邦子-1グランプリは真空ジェシカが優勝だったけど、山田邦子さんの得点を抜いても順位は変わらないことも分かったし、思えば志らくさんが突飛な採点をしても、毎度そんなに最終決戦進出者には違和感がある結果になっていないし、審査員7人制ってよくできてるんだなあと思う。

3.オズワルド


敗者復活枠。

私はずっとオズワルドの漫才が大好きで、過去3年とも自分の中での採点では上位3組に入っていた。今年も3回戦動画を見た時「圧巻だな、優勝するんじゃないか」とも思った。

ただ敗者復活戦、私は今回オズワルドに票を入れなかった。
(今回票を入れたのは令和ロマン、ななまがり、ケビンス)

決してつまらなかったわけではない。けれどどこか物足りなさを感じてしまった。もっと面白いネタがあったよな、と思ってしまうような。

決勝戦で披露したネタも、敗者復活と同じ明晰夢のネタだった。

畠中さんが「フォーーー!!」ってやってる時間や、2人でdのマークを作ろうとしてる時間の空白感が特に気になってしまった。

おそらく「畠中さんが夢だと思い込んでる」という設定に、見てる自分が入り込みきれなかったことが、いろんな引っ掛かりに繋がってしまった。

結果畠中さんがボケているというよりは、単に奇妙なことをしている人に見えてしまった。

感想を書くにあたり何度か見返していると、最初見た時の体感より面白く感じた。

何度か観ていると構造が理解できて、面白さに気付けるといったような感じ。これは去年のオズワルド決勝2本目の割り込みのネタでも感じたことだった。

単純にネタの好みの問題なのだろうけど、構造自体がトリッキーすぎて初見では少し伝わりにくかった。

また自分の場合、「夢の中で夢って分かったことあったっけ」という、ネタを見る上で考えなくて良いことを一度頭の中で考えてしまった。だから4分程度のネタ時間の中では設定自体に心を掴み切られなかったというのもある。

以前のオズワルドはどんなネタやってたっけと思って、初めて決勝に進出した2019年の先輩付き合いのネタを見ると全く雰囲気が違ってびっくりした。

何より違いを感じたのはツッコミのトーンの強さ。
2020年の改名のネタと比べても思う。

今回のネタでは伊藤さんのツッコミ、特に強ツッコミがちょっと空回りしているようにも見えてしまった。

これは見る側の好みの問題もあるのだと思う。2020年に松本さんは「もっと静かな漫才を期待した」、巨人さんは「上品なんだけど、伊藤くんが最初から大声でツッコんだら」と真逆の意見を言っていたことを思い出す。

今回のネタに対しては、この時の松本さんの意見に自分は近いかもしれない。

設定がトリッキーな上、会話としての自然さが薄いネタだったのが引っ掛かりなのかなとは思う。優勝するかも、と思った3回戦のネタは財布を盗まれたっていう身近なテーマだったし。

もちろん面白いネタをたくさん持っている実力者。

優勝候補の一角と扱われ、爆発的な笑いを期待されてしまうことのプレッシャーもあるのだろうけど、とても好きなコンビなので来年以降も引き続き期待したい。

ついでに2019年と比較すると伊藤さんの人相がめちゃくちゃ穏やかになっている。

個人的採点:88点
特に印象に残ったフレーズ:カッパってそうなんですか

4.ロングコートダディ

この二人の漫才は仲良く楽しそうにやってるのが良さの一つな気がする。
兎さんの見た目、話口調から滲み出るピュアさって凄いよな。

駆け出しの頃の笑い飯を彷彿させるWボケ漫才。

人混みだと思ってる、何の大会かよく分かってない、どれもしっかりそう見えるし、「おい嘘やろ!~~なヤツに抜かされた」が答え合わせになってて、そこで毎度大爆笑が生まれるのも凄い。

最後太ってる人で最初のランナーに戻して、変なランナーメドレーに抜かれた後、一緒に走ろうって言った外国人と再会させるって構造がすごいよね。

めちゃくちゃ面白かった。

志らくさんの最後「お前~!」で終わって欲しかったと言っていた気持ちは少し分かる。あそこで終わりの方が綺麗には思えた。

そういえばこのネタ友情ほっこり終わりだな。

個人的採点:95点
特に印象に残ったフレーズ:お味噌汁持ってるヤツに抜かされた

5.さや香

M-1グランプリ2022はさや香の存在なくして語れない。

最終的に優勝を逃してしまったのは、1本目があまりにも面白すぎたからだと思う。

「そうそう、漫才ってね!こんな感じでしたよね!」って感じの最高峰のネタを披露してくれたのだから。

私が知っているのは21世紀以降の漫才になるので、それ以前の漫才の主流がどんな感じだったのかは正直分からないのだけど、前期M-1(2010年までのM-1)を思い出したな。

最近はあんな口喧嘩色の強い、熱量のある漫才をする漫才を見る機会が減っているので、多様性の時代だからこそ直球は光るなあと思った。

まず「いつまでも若くないですよ」の掴みが最高だし、そこからしばらく30歳過ぎてからの身体の老化についてみんなを納得させた後に、「だから僕は免許を返納しました」に行くという流れの美しさ。

30代からの身体の衰えと社会問題になってる免許返納を同時に面白昇華してるのが凄い。

このネタの素晴らしいところの一つが面白偏見。

韻踏めるやつはアクセルもブレーキもちゃんと踏めるわ!
俺一生佐賀行かん!
人間が普通に生きていて佐賀に行くタイミングなんかない!佐賀は出れるけど入られへん

リアルタイムで見てるときは思わなかったけど、2度目見た時は2005年のブラックマヨネーズの幻影が完全に見えた。それくらい至極の漫才だった。

個人的採点:96点
特に印象に残ったフレーズ:日本人の平均からしたら元気な81歳は別に元気ではない

ほんとにちょっとだけ、笑いが落ち着いた個所もあった気がするなと思ってリアルタイムでは96点にしたけど、今思うと完璧なネタだったので、97~8点にしても良かったなあとは思った。

6.男性ブランコ

さや香があまりにも凄かったので、どうなることかと思った6組目。

男性ブランコの漫才は記憶がある限り2ネタしか見たことがなかったが、比較的正統派の大喜利系漫才をする印象だった。

昨年の敗者復活戦もそういったネタで、個人的には昨年の敗者復活の中で1位だった。

残ってる組はヨネダ2000を筆頭に変化球が多かったので、その中では正統派寄りの組が引かれたなと思っていたくらいだった。

それが音符運び(音符運搬)って。めちゃくちゃ変化球。

音符運びだとおとぎ話っぽいけど、音符運搬だと日雇いバイトっぽいね。

シュールというか何もかも想像付かないネタなので、ともすれば全くお客さんに刺さらなくてもおかしくないネタなのに、しっかりウケていたのがすごい。

個人的採点:89点
特に印象に残ったフレーズ:何が一番ダメってね、事故が起きてから何にもしてへん

平井さんが浦井さんの倒れ方を再現するところは面白かったんだけど、ちょっとワンパターンかな?と思ってしまったところと、あまりに設定がトリッキーで、序盤ヒヤヒヤしながら見ちゃったところがあって点数は控えめ。

序盤で掴めないトリッキーなネタは、上沼さんに酷評された2017年マヂカルラブリーの野田ミュージカルネタの印象があって、M-1の舞台だと異様にヒヤヒヤして見るようになっちゃった節が個人的にある。

松本さんこれ96点なんだな、こういうの好きなんだなってのがびっくりした。あと昔M-1でのジャルジャルに対して漫才/コントの基準に結構厳しかった印象の礼二さんも96点なんだなあとか。

7.ダイヤモンド

結論から言うと自分はすごく好きなネタで、なぜあれほどお客さんに刺さらなかったのだろう、ということを未だに考えてしまう。

3回戦動画でこのネタを見て凄い発明だなと思ったし、決勝進出が決まった時に、このネタだったら結構良い順位に行くのではと思った。

「服が流行ったから」「モンゴル人力士が流行ったから」、全部~~が流行ったからで表現するのが好き。

Twitter上でダイヤモンドの画像を使って「定時上がりもね」とか「健全なデートもね」とか「おいしい牛乳もね」などといったような大喜利ツイートが流行っているし、このネタの構造自体が極めてよくできたものだと思う。

実在しないネタなのに、この後野澤さんが「ざ~んぎょうが流行ったから、定時上がりなんて言葉が生まれたんだ!」って言ってるのが絵に浮かぶし。

お客さんに刺さらなかった要因は、ツッコミが最初から強すぎたことと、ワードの順番な気がする。

「野澤さんが変なこと言ってんな」とお客さんが思うより前に強くツッコミが入ってしまい、みんながネタの仕組みを理解するより前にネタが走り出して、最後まで置いてけぼりにしてしまったような。

ネタの仕組みが理解できないまで行かずとも、「なんで冒頭からこんな強く訂正されてんの」と違和感を持たれてそう。

農薬野菜あたりでようやく強ツッコミの方がお客さんの納得感があってウケたのかなあとか。3つくらいは見逃してから「さっき変な言葉が混じってるけど何なの」といった形とかいろんな想像はしてしまう。

1つ目の男女兼用車両のところでツッコミが入った時に笑ってる声がほんとに少なかったんだけど、そこからどうも空気を塗り替えきれなかった。

皆目検討違いなんだろうけれど、上位が狙えるかなと思ったネタが本番でハマらなかったのが切なかったので考えたくなってしまう。

「僕が新しい日本語つくるんだ!」とか「脱法ハーブはティーにはせんやろ」とかもっとウケてよかったはずのフレーズもあるだけに。

だけどTwitterで大喜利が盛り上がってる辺り、十分爪痕は残せたのかな。はっきり最下位の方が認知はされて、今後各方面でキャラは立つ部分もあるし。

個人的採点:90点
特に印象に残ったフレーズ:シェフのがんばったサラダ

8.ヨネダ2000

彼女たちのせいで、今週1週間DA PUMPのifが頭から離れなかった。

餅つきに入るまでのメイドインワリオのオープニングムービーみたいな世界観は何なんだ。

THE Wの時も思ったが、ヨネダ2000のネタは一体どんな人生を歩んだら思い付くのかと毎度関心してしまう。ネタ作ってる誠さん年下なんだよな。

あんな純朴そうな子たちだけど、鬼才。

ヨネダ2000のネタの素晴らしい点は、リズミカルで音楽としても楽しめる点だと思う。

比較対象に出すのはあれだけど、私はランジャタイの笑いを100%で理解しきれてはいない気がしている。彼らのネタは見る側の想像力や読解力が試されている部分もあるように思う。

一方ヨネダ2000は見ていて完全に何してるか理解しきれなくても、音楽にはついていけるので、ランジャタイより共感度の高いネタになっている気がする。

松本さんの「最初から終わりまでずっと何をしているか全く分かりませんでした。でもウケてるし、俺も笑ってしまっているし」がまさしく。

あの奇天烈な世界観でM-1の会場を大爆笑の渦に巻き込んでるんだもんな、とんでもないことですよ。

また千鳥の大悟さんが反省会の配信で「ヨネダ2000には点数じゃなくて花丸を上げたい」と言っていたんだけど、その表現はとても合点がいった。

点刻みの評価をすること自体が野暮だし、漫才…?という部分もあるし、審査員泣かせであったことは間違いない。

個人的採点:92点
特に印象に残ったフレーズ:もーちも君が一人なら ifのハモリ

大笑いしたけどM-1的にどう評価するかってめちゃくちゃ難しい。

志らくさんが97点入れてるの、おそらく本人以外誰も驚いていない。
あの人ランジャタイ好きすぎるだろ。

それと涙を流すほど笑ってしまい96点を入れた塙さん以外の点数が91点4人、90点1人だったことも、正直様子見の感が伺える。なんにせよ強烈なインパクトは残してくれた。

9.キュウ

9番目にキュウ。この上なく縁起の良い出順なはずだが、結局審査員評が「順番に恵まれなかった」となってしまい、9位に落ち着いたの切ない。

キュウも非常に魅力的なコンビで、好きなネタも何個かあるのだけど、それこそ3回戦で見たテテテンテのネタとか好きなんだけど、今回のネタは正直なところあまりハマらなかった。

全然違うものゲームは、ちょっとあまりにも範囲が膨大すぎるというか。枠組みが絞られなさすぎるというか。

何より清水さんの「~~でしょ~う!」のキャラについていき切れなかったというか、違和感、無理してる感をすごく感じてしまった部分がある。

これがもしキュウのネタを完全に初めて見ていた場合、困惑なく見れたのだろうか。逆に人となりをよく知ってた方が面白いのか。

ネタ後の掛け合いで今田さんが「そんなキャラあったんですね…」と若干困惑していたのを個人的にも思ってしまったかな。

改めて感想書くために何度か見返すと、このネタもオズワルド同様見れば見るほど面白さが見えてくる系だった。

やっぱり一度目見たときの謎キャラに対する困惑が引っ掛かりにはなっていたような気がする。

個人的採点:86点
特に印象に残ったフレーズ:いいでしょう~楽しみでしょう~

それにしてもびっくりしたのはぴろさんの度胸。

大吉さんの「やってて本人たちも違うなと思いながらやってたと思うけど」や志らくさんの「自分が見たキュウのネタではもっと面白いネタがあった」という感想の時に首を振っていたり、最後松本さん大胆にイジってたもんね。怖いもの知らずすぎないか?と思った。

10.ウエストランド

そうか~ネタの分析とかしてくるうぜーお笑いファンとかいるか~
お~い現在進行形、やめてくれ~
しまいにはネタのアドバイスとかしてくるんだから、皆目見当違いなのに

お見送り芸人しんいち「自分の方が面白いと勘違いしてて、今テレビの前で点数付けてる視聴者好き」

9組分の皆目見当違いをやり続け、最後ウエストランド。もうこのnote自体もウエストランドのネタの種の一つになっていると思うと、嬉しさすらある。

むしろそういう人たちを笑わせるネタだったような気もする。

元々ワードセンスもあって面白いコンビ。オンエアバトルに出ていた10年前から好きだった。

だからこそなぜ2年前はそれほど評価されなくて、今回は受け入れられたのだろうかと、リアルタイムで見てる時不思議だった。

2年前との大きな違いは井口さんが完全にボケ側に回ったこと、あとはクイズという明確な話の軸があったことだろうか。

言いたいことをとにかく詰め込んでみた漫才から、ストーリーのある漫才になったことで、同じ井口さんの主張を軸にした漫才でも、構成がしっかりして、見方が伝わったのかなと思う。

ボケツッコミを入れ替えても、河本さんがやってることはほぼ一緒なの面白すぎる。

井口さんが発するパワーワードはみんなの心に焼き付いたと思うけど、視聴者に河本さんのセリフを覚えている人がどれほどいるだろうか。

何回も見てると河本さんが「そんなことない」とか「ちがいます」程度しか言ってないことがめちゃくちゃ面白く見えてくる。

あれはツッコミなのか?と思うけど、飲み会で派手に酔って会話が成立しない人と話すときの相槌ってあんな感じだよね。

それにしても「佐久間さ~ん」がウケてたね。

自分は佐久間宣行のオールナイトニッポン0をずっと聴いている立場なので、一般的な佐久間さんの知名度や知られ方がよく分からない。

けどもうM-1で爆笑をかっさらうフレーズになるほどの有名人になってんのか、とちょっとびっくりした。

M-1観覧に来ている人や審査員、お笑いのコアファン以外が今回のウエストランドをどう見たのかは純粋に興味がある。上戸彩さんの中では何点だったのだろう。

個人的採点:92点
特に印象に残ったフレーズ:お~い現在進行形、やめてくれ~

93点と迷ったけど、ちょっと内輪ウケなのかな…と思って点数をちょっと引いた。

結果審査員からも高評価で、おお2年前は評価されなかったけど今回は高いのかとリアルタイムではちょっと面食らった。

僕-1グランプリ2022まとめ

(出番順)
カベポスター 91点
真空ジェシカ 94点
オズワルド 88点
ロングコートダディ 95点
さや香 96点
男性ブランコ 89点
ダイヤモンド 90点
ヨネダ2000 92点
キュウ 86点
ウエストランド 92点

(点数順)
さや香 96点
ロングコートダディ 95点
真空ジェシカ 94点
ヨネダ2000 92点
ウエストランド 92点
カベポスター 91点
ダイヤモンド 90点
男性ブランコ 89点
オズワルド 88点
キュウ 86点

ウエストランド2本目

(M-1にあって、R-1にないもの)夢、希望、大会の価値、大会の規模

10組目で審査員に絶賛された直後にネタが出来るの本当に持ってる。つかみが不要になって、会場全体をウエストランドの空気に持っていくことが出来た。

しかも2本目では「ある」「なし」どちらも腐すようになってるし。

結果優勝したけど今思うとすごいよね。

最終決戦の舞台で「M-1もうざい!アナザーストーリーがうざい!」って優勝しないと許されないくらいの命の懸け方してるよ。

あと彼らの優勝に対して向けられる批判すべて「自分たちのお笑いが正義だという凝り固まった考え!」でカウンターできるの強い。

そういえば2年前に彼らは「芸人に品行方正求めてくるなよ うっとうしいなあ」とも言ってたな。

特に印象に残ったフレーズ:M-1もうざい!アナザーストーリーがうざい!泣きながらお母さんに電話すんなよ!

このパンチラインが優勝を決定づけた、そんなふうに思っている。

ロングコートダディ2本目

江戸時代か2021年に連れていくタイムマシンHARA

このネタは10年後にM-1のDVDで見ても全然ピンとこなさそうでもある。

リアルタイムで楽しめて良かった。
あんな絶妙に2021年を再現できてるのが凄い。

あと「去年の太秦やんけー」で2人とも拳突き上げてるのがよかった。

特に印象に残ったフレーズ:これって副反応結構出るんですか

最終決戦のネタはどこか大爆発を期待して見てしまうので、最初見たとき若干の物足りなさを感じたけど、改めてみると十二分に面白いネタだった。

さや香2本目

もしかして昨年の敗者復活で披露したからあげ4をやってくれるのか?と思ったが、さすがに正統派の漫才で勝負していた。

どうやら予選ラウンドでトップバッターになったら、からあげ4は披露するつもりだったらしい。

間違いなく面白い漫才だった。

やっぱり優勝できなかったのは1本目があまりにも面白かったからだとは思う。

1本目の「いつまでも若くないですよ」の掴みがあまりにも強すぎたので、冒頭それと比較してしまうところがあったし。

差として感じたのは1本目にたくさん出てきていた面白偏見が2本目のネタにはあまり出てこなかった。ブラマヨの幻影はこのネタでは見えなかった。

新山さんはアメトークの「恋愛大好き芸人」に出てた。そういった意味だと最終決戦は好きな恋愛ネタで勝負をしたかったのかな、とも勝手ながら想像した。

「キスなんて誰とでもするやろ」がやっぱりなぁ。

おそらくこの瞬間がボケツッコミが入れ替わるタイミングであり、新山さんをここからボケとして見なければいけなかったのだと思う。

ただ価値観に違いが出すぎてしまう内容で「え、みんなそんなもんなのか」とか「俺があまりにイケてなさすぎるのか」とかいろいろ考えてしまう。さや香が2人ともシュッとしたコンビだし。

その結果、新山さんの発言がボケだかツッコミだか分からず、100%「それはおかしいやろ!」とも「新山さんの言う通り!」とも個人的にはなれなかった。

単にヤバい人なのか、自分の価値観が変なのかよく分からなくなった。

事実あのセリフの後は、お客さんの笑いもなくサッと引いていた印象を受けた。

その後「ある一定の清潔感のライン超えてる人とやったら誰とでもできんねん!」のセリフが出てくるまでの時間、何とも言えない空気感になってしまったように見える。

ボケなのか倫理観がアレなのかが伝わらなかった時間。あの失速が結果にも響いたのかなとは思った。

特に印象に残ったフレーズ:いつの間に俺がヤバなったん

全体感想

最終決戦が終わった後、自分だったらさや香に入れるかなと思った。

1本目同様ウエストランドのネタはどれほど一般ウケしてるのだろうか、と考えてしまった。

結果はウエストランドの優勝だった。

結果が出た瞬間、しかも6票も入った時面食らったけど、たしかに最終決戦で一番瞬間最大風速が吹いていたのはウエストランドのM-1もうざい!の件だったように思うので、振り返れば納得だった。

M-1に悪態付いて優勝してんの強すぎるって。ウエストランドが優勝したことは、M-1がやけに高尚なものになってしまったことに対するアンチテーゼのようにも思えた。

またいよいよ「M-1もうざい!」とまで言ってるのだから、あのネタ中の井口さんは別に単に悪口を言ってるわけじゃなくて、世の中全て何かにつけて悪態をつく変なヤツをやり抜いたと言えるのではないだろうか。

そもそも恋愛映画にパターンがないって段階でめちゃくちゃな偏見で喋ってるってボケなんだから。の割にはリアリティがあるんだけど。

2023年にバラエティ番組でも漫才中のような悪態をつく役割を期待され、世間から嫌われてしまうのはやだなあ、なんて今から心配をしている。

あと今回の結果に感じたのは、「ウエストランドのネタは、もしかして芸人である審査員には一般人以上に刺さるネタだったのではないか」ということだ。

真空ジェシカの感想のところで書いたけど、極端に刺さるターゲット層がいるネタがある。

真空ジェシカや今回敗者復活2位だった令和ロマンあたりは、同世代の30歳前後にはバカウケしそうなネタをやっている。

それと同じように「今回のウエストランドのネタは当事者の芸人さんたちは、一般人の視聴者以上に刺さるものがあるのではないか」と思った。

それにしても河本さんがあまりに綺麗な涙流してたの面白かったな。あと井口さんの標的になってしまったアナザーストーリー楽しみである。

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