『みやぎ海岸防災林対話会』を開催しました!
2022年3月29日、東松島市にある奥松島クラブハウスさんのホールをお借りして、『みやぎ海岸防災林対話会』が開催されました。
その企画を担当しました、㈱トビムシから、当日の様子をご報告します。
弊社では、“みやぎグリーンコーストプロジェクト”内で、海岸防災林を巡る地域や周辺施設との関係性を、今後どのように作っていくのかを考える役割を担当しています。
ご報告の前に、「『対話会』とは…?」「どうして『対話会』なの?」と思った方がいるのではないでしょうか。先ずはなぜ『対話会』の開催に至ったのか、その経緯をご説明した上で、当日の様子をご報告したいと思います。
“みやぎグリーンコーストプロジェクト”は、東日本大震災で失われた海岸防災林の再生を掲げるプロジェクトです。現在、海岸防災林は植林が終わり、これから植えられた苗木を育てていくフェーズへ入っていきます。
そこで、漠然とした疑問が浮かんできます。
―――何を以って、海岸防災林の『再生』と言えるのでしょうか…?―――
ただ、苗木が大きく成長すれば『再生』したことになるのでしょうか?
震災前は、海岸防災林とその近隣に住む方々との、地域ごとの営みがありました。双方が関係し合うことにより、海岸防災林が保たれていたのです。
震災後、海岸防災林の姿とその地域の暮らしとが変わった今、苗木を育てるだけで、海岸防災林は成立するのでしょうか。新しい海岸防災林のあり方が必要なのではないでしょうか。
―――では、新しい海岸防災林のあり方とは…?―――
この問いに対して、今、誰も明確な答えを持っていません。何せ、これだけ大規模な海岸防災林の植林・育林は数百年ぶりのことです。さまざまな可能性を探り、見出していかなければなりません。
それをどのように行っていくのか。『学び』が1つのキーワードになると考えました。実際に海岸防災林を育てる施業をしている方々、地域の方々、行政の方々、さまざまな立場の方々から、これからの時代を担う大学生の方々と共に学びながら将来を考えていく。一見、これは「社会人→大学生」という一方通行の構図に見えますが、『学び』は実は“教える側”も気づくことが多々あり、双方が『学び合う』という事象が潜在的に起きています。その営みこそが新しい海岸防災林の姿への第一歩となるし、そこから新しい可能性が生まれると考えたのです。
一緒にこのプロジェクトに取り組んでくれる大学生を探したところ、海岸防災林に興味を示してくれる東北大学の学生の方々と出会うことができました。どのように将来を考えるプロセスを構築するか、学生の皆さんや宮城県職員の方々とミーティングを重ね、先ずは『対話』から始めることにしたのです。
さて、前置きが長くなりましたが、実際に当日どのように『対話会』を行ったのか、ご報告します。
今回集まっていただいたのは、東北大学の学生3名と弊社㈱トビムシのほか、次の方々です(敬称略)。
❍ 海岸防災林の育林施業をしている『みやぎ海岸林再生みんなの森林づくり活動協定団体』
…セイホク株式会社、NPO法人わたりグリーンベルトプロジェクト
❍ 東松島市内集客施設
…KIBOTCHA、奥松島クラブハウス
❍ 沿岸部に広がる「みちのく潮風トレイル」を運営・管轄
…NPO法人みちのくトレイルクラブ、環境省東北地方環境事務所
❍ 東松島市役所、宮城県森林整備課保安林班
『協定団体』の方々以外は、現在、海岸防災林がどのような状態なのか、どのような施業が必要なのかを先ず学ぶため、東松島市野蒜地区の海岸防災林の一部の施業を、実際に体験しました。
宮城県東部地方振興事務所林業振興部に作業の指導をお願いしました。今回は下刈り作業を学びます。先ずはみんなで説明を聞きます。
説明を聞いたら、協定団体の方々の補助を受け鎌の扱いに注意しながら、
いざ、体験!
鎌は地元の石巻地区森林組合さんからお借りしました。
大変ありがとうございました!!
「大学ではどんなことを学んでいるの?」「腰が疲れるね」など、コミュニケーションを取りながら作業しました。
そして、下刈り作業を行った林地のすぐ隣には、その次に行う施業『枝落とし』が必要な林地があります。枝が生い茂って、人が入る隙間もありません。『枝落とし』は、適切な隙間を空けるため、クロマツの枝の一部を伐って落とすのです。
希望者は、その枝落としも体験しました。前述のとおり、入る隙間がないので、下から潜り込むように入っていきます。
「希望者」の体験を予定していましたが、入れ替わり立ち代わり、結局参加者の大多数が体験しました。全ての作業が完了すると、海岸防災林はとてもスッキリとした姿になりました。木々も気持ちが良さそう。
みんなで海岸防災林を見て施業を体験したところで、奥松島クラブハウスに移動し、いよいよ『対話』を始めます。
先ずは、“みやぎグリーンコーストプロジェクト”の全体像についてご説明いただき、その後、参加者の皆さんの普段の活動や考え・思いを会場全体で共有しました。
いろいろな情報・思いを共有した上で、次に、全体を二つのグループに分け、グループワークを行いました。
最初に、全体で共有した話を聞いてどう思ったのかを一人ずつ率直に出し合い、さらにその話からグループメンバー各々が重要だと思うことを付箋に書き出していきます。
「自然との触れあい・魅力」「地域性・文化」「海岸防災林の必要性・価値」「アクセス性」「楽しみと伝え方」「意識・行動・体験」「管理の主体と規模」「防災」「グランドデザイン」「日常生活との関係性」etc…
ここには書ききれない、たくさんのキーワードが出てきました。
さらに対話は続きます。
次は、「地域の未来がこうあったらいいな」をグループメンバーで考え、また付箋に書き出し共有しました。一度、海岸防災林には拘らずに、どんな地域だったら住みたいか・行きたいかを考えます。
「イケイケ・活気」「安らぎ・心」「お祭り・フェス」「子供・若者・老若男女」「雇用」「食べ物」「特色・誇り・郷土愛」「自然」「住民同士の関わり・顔見知り」「地域内外の交流」etc…
ここでもたくさんのキーワードが出てきました。
みんなの引き出しを開ける作業は続きます。
次に、「海岸防災林の未来がこうあったらいいな」という希望を出し合いました。これも付箋で共有していきます。
「気軽さ」「美しさ・景観」「アクティビティ・遊び・イベント」「出会い・人との関わり・人が集まる」「防災教育・研修・体験・学び」「子供」「生物多様性」「たそがれる・無心になる場所・憩い」「自分ゴト・みんなの森・地域の財産」etc…
本当にたくさんのキーワードが出てきました。上記の書き出したのは本の一部です。
さて、ここまで3種類の大量の“付箋”がグループごとに出されました。皆さんの希望が記された付箋です。
最後に、これらを「コスト」と「やりたい」の二つの直交した軸を設けたグループごとの模造紙に、各付箋をプロットしました。これにより、「すぐできることは何か」「コストがかかってもやりたい(やるべき)ことは何か」を見える化し、希望と現実を結びつけます。
こうして出来上がった『マップ』を、対話会終了後、学生の皆さんがまとめてくださいました。ここだと小さくて文字は読めないと思いますが、こんな感じです。
こうして最後にみんなで『マップ』を作ったところで、第1回の「みやぎ海岸防災林対話会」は終わりました。
今回、いろいろな立場の方々が『海岸防災林』という対象を一緒に考えたことで、幅広い将来像が浮かんできました。「こんなにも可能性があるんだ」ということが、参加者全員の最大の気づきだったと思います。
まだその「可能性」の入口の存在に気付いたばかり。もっと深掘り・ブラッシュアップ・具体化が必要です。上記の会の閉めの一文に、しれっと「第1回」と書きましたが、より可能性を追求していくため、現在、対話会の「第2回」を計画しています。
関係者の皆さまの多大なるご協力のもと、誰も知り得ない未来を考え作っていく取組が始まりました。これから然るべき歩みを進めて行ければと思います。その一歩一歩を、こちらのnoteでご報告させていただきますので、引続き、どうぞよろしくお願いします。