『第4回みやぎ海岸防災林対話会』を開催しました!
過去2回、ご報告している「みやぎ海岸防災林対話会」ですが、第4回を令和5年2月18日(土)に開催したので、その様子を事務局・㈱トビムシからご報告します。
この「みやぎ海岸防災林対話会」は、次のような『4回構成』で計画しています。
第2回で『理想の海岸防災林』のジオラマを作り、それと現況を比較することにより、“課題”を抽出しました。その“課題”を踏まえて野蒜地区周辺を学生の皆さんと一緒に巡り行ったフィールドワーク(=第3回対話会)をとおして、今回の「第4回みやぎ海岸防災林対話会(以下「第4回対話会」)」の開催に至りました。
第4回対話会を開催するに当たって、「地域の方々に“海岸防災林の今”があまりよく知られていない」という点に焦点を当てることとしました。
震災前の東松島市の海岸防災林は、各地域住民で組織されていた『海岸林(防潮林)保護組合』により管理されていました。数十年前までは、行政から管理を頼まれていたのに加え、燃料として落葉した松葉を活用したり、キノコを収穫したりと、海岸防災林と地域の生活とが結びついていました。
一方、震災後の海岸防災林は行政と、一部は『みやぎ海岸林再生みんなの森林づくり活動協定団体(以下「協定団体」)』により植栽、管理されてきたところです。この協定団体は地元住民とは関わりのない団体がほとんどで、東松島市においても例外ではありませんが,この団体の活動経緯や思いを地域の方々に知ってもらうことから、新たな海岸防災林の関係性が始まるのではと考えました。
また、第3回対話会のフィールドワークをきっかけに、市内在住の方にお話を聞く機会があり、沿岸部での“楽しかった”思い出話を聞くことができました。その内容はいずれも、私たちが経験したことがないことばかりで、是非“震災前の海岸防災林”について地域の方々から教えてもらいたいと考えました。特に、かつての地域の燃料であり、現在はその除去が課題となりつつある落葉した松葉を集める作業『みどりかき』を体験したいとお願いしました。
今回は、“過去”と“現在”を重ね合わせて、みんなで共有する会という方針のもと、第4回対話会を次のように企画しました。
○ 午前中:みどりかき体験
○ お 昼:集めた「みどり」を燃料にして牡蠣汁づくり
○ 午 後:協定団体の方々のお話、『松葉』の可能性ワーク
さて、前置きが長くなりましたが、いよいよ当日の様子をご報告します。予定していた2月18日(土)の1週間前は全国的に大雪に見舞われ、開催が危ぶまれたところですが…。
当日は見事に晴れ、無事開催することができました!きっと、ご協力いただいた皆さんの日頃の行いのおかげです。
最初に、かつての『亀岡防潮林保護組合』で役員を務められ、現在は地元で『野蒜塾』という団体で活躍されている佐々木勝久さんに、当時の組合の活動や、『みどりかき』をする意味、その『みどり』が生活の中でどのように使われていたのかをお話していただきました。
ご自身が役員に任命されたときの状況や、かつての各家庭には地産の石「野蒜石」でできた釜戸があり、そこで『みどり』を燃料として使っていたことなどをお話いただきました。また、栄養が乏しい土壌で育つという松の特性から、このまま落葉した松葉を放置すると腐朽し土壌が富栄養化してしまい、クロマツの生育に悪影響を及ぼす懸念があることについてもご説明いただき、その後『みどりかき』の方法についても伝授していただきました。「土が見えるまでちゃんとかくんだよ~」とのことです。
お話を聞いた後は、いざ、みんなで『みどりかき』です!みどりかきを行った場所は、11月開催のバスツアーで間伐体験が行われた、100㎡にも満たないほどの面積でしたが、想像以上に松葉が堆積しており、熊手でちょっとかくだけでたくさんの『みどり』を集めることができました。
わずか植栽後8年で、これほどの松葉が堆積してしまうとは…。数cmの厚さで堆積していましたが、下の方は既に腐朽化していました。今後、膨大な面積で同じ現象が起こることを想像すると、海岸防災林が育つまでには細かな管理が必要になります。
集めた『みどり』は燃料として使うため、「未来学舎KIBOTCHA」に持ち帰りました。準備頂いたBBQ台を使って、牡蠣汁づくりのための火起こしに取り掛かります。ここでも、『みどり』を燃料にした火起こしの仕方について、佐々木さんに教えていただきました。みどりを下に、その上に小枝を敷き、薪を準備します。そしていざ、着火です!
火が薪に移り安定したらお鍋を火にかけて、牡蠣汁を作っていきます。食べるのに夢中で写真を撮りそびれてしまいましたが、とっても美味しくできました!東松島市の牡蠣は本当に絶品です!!
こちらでは、野蒜塾の飯川さんからご提供頂いた地元産ワカメで「ワカメしゃぶしゃぶ」をしました!ワカメをしゃぶしゃぶにして頂くのは初めての経験で、その色のキレイさ、しゃぶしゃぶする楽しさ、味の美味しさを一気に堪能しました。これも沿岸部ならではの文化ですね。
こうしてお昼の時間はみんなでワイワイ、楽しく美味しい時間を共有しました。
午後は室内に移動し、協定団体の方々のお話を共有しました。先ずは亘理町で協定団体としても活動するNPO法人わたりグリーンベルトプロジェクトの東さんにお話をしていただきました。
団体の活動の経緯、ご自身の関わり方、考察・分析をとおして得られた考え・方針まで、非常に分かりやすいお話をいただきました。
続いて、東松島市内で協定団体として活動しているセイホク株式会社の米倉さんにお話していただきました。
合板などの木材材料を生産する企業という立場から、石巻市にある工場が被災したときの状況、そこからの復旧、さらに地域への貢献を考えた際に協定団体となり海岸防災林に植栽から現在の維持管理まで関わり続けていること、その理念や思いをお話いただきました。
ここまでで、“過去”“現在”の双方に係る方々のお話を聞き共有しました。最後に、会場にいる参加者全員で“これから”を考えるワークを行いました。現代では『需要のない』松葉をとおして、当日、みんなで学び、楽しい時間を共有したように、松葉が現代で新しい価値を持つ可能性をグループごとに検討してもらいました。
図のように模造紙を使い、松葉を現代の「観光」や「防災」などのキーワードを絡めて活用するとしたら、どのような使い方があるか、グループごとにポストイットに書き出してもらいます。いろんな話が弾んだ班、『松葉』という限られたキーワード故に、なかなか話のとりかかりが難しかった班、さまざまありましたが、どうにか時間内にまとめてもらいました。
最後に、各班でどのような話が出たのか発表してもらい、会場でいろんな案を共有しました。いずれの班も学生の皆さんが発表してくれました。
燃料としての活用や、肥料に加工する案、今回のようなイベントに繋げて地域の活性化につなげる案、はたまた食品開発の案など、すぐにアクションを起こせそうなものから、豊かな発想から生まれた案まで、とてもたくさんの案が出ました。また、『活用』しつつ、そもそも海岸防災林の生態について周知・学習が必要である、との意見もありました。
今回、地域内外、震災前後の海岸防災林、さまざまなバックグラウンドを持つ参加者が『松葉』をとおして、いろいろな考えを共有し、一緒に“これから”を考える時間を作れました。今回のワークで出されたアイディアを基に、次のアクションに繋げていこうと思います。
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