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地域に愛されるカフェ「城下公会堂」のクラウドファンディング。成功は対話から始まった

お昼はおいしいランチとデザート、カフェタイムには工夫をこらしたさまざまなドリンク。そして夜には日本各地から集まったアーティストによるライブを楽しめる「城下公会堂」。383万円を超える支援を集めたクラウドファンディングの成功のナレッジをシェアしていただきました。

(お話:田辺 光さん)

地域に愛されるカルチャースポット

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──このたびはクラウドファンディングの成功、おめでとうございます。まずは城下公会堂についてお聞かせください。どんな場所なのでしょうか。

城下公会堂はライブスペースを備えたカフェです。岡山県の、岡山城と後楽園の玄関口に「岡山カルチャーゾーン」と呼ばれる一帯があります。岡山城をはじめ、美術館や劇場など歴史や文化を感じられるエリアになっていて、その中に位置しています。

──インスタグラムでメニューを拝見したのですが、全て少しずつ変わっていて本当においしそうです。なかでも人気のメニューはあるんですか?

お客さんの中にもファンが多いのはチャイです。季節ごとに変わるチャイにはそれぞれファンがいるくらいで、来るたびに飲まれる方もいるくらいです。一から手作りでしっかりと仕込みを行うランチも人気で、スタッフ総出でメニューを開発しています。

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城下公会堂インスタグラムより

──今すぐ行きたくなってきてしまいました。今回のクラウドファンディングに取り組んだ理由でもあるコロナ禍によるお客さまの減少なのですが、どのくらい減ってしまったのでしょうか?

コロナ禍になる前は、多い時で一日150組ほどのお客さまがいらっしゃることもありました。それが3分の1程度になってしまった。特に春は厳しく、一日10組も来なかった日もありました。

クラウドファンディングを検討するまで

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▲クラウドファンディングのページより。今回のプロジェクトを「コーカイドー・エイド・プロジェクト」と名付けた。

──クラウドファンディングを検討している時のお話を聞いていきたいと思います。実際に検討に入られたのはどんなきっかけからだったのでしょう。

東京で最初の緊急事態宣言が出た頃、その影響でライブが中止になってしまうことが増えました。それに伴ってお店の売り上げも下がってしまい、補助金でなんとかつないでいる状態が続きました。城下公会堂は家族経営ではなく、スタッフも多めです。このままではどうなってしまうのだろうという時に、あるスタッフがミーティングでMOTION GALLERYの『AIDファンディング・プログラム』があることを提案したのがきっかけで、クラウドファンディングを検討しはじめました。

──検討し始めたということは、すぐにやると決めたのではなかったのですね。

そうですね。本当に私たちにできることなのかや、どうやってやるのかなどの情報収集をして、情報が揃った段階の社内ミーティングでやろう、と決めました。

──この時「やろう」と決め手になったのはどんなことだったのでしょう。

お金を集める目的の他に、ふたつの決め手がありました。ひとつは、コロナ禍で薄くなってしまった連帯感を取り戻すこと。これまで、たくさんのお客様が来てくれて忙しい毎日を乗り切ることで当たり前に持てていた連帯感が、コロナ禍の影響でどこか薄くなってしまっていました。スタッフの間でも温度差を感じているところがあり、クラウドファンディングに本気で取り組むことでそれを取り戻せるのではという期待がありました。
もうひとつは、城下公会堂とお客さまとの関わり方をあらためて直したいという思いです。これまでひとつひとつの営業日やライブを振り返ることもなく忙しく過ごしてきてしまったところがありました。改めてこのお店を作り直すような気持ちで、お客さまとの関係、自分たちのお店への思いを直してみようと思ったのです。

聞いて、言語化して、修正していく

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▲クラウドファンディングのページより。「左から、NAPRONの元田さん、TOKYO No.1 SOUL SETの渡辺俊美さん、城下公会堂スタッフのひろぽん」

──お金を集めるだけではなく、そのプロセスでスタッフやお店の輪郭を取り戻そうという試みだったのですね。クラウドファンディングを行われるにあたって、どのような手順で行われたのでしょうか。

まず、スタッフひとりひとりに役割をつけていきました。リターン制作、広報、そしてプロジェクトの骨子と内容の制作といったように、得意分野で担当を振り分けたのです。各々が本気で取り組んだのでひいひい言う毎日でしたが、これが手応えにつながりました。なかでも、これまで出演していただいたアーティストへの直接の協力要請は支援につながったという実感がありました。

──複数のスタッフが働いているカフェならではの戦略ですね。みなさんの健闘ぶりがプロジェクトページを見ても伝わってきます。これがやはり最も手応えのあった施策でしょうか?

最も手応えがあったのは、プロジェクトを制作する前にスタッフに対してヒアリングと書き起こしをしながコンセプトを作ったことです。私のアイディアなのですが、これが一番手応えがありました。

──ヒアリングと書き起こしというと、プロジェクトのテキストづくりということでしょうか?

いえ、違うんです。プロジェクトを行うにあたって、私たちにとって城下公会堂がどんな存在なのか、どんな思いを持ってお店で働いているのか、私たちの価値は何なのかなどを言語化して、みんなの中から抽出したコンセプトを骨子としてプロジェクトの製作を行う必要があると考えたのです。私は(芝居)演劇をやっているのですが、台本を作る時にこのようなプロセスを踏むことがあり、ヒントにしました。

──すごいですね。実際に行われてみて、いかがでしたか?

ひとりひとりに向き合って話を聞いていくうちに、その対話の中からみんなが何にやりがいを感じているのかがわかってきました。演劇ではその舞台になる時代背景や舞台の設定が演者のちょっとした台詞まわしや解釈に影響されることがありますが、城下公会堂がまさにその舞台だったのです。同じ場所で働いてるのだからやりがいに感じている骨子の部分は皆共通していて「ライブでお客さんと話すこと」「直接お客さんの反応をその目で見ること」でした。みんなが出会うことに価値を感じていた、だから「公会」堂なんだ、と腑に落ちた瞬間でした。

──なるほど。その骨子があれば、プロジェクトの文章からリターンの設計、支援者とのやりとりにいたるまで全てを同じ基準で判断できそうです。

そうなんです。文章がとても書きやすくなって驚くほどスムーズに進めることができました。実際の制作に入ってからは、MOTION GALLERYが審査通過時に送ってくれる「マイルストーン」というプロジェクトの作り方やその考え方を書いたものにかなり助けられました。感動しました。なんとなく「クラウドファンディングってこういうものだろう」と思っていた固定概念が壊されて、MOTION GALLERYがやろうとしていることが私のわかる範囲ですっと飲み込めました。あれを読み込んだからクラウドファンディングというものが自分なりに理解できて、時には他のスタッフに教えたり軌道修正するのにも役立ちました。

クラウドファンディングを成功させるまで

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▲クラウドファンディングのページより。


──そうして公開なさったプロジェクトは大成功をおさめたわけですが、どんな感想をお持ちですか?

クラウドファンディングをやってみて、支援していただくということはお金をもらうということだけではなく、何かをみんなで作っていくロマンのようなものを感じられるわくわくする体験だということがわかりました。プロジェクトを終えるまでの過程で、スタッフを含めたくさんの人たちと対話し、思いを言葉にし、発信することができました。プロジェクトをきっかけに町の人に声をかけていただくこともあって、自分たちだけでは出来なかったことを、お客さまと一緒に成し遂げたんだという実感があります。

──これからクラウドファンディングをやろうとする人にアドバイスしたいことはありますか?

まず自分たちの思いや、考えていることを周りの人に話してみることから始めてみてはどうでしょうか。遠回りに見えるこの方法が、このプロジェクトを成功に導いてくれたように思うからです。対話によって骨子ができてきたら、そこからプロジェクトを作ることができる。私たちのプロジェクトも、対話から全てが始まったのです。

写真提供:城下公会堂のみなさまが行ったクラウドファンディングのページより。
文:出川 光

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