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闇中に堕ちてゆく、脆さ


「死にたい」。
そんな4文字で始まる曲があるだろうか。

あの日初めてこの曲を再生した時、思わず
一時停止を押してしまった。

嘘だ。やめてくれ。そんなことを唄わないで、
溢さないで。と。

しかも、「仕方がないでしょう?」と。
もうその気持ちに、心身共に委ねて、もはや
諦めて、そういう今日も仕方ない、そう言う。

「誰かにバレてしまう前に」、
「ドス黒い夜に呑まれてしまう前に」。

貴方はよく、「寂しい夜」「眠れない夜」
「夜に呑まれてしまうかもしれない」と、
夜にふと呟く。

その度に苦しく、きっとこんな夜にこの曲が
生まれたのだろうと思う。

「縛り付けて何にも出来ないようにして 私を殺して欲しいのです」

もう逃げ場がない。暗闇、容赦なく来る夜。
身動きが取れない状態で、
夜に呑まれるくらいなら殺してくれと頼む。

ライブでこの曲を歌ってくれた時、ここの歌詞で
自分の首を絞めるような動作をした。

だから聴くたびに、息が苦しい。
夜よ、どうか呑まないでと懇願する。

そんな姿を見たくはない。

「誰にも何も もう何も期待はしないけど 君を好きでは居たい」。

人間を信じる、期待をするというのは、
ある種の拠り所であり、縋りであり、時に
救いとなる。

一方で、その反動が怖かったりする。
信じて、裏切られた時。期待をして、裏切られた時。拠り所や縋りにして、手を離された時。

何も、もう期待はしない。
そう思わせる何かがあっても、君は。君だけは。
君を好きでは居たい。

それは願いなのか、縋りなのか、最後の砦なのか。
きっとその目は真っ直ぐに君を見ている。
少し切なさを帯びているかもしれない。

そしてもはや、中身や顔ではなく。
或いは君と共に居るのではなく。
「君のその日々の一部で居たい」。

一心同体とはまた違うのかもしれないけれど、
一部で居ることで安心できる、孤独を紛らわせられるのかもしれない。

「爆音で脳と胸を焦がして」。
この意味をずっと考えている。

私の場合、イヤホンで、爆音で音楽を聴くことで
脳や胸に居座る孤独を紛らわせることがある。

でもそれは一時的なものであり、無音になった
瞬間、紛らわせたはずの孤独がむしろ増すこともある。

「意味のない無い論理で 紛らわすロンリネス」。

痛々しい痕、言い出したい過去。

人間誰しもあるだろう。
それはできれば見せたり言い出したりしたくはない。

でも、誰かを頼れるなら、その人になら、
見せてもいいかもしれない。言い出せるかも
しれない。

「誰かに頼れる日が来るまで」。

毎日容赦なく夜は来る。
自分と対峙し、嫌でも向き合う時間。

時に朝が待ち遠しく、時に朝が来てほしくない。

ただどんな時でも、暗くドス黒い。

「ドス黒い中に 光があったらいいな」という、
願い。暗闇を手探りで探し、光を探す。
それがないから、苦しい夜もある。

「釘を打って何処にも行かないようにして その身を好き勝手したいのです」。

どう足掻いても動けない。
もはや、独占。
独りは嫌だ、頼むから共に居てという意思表示のようにも見える。

「呆れる程に もう誇りは蔑ろだけど 生きてる意味を知りたい 」。

蔑ろ。自暴自棄。
なぜ生きているのかと問う。

誇りは蔑ろで、真面目でも馬鹿でも何でも無い。
じゃあ自分は何なのか。
もしかしたら、”人ならざるもの”なのかもしれない。

自分とは何か、存在意義は、生きている意味は何か。
それを考え、頭を巡らせている時間すらも、
きっと孤独。

「堕ちてゆく深くへ 治らないロンリネス」。

呑まれて堕ちてゆく。
夜と孤独は、切っても切り離せない。

堕ちるところまで、堕ちる。
その先には何があるのか。真っ暗で何も見えないかもしれない。
もう治らない。

「絶頂ね あそこもここも濡らして」。

まず大前提として、私はこの曲に、所謂”色気”などの類のものをあまり感じない。

その理由は今までつらつらと書いてきたけれど、

この部分は、私には「もう限界ね。あそこもここも、目から滴るもので濡らして」というようにも
聞こえる。

「錆びついた心に油をさして」

この歌詞の時、曲中で水滴のような音が聴こえるのが印象的。

錆びついた心を潤わす油は、目から滴るものなのか、君の存在か。


「古傷を裂いても確かめたい 僕のこの中の異物を見たい」。

痛々しい痕、古傷を裂いて、血まみれになりながらも、自分の中にある”異物”を見たい。

異物とは、「この感情はもしかして、自分だけにあるものなのかもしれない」というような感情なのか、治らない孤独なのか、歪んだ愛なのか。
異物とは、本来自分の中にあるべきではないもの。
古傷を裂いてまで見た異物を、取り出すのか、
そのままにしておくのか。

「君という刺激で気付かされるロンリネス」。

孤独を紛らわし、錆びついた心を満たしてくれるはずの君という存在、隣にいて感じる刺激。
図らずとも、自分の孤独さを強調されるような、
ああ、そうか、孤独なんだと気づいてしまうような。

人という存在が隣にいるにも関わらず、どこか
取り残されたような、寂しいような、孤独を感じることがある、人というのは不思議だ。

死にたいと零し、殺してほしいと願い、生きてる意味を問い、傷を裂いて異物を見たいと言う。

この曲から一貫して、そして生で聴いて、何度聴いても感じるのは、どうしようもないほどの苦しさと、名前通りの孤独と、寂しさ。

夜にこの曲を生んだ貴方を思い出し、時に夜を恨む。




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