colaboの弁護団声明(3/6)に感じる不思議~人件費の計上について~

女性支援事業の是非論とかは置いておくとして、私のような「国の委託事業で食ってる」人間からするとどうしても違和感がある、今回の精算関係。
なお、以下で書く東京都の資料というのは、
<事業受託者の会計処理について 監査結果本文>

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/jakunenjosei/moderu.files/kannsa.pdf

を指します。 他方で、colabo弁護団資料は以下です。2023年3月8日段階の内容に基づいています。
令和3年度会計報告に関する東京都の再調査結果を受けた声明

https://colabo-official.net/wp-content/uploads/2023/03/seimei230306.pdf

魚拓は


(弁護団声明を信じるなら)なぜか実投入時間を付け切らない管理台帳の不思議

弁護団資料には以下のようにある。

持ち出し支出のうち、特に大きなものは人件費です。本件再調査結果において、 福祉保健局により「賃金台帳及び振込履歴を確認したところ、本事業に従事してい る職員の給与は総額で22,479,576円であったが、うち13,674,740円につい ては、本事業の管理台帳に記載されていなかったため、対象経費には含めないもの とする」(2頁)とされました。
すなわち、Colaboが令和3年度に支払った総人件費のうち、若年被害女性等支援事業のために発生した人件費は、実に2247万9576円に上るのです。

https://colabo-official.net/wp-content/uploads/2023/03/seimei230306.pdf

私は、東京都の資料を読む限りは、本事業従事者の給与総額のうち、管理台帳に記載した(すなわち、全期間通しの勤務時間のうち、本事業について勤務した時間の割合に基づいた労働時間)が、2247-1367=約880万円、と理解したのだけど、弁護団声明を素直に読めば「2247万円分の人件費を実際に、この事業に投入している」のだという。

さらに

若年被害女性支援のためにはどのような費目の支 出が必要かを示すことが重要であると考え、人件費以外の経費もバランス良く支出と して計上するために、人件費は一部のみ委託経費の支出に計上していた次第です。

https://colabo-official.net/wp-content/uploads/2023/03/seimei230306.pdf

という。
この事業は始まったばかりだから、人件費以外のいろいろな事業費(物品購入だったり医療だったり)がかかる、だからあえて人件費は過少申告したのだという。

東京都が人件費として経費認定した委託費の倍以上(13,674,740円)の 人件費に相当する働きを、Colaboは自主財源を持ち出してまで行ってきたというの が実態であることが、本件再調査結果によってもご理解頂けるものと思います。

https://colabo-official.net/wp-content/uploads/2023/03/seimei230306.pdf

本件再調査結果の内容を見れば明らかなとおり、Colaboは、管理台帳に記載して いる以外にも若年被害女性等支援事業の対応のために多額の人件費を支出してい ます

https://colabo-official.net/wp-content/uploads/2023/03/seimei230306.pdf

いや、私には東京都の資料からはご理解頂けなかったんだけど、司法試験を通っている弁護士先生がいうならそうなんだね。

だとしたら問題があって、
人件費を過少計上すると、この事業が本来どれくらいの費用を要する事業なのかがわからなくなり、翌年度以降の事業の予算計画を立てること等に影響する可能性がある

公的事業は、前年度(予算づくりのタイミングと事業開始時期によっては、その前の年度)の実績額も参考に事業の予算を作る可能性がある。
つまり、「本当は2247万円かかるのに880万円でやれました」という実績が出ると、次回以降の予算づくりの前提になってしまう。
持ち出しができる裕福な団体だったらいいけど、「赤字上等」ができない採算ギリギリの団体は、そんなギリギリの事業に応募できなくなってしまう。

②こっちのが大きいけど、この事業につけなかった約1300万円ぶんの人件費を、他の公的な受託事業・補助事業の人件費根拠に流用できてしまう。

つまり、
「本当は東京都の事業のために働いたこの1300万円、べつの自治体の事業ではたらいたことにして、そっちの事業台帳につけちゃえ」ができてしまう素地を作ってしまう。

公的な事業って会計検査院の検査対象になると、Aさんは本当にこの日この事業をやったの?他の受託事業のために働いていなかったの?というチェックが入るので、人件費台帳(というか勤務記録簿)は二重帳簿なんかつけちゃだめで、必ず一本の台帳で作るのが、公的事業を請けるうえでの前提になっています。(※二重帳簿がだめなのは、当たり前だけど人件費のみならず、事業費全般)

すなわち、一部の日は東京都のために働いてたんだけど、都からもらう分の人件費は満額達するから、他の自治体から人件費を貰う根拠日にしちゃえ、ということができる状況を作出してしまう。

実際は悪いことをしてるとは思わないけど、生じた人件費を一部しかつけない、というのは上記の不正ができる余地を作ってしまうだけだし、疑念を招いてしまうので「実際働いたうちの一部だけをこの事業につけますね」というのはよくない。(なんでこんなことを公言してしまうんだろうと不思議でならない)

ただ、私がすごく不思議なのは、

すなわち、Colaboが令和3年度に支払った総人件費のうち、若年被害女性等支援 事業のために発生した人件費は、実に2247万9576円に上るのです。

https://colabo-official.net/wp-content/uploads/2023/03/seimei230306.pdf

本事業に従事してい る職員の給与は総額で22,479,576円であった

https://colabo-official.net/wp-content/uploads/2023/03/seimei230306.pdf

を合わせて読むと、要はこの事業は専従職員のみで回してるんですよね。(弁護団の資料によれば、給与と、この事業の人件費が同額なので
単年の受託事業のために2247万円相当(何人なんだろう)の専従職員を入れるのって凄い大変。しかも全員が専従だから、事業開始日から勤務してることになる。なかなかアクロバティックな雇用ですよね。

そもそもなんでわざわざ過少申告するの

弁護団資料のここ、違和感がすごい。

令和3年度の若年被害女性等支援事業の委託費はもともと合計2600万円ですの で、上記人件費を全額請求した場合には、その他の経費はわずかしか計上できま せん。しかしながら、Colaboは、若年被害女性支援のためにはどのような費目の支 出が必要かを示すことが重要であると考え、人件費以外の経費もバランス良く支出と して計上するために、人件費は一部のみ委託経費の支出に計上していた次第です

https://colabo-official.net/wp-content/uploads/2023/03/seimei230306.pdf

上記人件費、というのは2247万円を指しているのですが、というのと「請求」「計上」がごちゃごちゃになっているのでそもそもこのパラグラフは問題ですが、「人件費をたくさん書いちゃうと経費が計上できないから人件費は削った」ということなのだと思う。
しかし、2247万円というのはそもそも「請求すべき金額」ではなくて「計上すべき金額」な筈。
で、各種の費目の支出も同じように、実際に支払ったのならば「計上すべき金額」です。

例えば(人件費付随の福利厚生費等も積むとしたら)「ざっくり人件費900万円かかりました、他の経費2000万かかりました(計上)。契約額が2600万円だから2600万円ください(請求)。300万円は自己資本で充当します。

というのが正しいか、というと、そうではなくて

「人件費2300万円かかりました、経費2000万円かかりました(計上)。契約額2600万円だから2600万円ください(請求)。1700万円は自己資本で充当します。

にすべきなんですよね。1つの台帳で管理するっていうのはそういうことです。だからやっぱり、人件費をあえて一部だけ計上するのはよくわからない。違法ではないけど、疑惑を招くだけだからやめたほうがいいと思います。

もし弁護団声明が誤っているのだとしたら

これまで何度が、弁護団のリリースした文書に誤りがあって、マイナーな修正があったりとかするのかもしれませんが、有能な弁護士からなる弁護団がそうそう間違えないでしょ、っていうか経理の根幹でしょこれ。弁護団がこんな当たり前のことを誤って書くことはないと思います。だからきっとあの声明の内容は正しい。

さいごに

私はcolaboの活動、社会の役に立つことならどうぞやったらいいじゃん、というスタンスですし、内容の是非は置いておきたい方です(とりあえず)。
あくまで、本記事の主意は「人件費の計上の仕方がおかしい」です。

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