グラフ警察は常に正しいわけでもない話。

ネット上にはいろんな警察がいますね。
パクリ警察しかり。ヒアリ警察さんしかり。
ネットというよりは論文ですが、11jigenさんのような、不正の摘発者もいました。

パッと見で誤解を招きやすい対数グラフ警察の方も、震災後にしばしば見ました。
また、テレビ番組でたまに、グラフの指し示す値とラベルの値に著しい解離があるものを指摘する、というのもよくありました。

閑話休題。

2月に東大(今は立教大学にご転職)の中原先生とパーソルとの共同研究結果として発表された「残業時間が長いほど幸福度は低い。ただし残業時間60時間オーバーでは、幸福度が高くなる」というやつ。
https://togetter.com/li/1282758
なぜかいま再燃しているようでタイムラインに流れてきた。

で、この報告の主題は「残業時間60オーバーで幸福度は上がっているが、体調は悪くなる」なのだが、後者を読み取らずになぜか「こんなの調査がおかしい」とかみついているツイがチラホラ。まあそれはそれとして。

グラフがおかしい、というツイやらブログやらをチラホラ見た。
確かに45~60未満、60以上の間の差はさほど大きくないのに、差を大きく見せてしまうグラフになってしまっているのでは、との批判はあり得そうなのだが。
WBSのキャプチャ画像は、隣のグラフがパーセント単位で書いてあるので、パッと見では誤解してしまうのだが、本グラフについては実は、縦軸は「指数」なので、指数の差の大きさを一発で評価するのは難しい筈なのだ。だから、いきなりWBSのキャプチャ画像のみを持ってグラフの不正確さを指摘するのは、じつはちょっと「早い」。

じゃこの指数ってなんなん?って話なのだが、
毎日新聞によると
https://mainichi.jp/articles/20180209/k00/00e/040/321000c
>幸福度は五つの質問を7段階で評価してもらい35ポイント満点で測った
としか書いていないので、単純に七件法で尋ねた5問につき、それぞれ尺度得点1~5を与えている、すなわちミニマム5点、マックス35点の「得点」なのだ。
質問間の標準化は行っていないし、指数を100点満点にするような調整も特に行っていない。
(リッカート尺度の取り扱いの妥当性云々はモノホンの統計クラスタの方に譲る話なのでここでは書きませんが)

0~100の値をとり得るなかで16.98→17.50の変化だとそりゃ確かに小さい。
でも5~35の値しかとり得ない中で、となると、16.98→17.50の変化もそれなりに大きいですよね。という話。
わかってて、妥当性を検討してあのグラフが作られてるのだろう、と推測いたします。


主題は以上として、本件、残業と幸福度の関係については、できれば個々の票のちらばり方も見たいところ。残業60時間超の中でも、ランナーズハイになる方ってごく一部だろうから、どれくらいの割合で出現するのか、というのが見てみたい。
また、過労死ラインの残業80時間、100時間で切った場合にどうなるかも気になるし、社会的要請もありましょう。
また、残業時間のみならず、所定労働時間を加味してみるとどうなるか。通勤時間との相関はあるか、なども見れたら面白そう。

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