●月×日

古本屋さんでドン・キホーテを買う。
岩波文庫ので、全部で6冊。
正編×3、続編×3もあるの知らなかった。
セオリー通りに正編1から読む。

物語の本題に入る前に解説がある。
ネタバレするかもと思い、飛ばそうかとも思ったけれど、これを読まないと内容分からなくなるかもよ、みたいな脅し文句があったので、読む。

古本の醍醐味だと私が信じていることの一つに、前の持ち主の書き込みがある。
この本もその例に漏れず、書き込みがある。
それもかなり熱心な書き込み手のようで、傍線の他に、行をまとめる緩やかな曲線のようなもの、更に上に判別し難いアルファベットの文字があったりする。(かろうじてimpと見えなくもないのでimportantの略?)

薄くてある程度の太さがある、
恐らくHBの鉛筆。

「『ドン・キホーテ』が『ファウスト』や沙翁の諸傑作の如く、世界文学の至宝として、絶大の価値を認められるに至ったのは、十九世紀に入ってからで、しかも、この見直しに先鞭した人物がイスパニヤ人でなく、シェリング、ハイネ、フローベル、ツルゲーネフ等の外国諸家であったことは、世界的の価値なるものにしばしば伴う現象として、興味深い例証と見られよう。」

「十八世紀のイスパニヤ国民にとっては、セルバンテスもローペもカルデロンも存在しなかった。」


等々の文章に線が引かれている。
前の持ち主は、ドン・キホーテやセルバンテスに対する当時の評価などに興味があったらしい。

私のような、ドン・キホーテをただのお楽しみで読んでやろうとする輩ではないようだ。寧ろ、研究対象として読んでいた気配がする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?