ドイツ歌曲の話 詩人の恋 Dichterliebe #5 涙がポロポロ

2.

Aus meinen Tränen sprießen
Viel blühende Blumen hervor,
Und meine Seufzer werden
Ein Nachtigallenchor.

涙から
花が咲き出で
ため息は
夜鶯の歌になる

Und wenn du mich lieb hast, Kindchen,
Schenk ich dir die Blumen all,
Und vor deinem Fenster soll klingen
Das Lied der Nachtigall.

僕を愛してくれるなら
その花を全部あげよう
君の窓辺では
夜鶯の歌が鳴り響く



ハイネの詩は民謡調であることも特徴だから、出来れば七五調で訳したいところだけど、私には無理。
二連からなり、二連めは要するに「僕を愛してくれたら、僕の涙とため息をあげる」ということ。ロマンチックの極み。

一曲めと同じくシャープ三つ。でも今度はイ長調。つまり前回の「鰻か鱧か」でいうと、鰻から始まることになる。なので一曲めとの調性的な繋がりは強い。

この歌は前奏はなく、ピアノと同時にアウフタクトで始まる。

nicht schnell 速くなく

冒頭の「Aus meinen Tränen 僕の涙から」
涙がポロポロとこぼれるようなピアノ左手の下降音形(楽譜の緑でマークした部分)この音形はこのあとも3回出てくる。

画像1

そして歌い手には
Aus meinen Tränen Sprießen
のrの連続が、涙ポロポロを連想させてくれる。発音する口の感覚から何かを感じることってないですか。

この歌の特徴的なのが3回出てくるフェルマータ(楽譜のオレンジの部分)ここは属七の和音で歌が立ち止まり、その後にピアノが解決する。

涙から花が咲き出でる...
(そうだよ😊)
ため息が夜鶯の歌になる...
(そうだよ😊)

まるで、そうだね、そうだよ、とピアノが答えてくれるよう。とても可愛らしい掛け合い。

この歌のメロディーには主音がほとんど出てこない。まるで主音を避けて作曲されているみたい。それがまた、恋する男のフワフワした感じを表しているのかもしれない。

夜鶯、つまりナイチンゲールの歌声。日本語訳には鶯の名前はつくが鶯とはまったく違う歌声。




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