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映画『ムーンライト』良い映画だが。

Amazon Prime ビデオでまた無料になった『ムーンライト』。
以前、無料で見ることが出来たときに一度視聴しているのだが、そのときはあまり内容自体を受け入れることが出来ず、ながらで視聴したと記憶している。
今回は最初から最後まで見届けることが出来たので、記録として残しておきたい。


また無料、と先に書いたが気になった人はどれくらいいるだろうか?
再度無料になったとしても、無料になったと記載したらよいのにもかかわらず、またと書いたところがミソである。

つまり、良い映画は何度でも見たくなるものであるし、無料(先からこの言葉を使用しているが、といってもプライム会費は支払っている)公開をしても収益性やその便益を考えたときに、デメリットがメリットを上回る何かがなければ、こんなことはしないのではないか。
レンタル100円公開でも、みたい人は支払う。

もちろん、無料公開されている全てが該当するとは言い切れないが、それなりの理由があるのである。こういう細かい違和感に気づけるようになってこそ、この映画の真価を理解できるように思う。


そこで、表題の「だが」の部分に注目してほしい。
この映画の高い作品性を理解するには、相当量の映画を見る必要があるだろう。かつ取り扱う題材から、アンコンシャス=バイアスを取り除き、その主題を見抜くことが、非常に困難であるからである。説明していきたい。


相当量の映画を見る必要がある点

場面遷移、その間の(相関)関係、作品全体の持つトーンと、心情表現。
これらが音楽、背景、自然環境など様々な要因と複雑に重なって表現されている。

上記は、ゴッドファーザーでソロッツォを誅殺するシーンであるが、ここに電車の音が登場するのも、仕掛けであるし、マイケルの心情を表現している。これと同義である。
何気ないシーン(といってはかなり問題があるだろうが、ここだけを抽出して一般化して話しているので目を瞑ってほしい)で、このような表現をなされていることを認識しているかどうかで、また映画への楽しみ方も変わってくるだろう。

その点で、相当量の映画を見る必要があるということだ。
無論、私がここでGodfatherを出したのにも意味がある。"代父"による洗礼シーンかの如く、水に浮かぶシーンが登場するのが、ムーンライトの1シーンである。そういえば、ゴッドファーザーにも洗礼式のシーンはあったと思う。こと、自分の知らない世界が多いこのような宗教的通過儀礼を見て、どのように思うかという点で、その作品性の感じ方が大きく変わる。

表面的な、黒人のLGBTQの話で、その黒人同士でいじめがあって、麻薬ディーラーになって……。という表面だけ見ているのであれば、全くこの作品の良さを理解していない。


アンコンシャス=バイアスを取り除くという点

上記に書いた通り、黒人で、LGBTQで、いじめで、麻薬ディーラーやシャブ中の母親で、とその特徴を上げたらきりがない。
ことこれらの内容を見てしまうと、何らかのバイアスがかかってしまう。

ただ、これら全てを裏に置き換えてみる。
・(人種を揶揄する意図はない、映画に登場する人物でどちらに比重が置かれているかという話だ)黒人<-->白人
・LGBTQ<-->STRAIGHT
・いじめ(がある)<-->いじめ(がない)
・麻薬(が存在する)<-->麻薬(が存在しない)

さながら『ハイスクール・ミュージカル』(というよりディズニー映画か、とも思った)である。逆裏対偶にすべて置き換えても、これらが成り立つということは、ムーンライトもまた真であり、これが受け入れられないというのは、はやり穿った見方である。

こういったバイアスが存在するのは致し方ないので、そのバイアスを認識した上で、どう生きていくかということが問いかけられているのではないか。


というのは、また一番最初に戻るが自分が当初受け入れられず、ながら視聴だった、というのにも関係してくる話である。
要は私が未熟だったということだ。ありがたいことに、何らかの影響で成長させていただけたということでもある。

なお、ムーンライトは国内興行成績3.5億円とのこと。信じられないほど低い。

これを見ても分かる通り、わかりやすいものしか好まれないのである。
有料動画配信サービスで、おすすめ映画として出てくるもの、Xで話題になるもの、こういったものに惑わされているうちは、変わらないだろう。マーケティング一強時代、嫌なことだ。

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