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目指す会 2309 まえばし赤城ヒルクライム 4

レース中、ゴールまでの残距離標識が1キロ毎に目に入る。やつの存在はあれに似ている。そうあれ、体温計だ。
ちょっと気怠い時に体温測ってさ、バッチリ平熱だと「んなわけあるかい、こっちはダルいんやぞ絶対風邪引いてるっちゅうねん」ってなるし逆に熱があると「えーなんで風邪引いてるの、信じられないやだー、やべなんか更に体調悪くなったかも…」ってなる。熱があってもなくてもプラスの気持ちにならない。

残り距離も体温計と同じで、距離がわからないと「あとどれだけ走れば良いんだよコラ」ってなるけど、知ったら知ったで「はーまだこれだけしか進んでないの? まだまだじゃん、やべ体力もたないかも」ってなる。そう我は生粋の文句言いなり。

絶対平熱のときのムーブ

ということで残り12~3キロの標識が見えたらへんでN島さんに追いつかれた。N島さんは目指す会でも最も速いうちの1人。(この表現よく目にするけど最もって言いながらうちの1人って、結局最も速いわけではないのねって思う)
今回の参加メンバー8人の中では多分ダントツに速い。都内から富士山の麓までチャリで行って帰ってくるようなクレイジーキャッツなヒトだといえば少しは速さは伝わるだろうか。

そんな彼が僕の後ろにいたのは彼の高校からの同級生Aやさんと途中まで走っていたからだ。N島さんが本気をだしたらぴゅーっとふくジャガーで僕が前を走っていられる余地なんてこれっぽっちもない。
お久しぶりっす! と後輩らしい爽やかな挨拶をしつつも、あっという間に抜かれるんだろうなー悔しいけど追いかけるなんて無理出しなーまだ半分以上あるしーとブツクサ。

ところがN島さん、さーっと先を行くどころか並走してくれるではないか。そしてN島さんは優しい心の持ち主なので大丈夫??というスマイルゼロ円サービス付。坂を登っているという辛いときに他人に気を使えるなんて、そんな大人に僕もなりたい。
がしかし坂道は基本ゼーゼーいいながら登るモノ。こんなときは返事のひと言を発するのすらキツい。「大丈夫っす」の1フレーズを言うだけで バシュっ! 肺は5のダメージを受けた。ってなる。

そしてN島さんは僕のペースに合わせるでも完全に置いていくでもなく、ちょっと僕が無理すれば追いつけるペースで走り出した。しかも会話しながら。
これはなんだ、あれか?「付いてこれるか坊主?」的なヤツか? 
それとも「おめぇの力はそんなもんか、悟飯!」のほうか?
どっちにしろ話しかけてくるってことは一緒に行こうぜってことに違いはなく「先輩の言うことはぜったーい」と絶対に王様になれない王様ゲームが存在するのが会社だとたたき込まれた平成成熟期に若手だった僕に必死についていく以外の選択肢はなかった。

「ほら、S水(先にスタートした御朱印マニア)に追いつくよ」と発破をかけられ、S水と似たようなジャージを着ているやつを見つけては「あれS水じゃないですか!?ほらぜったいそうだ、頑張って追いつきましょう。(おいつき顔を見たら)全然違うおっさんやーん!」というしょうもないくだりを3回ほどこなしつつ、N島さんに離されては追いつき、離されては追いつきを繰り返す。
「今残り9キロってあったじゃないですか、実は前日僕が差し替えたダミーで実はまだ10キロあるんですよ」というかなり冷え込むジョークを添えながら。なぜこんなクソつまらないことを言ったのか、当の僕もわからない…

ということで孤軍奮闘、一所懸命、猪突猛進の呼吸でなんとかN島さん残り5キロくらいまでついていったが、斜度がきつくなったタイミングでバッと離され僕の心はポッキーした。同じポッキーならおっさんにいちびられるのではなくできれば王様ゲームで女の子とポッキーゲームが…

体力と足をN島さんのシゴキにより使い果たした残り5キロ、僕の二度目の孤独のRunawayが始まった。ここからは孤独というか地獄だったのだがそれはまた次回。

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