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旅の終わりに、ファイナルコールで名前を呼ばれた話

空港のファイナルコールで名前を呼ばれたことはあるだろうか?
アナウンスで名前を呼ばれる恥ずかしいアレ。
私は、ある。

母と2人でのヨーロッパ旅を終え、パリから帰りの飛行機に乗る時のことだった。
母も私も真面目な性格で、きっちりと2時間以上前に空港に着いていた。
スムーズにチェックインと荷物検査を済ませ、あとはゲートの近くまで移動して搭乗するだけだった。

荷物検査を済ました後、なぜか私たちは指定の搭乗ゲートよりはるか遠くの場所に腰を落ち着かせ少し休んでいた。

すると母が徐ろに手帳を出し、
『今回の旅行のこと、手帳に書いて残しておかない?』
と言った。

私も母も忘れっぽいので、2人の記憶が新鮮なうちに、文字に残すというのは大賛成だった。

旅の終わりかけに、楽しかった旅の思い出を2人で振り返える。
母の字で、母の手帳に、この旅の思い出が認められる。
いつか2人でその手帳を見返す未来まで想像したら、その一連の行動がロマンチックに思えて、母の提案に私もノリノリだったのを覚えている。

そこから2人で旅の始まりから一日ずつ振り返った。
オランダ▶︎ベルギー▶︎︎︎︎︎︎︎︎︎フランスの三ヶ国を巡る旅だった。

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『フランスで見たお城はどれもディズニーに出てきそうなお城だったねー』

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『そうそう!
その日泊まったコテージもおとぎ話に出てきそうなくらい可愛かったよね...』

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『あれは本当に可愛かった...
次の日の朝ごはんも魅力満載で、ベストホテルだったよね...』

そんなことを2人で言い合いながらきゃっきゃしていたその時、
『ミス ミユ ワタナビ〜』
(私の名前はワタナベミユウ)
(渡辺はワタナビと発音されがち)
発音に違和感ありまくりだけど、確実に自分の名前だった。
続けて母の名前が呼ばれた。
周りを見渡したら誰もいなかった。
チケットの搭乗時間と時計を見比べた。

やっと2人してやらかしていることに気がついた。
そこからひたすら急いで搭乗ゲートに向い、ゲート到着後には『Sorry.』を連発した。

スタッフさんに呆れ顔をされながら搭乗すると私たち以外の全員が着席していた。
痛い視線を感じながら、心の中で『皆さん、遅れてすみません』と謝罪せずにはいられなかった。

しかし、母と私にとっては旅の振り返りに夢中になってファイナルコールで名前を呼ばれるという予期せぬハプニングが面白くてたまらなかった。
旅の最中ももちろん楽しかったのだが、こんなにも印象的な旅の終わりは初めてだった。笑
私と母にとってはこのファイナルコールまでが旅の思い出なのである。

それ以来空港でファイナルコールを聞くと、
シャルル・ド・ゴール空港で聞いたあのファイナルコールを思い出して1人で笑ってしまう。

『お母さん、次はどこに行きたいかな?』
なんて母娘旅の良さに思いを馳せながら
今度は母の手帳にどんな旅のメモを残せるか、今から楽しみにしている。


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