【MeWSS論文コラム】 システマティックレビューの作成

 システマティックレビューを書きたいというご相談をよく受けます。手持ちの症例の数に限りがあり、それを増やすのには何年もかかるが、システマティックレビューなら今すぐにでも論文が書けるだろう、ということのようです。症例報告とシステマティックレビューを組み合わせた論文を掲載する雑誌も近年増えており、オリジナリティーが高ければアクセプトのチャンスは比較的高いとも言えます。
多くの科学系雑誌はシステマティックレビューを原著論文として扱っており、ガイドラインに沿った方法論と書き方、テーマの新規性など、原著論文と同じ基準で審査されます。システマティックレビューが原著論文として取り扱われるのは、公表されたデータを題材にした「オリジナルな研究」であるという考え方に基づきます。
 エビデンスレベルの観点から、メタアナリシスとともにシステマティックレビューはRCTよりも上と位置付けられており、小さな観察研究を論文にするくらいなら、システマティックレビューの方が評価が高いという考え方もあると聞きました。しかし、システマティックレビューはオリジナルリサーチ論文が公表されていないと、そもそも作ることができません。一度書いてみると分かると思いますが、対象となる原著論文に日本からの研究結果が一つもない、もしくはとても少ないというのはかなり寂しいです。システマティックレビュー執筆もいいですが、ぜひ原著論文のことも考えてみてください。

 システマティックレビューで最も重要なのは、元となるクリニカルクエスチョンとMethodsです。従うべきガイドラインはPRISMAです。


 クリニカルクエスチョンがしっかりしていて、PRISMAチェックリストが埋められれば、適切な雑誌を選べばアクセプトはそれほど難しくはないかもしれません。しかし注意すべきは、その賞味期限はとても短いということです。作業に取り掛かったら投稿まで半年以上はかけないようにしましょう。時間が経ってしまうと「最新の文献が入っていないので検索しなおしてからもう一度投稿してください」といわれかねません。
 検索式についてもよく質問を受けます。
いかに漏らさず検索するかを気にする方が多いようですが、これはそれほど気にしなくてもいいと考えます。検索式が十分網羅的と見做され、結果の取捨選択に説得力があれば、その結果をそのまま使うことで構わないと思います。文献検索結果に対して査読者から指摘が入ることは稀で、問題が発生するとすればむしろ、作業途中に例えば共著者から「この文献が入ってない」と指摘を受けることです。ここで慌ててその文献を「マニュアルで」追加してはいけません。システマティックという方法論がその時点で成り立たなくなってしまいます。その文献を加えたいのであれば、それが検索結果に現れるように検索式を考え直しましょう。その文献から逆算して、検索タームを設定しなおします。
 参考文献がたくさんあるようなテーマのシステマティックレビューは、すでにどこかで論文が発表されている可能性が高いです。作業に取りかかった時点では同じテーマの論文が見当たらなかったとしても、投稿直前まで見つける努力をしてみてください。一方文献が極端に少ないテーマは、クリニカルクエスチョンそのもののオリジナリティが高い可能性があります。もし多少でも症例や臨床データがあるのであれば、システマティックレビューだけで発表するのは勿体無いかもしれないので、なんとかその臨床データを活用できる方法も探してみてください。