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【MeWSS 論文コラム】論文の英文校正とメディカルライター


英語論文校正

皆さん初めまして。MeWSSのOkamotoです。
本コラムは主に医学研究論文を書いている、バイリンガルでない日本人向けに書いています。他の分野の科学論文に関わる方にも、ひょっとしてお役に立てれば嬉しいです。
日本人が英語で論文を書いた場合通常、投稿前にNative English に英文構成を依頼するでしょう。実際どのJournalも、それを”強く”推奨しています。
論文英文校閲サービスを提供している会社は世界中にいくつもあり、料金もリーズナブルだと思います。こういったサービスに対する満足度に関して、私は信頼できる数値を見たことはありませんが、「とても満足」と「全然期待通りでなかった」という両極端な意見を耳にした経験があります。
日本人であっても、ご自身の論文英語に絶対の自信をお持ちの先生方は一定数いらっしゃいます。このような著者の先生にとっては、最低限の文法やケアレスミスを直してくれるだけで十分であり、「とても満足」になるのだと思います。
一方、自分の書いた論文の内容に問題はないとは思うものの、できる限りアクセプトの確率が上がるように、「最高の英文」を提案してほしいという著者もいらっしゃるでしょう。そういう期待をお持ちなのに、添削結果が最低限の文法間違いの指摘に留まっていた場合、期待はずれと思われるかもしれません。
選択肢があるべきだと考えます。
論文を書くプロフェッショナル、Medical writer、という職業があります。Medical writerが論文校閲する場合、どこを見るでしょうか。私たちは常にEditor、Reviewer目線で原稿を見ます。誤解なく言いたいことが伝わるか、曖昧な場合はどういう表現がベストか、考えます。自分が書くつもりで参考文献や関連ガイドラインも確認し、最新の適切な用語を使うように提案もします。もちろん受け入れていただかなくてもいいですが、投稿ターゲットジャーナルの傾向を判断して、構成などについてもご提案する場合もあります。
せっかく頑張って最後まで書き上げた論文です。アクセプトされるように、できる限りの準備を、一緒にしませんか。


Medical Writer

Medical writer (以下MW)は論文を書くプロフェッショナルだと前の記事で書きました。
研究論文はその研究をした人が書くべきで、他人が書くなんて。
同感です。私も前職で面接した時に、初めてこの職業の存在を知りました。その時は「論文書いてお給料がもらえるんですか?」と感動したものです。実は私は論文を書くことが、寝食よりもとは言いませんが、朝起きて一番に考え出す程度には、好きです。そして、peer reviewのように人様の論文をより良くするために色々考えることも、書くのと同じように大好きです。
この話はまた別の記事でするとして。
研究論文の著者は、研究デザイン(コンセプト)立案に携わった人、実際に実験をやった人もしくはデータ収集・解析した人がなるべきで、著者要件はICMJEのガイドラインにも明記されています。そして論文は著者が書くべきなので、「書くだけの専門家」が入る余地は本来ありません。
しかし、製薬会社主導の医学研究論文においてはこの限りではないのです。
それは過去、企業主導医学研究の論文執筆に企業の人が関わり、不正が発生したことによります。
このような事態を繰り返さず予防することを目的として、Good Publication Practice(GPP)というガイドラインが作られ、その中にMedical writerが言及されました。
"Properly trained and experienced medical writers can help authors develop publications (50). Emerging evidence suggests that professional medical writers enhance publication quality; publications developed with medical writers as collaborators has been associated with a reduced risk for retractions due to misconduct (50, 51). The AMWA-EMWA-ISMPP Joint Statement on the Role of Professional Medical Writers provides helpful information for working with medical writers (26)." (Ref1)
今では、欧米ではMWが治験論文を書くのは当たり前であり、日本でも一般的になっています。
では、医師主導研究ではどうでしょう?企業が資金提供していても、論文内容に関わることはできないので、利益が関係した不正は考えにくく、そういう意味でのMWの役割はありません。
でも、我々には経験があります。論文を200報書かれた先生は他にもたくさんいらっしゃると思いますが、分野横断的に数をこなすことができるのはMWだけでしょう。
ちなみに、MWは著者にはなりません。ただしAcknowledgement(謝辞)にその氏名を書くことが推奨されています。