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「メッツゲライササキ」のnoteをはじめます

はじめまして。田園調布のシャルキュトリ専門店「メッツゲライササキ」の代表、佐々木康成です。ここは私が代表を務める「タカラ食品工業」の旗艦店。弊社のブランド「ブッツ デリカテッセン」は、デパートやスーパーなどで見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。今回、「メッツゲライササキ」のブランドブックとしてnoteを始めることにしました。

「メッツゲライササキ」とは。

当店は2024年で開業11年目。ドイツやフランスの本格的な製法を用いたハム・ソーセージやパテを中心としたショップです。田園調布は閑静な住宅街で外国人の方も多く住んでいるエリア。少しずつお客様に浸透し、夕飯のお買い物や、ちょっとしたランチにご利用いただいています。「東京横浜独逸学園」へのバスが通っていることもあり、ドイツ人コミュニティが地域に根ざしているのもありがたい立地ですね。

私たちの誇りは、常に本物であること。ドイツで修業し「ゲゼレ」を取得した3人の技術者、フランス・リヨンで毎年開催される「パテ・クルート世界選手権」2021年優勝という実績のシェフが腕を振るっています。彼らが作るハム・ソーセージ、シャルキュトリは、ここでしか買えない名品です。

ここで一つ解説です。「ゲゼレ」とは、技術力が備わったプロとして認められた証。修業期間は3年にも及び、手工業や工業などさまざまな職種のスペシャリストとして養成されたのちに取得できるドイツの国家資格なのです。店名にもある「メッツゲライ」とは、ドイツでは屠畜から加工、販売まで行う食肉加工品店のこと。本場では、最高の職人資格「マイスター」を取得した親方とゲゼレたちが働いています。

「ゲゼレ」は、技術力が備わったプロとして認められた証し

これまでの軌跡。

ではなぜこの店を開いたのか。まずは開業までのストーリーをお話ししましょう。

「タカラ食品工業」は創業65年、当初はいわゆる“赤ウィンナー”を作る会社でした。赤ウィンナーとは、豚肉だけでなくウサギやマトン、魚肉などさまざまな種類の肉を集めて腸詰にし、着色したもの。その頃の日本の食肉加工は、これが主流だったんです。まだまだ肉は高級だったし、あまり手に入らない貴重品でしたから。東京には同じようなハム・ソーセージメーカーが300社ほどあったのではと思います。
 
その後、関西などから大手メーカーが進出し、次第に我々のような中小企業は立ち行かなくなりました。そんな時、ドイツ人マイスターのお店で日本人初の工場長を務めた鏑木さんという方と出会い、「タカラ食品工業」は大きく転換することに。鏑木さんと我々で、ドイツの本格的なハム・ソーセージを作ることにしたのです。そうして生まれたのが「ブッツ デリカテッセン」でした。

ハム・ソーセージメーカーとして生まれた「ブッツ デリカテッセン」

本格的であるほど高価になるため、はじめはなかなか軌道に乗りません。最初に取り扱ってくれたのが高級スーパーを営む「シェルガーデン」や、クオリティベーカリー「アンデルセン」でした。「ハムやソーセージだけでなく、ローストビーフやサラダも作ってくれないか?」と求められるうち、デリカテッセンを展開するようになります。

お陰さまでいくつかの有名百貨店から出店依頼があり、六本木の鳥居坂に「ブッツ デリカテッセン」本店を構えるまでになりました。しかしながら六本木の街が変わりはじめた影響で、デリカテッセンの本店からワインとソーセージを楽しめる夜の業態に変更することになります。これにより、しばらくは本店機能がなくなり、百貨店中心にブランド展開していましたが、念願叶って田園調布にブッツ本店としての「メッツゲライササキ」オープンとなりました。

ドイツの技術をバックボーンにした、世界の食肉加工を再現する店に。

「ブッツ デリカテッセン」を共に作り上げてきた鏑木さんの技術は素晴らしく、大変センスがある方でした。昔のドイツ人マイスターはレシピを公開せず、最も肝心な香辛料は鍵をかけた部屋で調合するほどだったので、まさに盗むように技術とレシピを勉強されたそうです。鏑木さんのおかげでブランドの方向性が定まり、会社全体が本物志向に進み始めました。

一方で、「本当に正しいドイツ製法なのかはわからないまま」というのが一つの課題でした。そこで、社員を「ゲゼレ」修業に派遣することにしたのです。マイスター資格を持ちアルペンザルツ岩塩の販売をしていたユルゲン・シュミットさんと南ドイツのいくつもお店を巡って修業先を「メッツゲライ・ヴィーバー」に決定。あまり大きくない家族経営のお店ですが、技術も商品も一級で、レングリースというミュンヘンから1時間ほどの場所にあるのに、わざわざ来るお客さんも多いという名店でした。

ここでハム・ソーセージ職人としての確かな技術とパッションを身につけたスタッフが日本に戻ることで、私たちが求める本物のスタンダードが確立でき、かつ社内全体の活気にもつながるはずと思いました。これまでに3人が「ゲゼレ」を取得し、「ブッツ デリカテッセン」「メッツゲライササキ」の商品開発や生産現場で活躍してくれています。

「ゲゼレ」を取得した職人。市原工場にて。

彼らが学んできたドイツの製法をそのまま再現したい。ところが、本場のレシピで作ったものは日本では流通させるのが難しいということがわかりました。ドイツは4度以下での賞味期限を設定するのに対し、日本は10度以下。日本の基準では、ドイツの香りのよい香辛料は使えず、美味しい食感も犠牲にしなければなりません。

スーパーや百貨店では取り扱いが難しいのですが、しっかりと商品を管理できるスタッフと低温で保存できる衛生的な設備の整った直営店であれば安心安全。「メッツゲライ」ではドイツと同じように4度以下の管理で販売しています。ここで販売しているハムやソーセージはこのお店のためだけに作っているものですから、効率は度外視、これが本店としてのプライドなのです。
 
世界にはさまざまな食肉加工品があり、特に食肉文化の欧米では国によって、地方によって、たくさんの美味しさがあります。私たちのヴィジョンは世界中の美味しい食肉加工品を一流に再現して行くこと。中でも今力を入れて取り組んでいるのがフランスのシャルキュトリ。シャルキュトリは日本ではまだまだ馴染みは薄いですが、美食の国フランスの庶民の食卓に欠かせない料理です。

「メッツゲライ・ササキ」の初代シェフはフランスで5年間修業した女性のシャルキュティエ。彼女がベースをつくり、現在はフランスのリヨンで開催される「パテ・クルート世界選手権」で優勝した福田シェフによって更にパワーアップしています。これからも日本でシャルキュトリの美味しさを広め、シャルキュティエを目指すシェフを集って行きたいと思っています。

シャルキュトリがある暮らしを広めたい。

店頭では、ハム・ソーセージ、パテのほかに、サラダ、チーズ、パンも販売。オリーブオイル、ワイン、ジャムなどもこだわって選んでいます。コロナ禍を経て現在はランチタイムの軽食のみの提供となっている併設のレストランが再開できたら、パテをつまみにお酒を一杯飲んで帰る、なんて体験ができるようにしたいですね。

「メッツゲライササキ」の店内ショーケース

実は最近、南ドイツのソウルフードのプレッツェルを作り始めました。新橋駅に開いた姉妹店「ル・プティ インビス」ではビールと一緒にカジュアルに楽しめるようになっています。このプレッツェルも、南ドイツの有名なベッカライ(パン屋)のレシピをベースにドイツ産小麦と岩塩を使用した本物を再現しています。

「メッツゲライササキ」は、いつも美味しいものがいっぱいで、田園調布の街に愛される店でありたい。今後、このnoteで当店の魅力を知っていただけたらと思います。