ラブレター案その2
拝啓 まずは暑中のお見舞いを申し上げます。突然のお手紙で驚かせてしまうと知りつつ、お手紙をしたためます。ごめんください。
結論から言うと、私は戸田さんのことが好きです。好きになった経緯や好きになった理由を説明しようとしたのですが、何を書いても嘘になってしまったのでここでは省略することをお許しください。どうしても、好きであるという事実に対して辻褄が合うようにストーリーを創作しているような気分になってしまうのです(私がディベート部だからでしょうか?)。代わりに、私の戸田さんへの今の気持ちを伝えたいと思っています。
戸田さんは二学期に受けた熱力学の授業を覚えていますか。先生が最も熱く語っていたのは、熱力学第二法則についてでした。熱は必ず温度の高い物体から温度の低い物体へと移るというお話でした。不真面目な授業態度の私でも熱力学第二法則を覚えているのですから、熱い先生の熱量が私にも移ったのかもしれません。ところで、私は最近どうにもこの第二法則が恋愛にも当てはまるような気がしてならないのです。
私の戸田さんに対する今の気持ちは、熱々おでんの卵のようです。口にしようとしてもうまく言葉が出なかったので手紙を書いた次第です。今は一方的な恋ですから、押しつげがましく感じさせてしまったらすみません。戸田さんに気がなければ冷たく接していただいて構いません。そうすればやがて私の熱も冷めて諦めることができるでしょうから。しかし、もし、万が一私の熱を受け入れる気持ちになって下さって、いつか二人が同じ熱量の気持ちとなり生ぬるい幸せを共有できたならどれほど素敵なことだろうと思います。
(それはそうと、私のこの熱は誰から与えられたのでしょうか。)
敬具
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