不毛会議 #57
「壁ぶち抜くぞ。空気が澱んでる」
アズナブルは「空気」を気にしていた。
といっても環境問題の話ではない。
社内の「空気」の事だ。
その解決策はひとつ。
席替えだ。
席替えを思いついたら1か月で7回でも実行する。
しかし席替えを繰り返して行くうちに
彼の中の空間イメージに限界が出たのであろう。
「これじゃない、あれでもない」
その結果出した答えがこれだ。
事務所の壁をぶち抜く。
どうだい?凡人には無理だろう?
部屋の模様替えとは訳がちがうんだぜ?
机?椅子?そんなもん移動するだけなのかい?みみっちい。
肝の玉が小せえんだよ。
こちとら壁だ。
壁をぶっ壊してやるんだ。
この部屋の背景。
文字通り「模様を替えてやるんだ」
もはや「模様破壊だ」
誰も俺のこの衝動は止められないぜ。
といった具合か。
お陰で「もっと速い意思疎通を」というコンセプトで、広い事務所のフロアにいたスタッフ達のデスクが狭い部屋にぎゅうぎゅうに押し込まれたり。
「もっと生産性を上げるんだ」と営業部、企画部、生産部がミックスしてみたり。
なぜか社長室が広大になりダーツバーになったり。
最後には壁だけでは飽き足らず床に穴を開け螺旋階段が出来た。
一体何処へ向かっているのだろう。
これが後の"目黒区のサグラダファミリア"である。(ウソ)
つづく
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