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夜明け前に発つのだ。
旅に出る時は、“夜明け前に発つ”と決めている。
陽に染まる前の、深い闇に飲まれたままの街を通り抜け、最寄り駅へと向かう。
1人、2人、3人…。僕も含め、人は片手で足りるほどしかいない。
そりゃそうか、平日の始発電車に乗る人なんて、ほとんどいるわきゃないよな。
背負っていたザックをホームの地面に置き、大きく深呼吸をする。人々の呼気が混じっていない純な空気が、肺胞の隅々にまで染み渡る。
ああ、空気がうまいわあ。
この数瞬のため、僕は夜明け前に発つんだ。
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