俳優演出-監督として知っておくべき事
まず、監督として知って頂きたい事があります。
それは俳優は決して監督の思い通りの演技をしないと云うこと。
俳優は常に
①監督の想定とは違う方向で悪い演技をする。
②監督の想定の許容範囲内での演技をする。
③監督の想定とは違う形で素晴らしい演技をする。
この3つしかありません。
そう、100%頭に思い描いた様な演技を俳優にさせるのは無理です。
ですので、監督は常に②③を目指して俳優をコントロールしていきます。
俳優にとって “間” は恐怖です。
なぜなら "何をすれば良いのか分からない" からです。
ですので、その "間" を恐れて常に変化を表現しようと試みます。
それが俗にいう "ワザとらしい" とか "嘘くさい" に繋がります。
これが①の "想定とは違う方向で悪い演技をする" に繋がります。
これは、当人の俳優としての能力にも関わってきますが、読解がきちんとできてない場合もこうなります。また読解が上手くいっていても俳優がそれに合った感情を自分の経験から引っ張りだす事が出来ない場合があります。そういう時は①に陥ってしまう事が多々あります。しかし、最大の原因は“監督が適切な指示を出せていない”事にあります。
②の想定の許容範囲内での演技をする。
これは十分テキストを理解し、その上で ”感情表現は合っているのだけどディテールが違う“ 場合と "概ね合っている感情表現" をする事です。この少しのディテールの差にとらわれると俳優の新鮮な表現を失う可能性があります。こういう時は【バリエーション】を撮る事をお勧めします。これは演技を何パターンか撮っておく事です。時に、こういう状況で役者さんは化けます。
【バリエーション】を撮る場合はきちんと役者さんに『バリエーションを撮る』事を伝えましょう。そうする事で、一度リフレッシュされて、新たな気持ちで別の演技が出来ます。ただし、バリエーションを撮る場合の指示は具体的でなければなりません。
③監督の想定とは違う形で素晴らしい演技をする。
この瞬間に出会えた時、監督は震えます。心底、その役者を尊敬します。
これは想定とは違った、役者側からのアプローチや解釈の仕方から生まれます。
大事なのは、その想定とは違うアプローチがきちんとそのシーンと映画の目的に合っている事です。その上でこの瞬間に立ち会えたら、喜んでその演技を採用しましょう。
さて、長々と言いましたが伝えたいのこれだけです。
役者は善くも悪くも思ったように動きはしないので柔軟に判断して対応せよ
この判断と柔軟な対応は経験でしか培われません。
しかし、映画撮影はそうそう頻繁に撮影できません。
だからこそ、知識とシュミレーションが必要となって来るのです。
また、世の中には自分の想定していた物より素晴らしい物が沢山あります。
監督には映画を導く為の確固たる信念と指針が必要です。映画を面白くする為なら何でもするべきなのです。もし、自分が想定していたように完璧に再現する事で映画が素晴らしくなるならば、それを押し通すべきです。ですが、誰かから自分の想像もしてないような素晴らしいアイディアが出てきた時に、きちんとそれを見つけて映画の為に活かす柔軟性が監督には必要です。そして、俳優との共同作業はそれに挑める最大のチャンスなのです。
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