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老後の趣味の見つけ方が上手な人に教わったこと。

最近よく連絡をとっているのが、定年退職をした65歳のおじさん。誰なのかと言うと、高校時代の友人の父親にあたる。

現在、友人を飛ばして直接連絡を取っている関係を自分でも不思議に思う。今日はこの初老のおじさんの魅力について話したい。

おじさんは、長身で華奢。感情を表に出さないトレーニングでも積んだのであろうか、邪気というものが一切感じられず、謙虚で優しい。僕に対しても敬語を織り交ぜながら話をしてくれる。(タメ口でいいのに)しかも、この年齢にしては珍しいくらい柔軟性があり、世の中にもこれといって文句もなさそうだ。


そんな、おじさんは実のところ独り身だ。だから、なんとなく放っておけない存在だった。


おじさんは、元TOYOTAのディーラーの敏腕営業マン。定年退職後、以前から興味のあった「木工」というクラフトの世界にハマった。部屋を丸ごと工房にして、身の回りのものは全て自分で作っている。写真を飾る額、テーブル、椅子、自宅のリノベーション。趣味の音楽鑑賞用のスピーカーまでいくつも自作し、それぞれの音質をセレクターで切り替えてジャズを楽しんでる。(渋すぎる!)

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ついには、インターネットで今はなきALTECというメーカーの劇場用の巨大なスピーカーの図面まで手に入れ、「中古品でも買うと高いですから」と、見事なレプリカを作ってしまった。こうして節約しながら創作活動を楽しんでいる。(趣味が高じまくってる…)


どうやって木工学んだのかというと、YouTubeで職人の動画を片っ端から見て学んだそうだ。「分かりやすく解説してくれる人が世界中にいるんですよ。なんの得があるんでしょうか。とても親切です。」と嬉しそうに語る。(広告収入ですよ!)


YouTubeのトップ画面を見るとエド・シーランがやたら写っているので、好きなのかと聞くと、「エド・シーラン好きです。かっこいいです。」と言う。(若いw)以前僕がライブに行けなかった話をすれば、「次は、いついつに来るらしいですよ。」と即答する始末。


おすすめのフォークバンドのURLを送ると「いいですね〜」と感想をくれる。
ヴィンテージなインテリアや、フォルクスワーゲンが好きというのも気が合う。
僕が興味あることを話せば、真剣に耳を傾けてくれる。歯車が合う感じだ。


いまでは、なんとなく放っておけない存在から、大好きな友達になった。自分もこんな人になりたいなぁと常々感じている。

このおじさんが僕の興味を鷲掴みにする一因は、趣味が沢山あることだ。

人は定年退職後、いままで会社にやらされていたコトがキレイに無くなる。そこで、いざ趣味を見つけようとしても、何をしていいのか分からず、もどかしさを覚えるお父さんは結構多いのではないだろうか。


だけど、このおじさんは、やってみたい事を見つける。しかも簡単に。そして、なるべくお金のかからない方法を考える。


先日たまたま放ったおじさんの言葉に驚かされた。

「定年退職してから、1日たりともボーっと過ごした日はありません。何かしらしています。」


素晴らしい…。毎日が日曜日なのに、偉いと言うか、つくづく引き出しの多い人だなと。休日に惰眠を貪ってしまう自分が恥ずかしくなる。


おっとりとした口調のわりに、実は自分に厳しい人なのかと思えば、
「老後の人生を思いっきり楽しんでるだけなので、意識している訳でもないんです。」などと言う。


最近は一人キャンプにハマっているそうだ。きっかけはテレビ。自身も昔やっていた事を思い出し、再度 YouTubeとGoogleで情報収集し、道具を集めて山に繰り出したそうだ。今では「この箱があれば5日間はキャンプが出来ます。」と嬉しそうにリビングの片隅に置いてあるグリーンのボックスに指を差す。

現在はドローンに興味があるようだ。人間の手では撮れないアングルからの動画の素晴らしさを嬉々として話していた。もしかしたら次回会うときに持ってるかもしれない。

このように、会うたびに興味がアップデートされてる。


分かった。好奇心とインターネットだ。趣味を見つけるというよりは、気になる事を見つけ、情報を収集して取り込もうとしている姿勢だ。だからエドシーランの来日のことも知ってるんだ。


年を重ねると、経験による概念が出来上がり、やってもいないのに結果を決めつけて分かった気になってしまう。だから新しい発想も芽生えなくなり、同じ昔話ばかりする。これはいつの時代も変わらない。


どうやら、このおじさんは年齢を理由に諦めるとか、出来ない理由を並べる思考が無いようだ。

アンテナを張り、興味を持てそうなことが引っかかれば、トコトン調べる。そうすると情報が世代間の溝を埋めるため、年の差を感じさせない。

つまり、好奇心を持ちつづけ、柔軟に情報収集することが、この複雑な時代をシンプルに生き抜くコツなんだと学ばせてもらった。


こんなに年の離れた友達ができて非常に嬉しい。きっとおじさんもそうだろう。

このおじさんの話は、定年退職後にやりたいことが見つからずヤキモキしている親御さんにヒントを与えられるのではないだろうか。


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