2021年5月に読んだ本まとめ

2021年5月に読んだ本を多少の備忘録とともにまとめるやつです。


犬村小六「プロペラオペラ2」

空を飛ぶ艦隊を用いた戦争を描く、恋と空戦の物語。
ビーチでの一休みやガメリアへ送り込まれるスパイのユーリとのほのぼのエピソードを挟みつつ、やはり見どころは命がけの空戦パートでしょう。
保身のことしか頭にない上官たちによって前線から追いやられるイザヤたちと、あれこれ理屈をこねくり回して戦場へと向かっていく「飛廉」。
国を守るために命がけで戦場へと向かう兵士たちの姿は、雄々しく感動的に映りました。
クロトとイザヤの恋物語としても話が少しずつ進んでいて、果たしてこれは悲恋なのか報われる恋なのか……先が気になるふたりです。


有象利路「君が、仲間を殺した数II ‐魔塔に挑む者たちの痕‐」

いや、めちゃくちゃおもしろいですよこれ。
1巻ラストで、シアを守るために彼女との決別を選んだスカイツ。
その続編たる2巻は、悲嘆に暮れるシアが、もう一度スカイツと向き合うための物語となっています。
シアとスカイツの歪な恋物語としてもおもしろいですが、バトルシーンも圧巻でした。
クライマックスで描かれるバトルはあちこちに伏線が張られていて、ものすごくおもしろかったです。
1冊かけてシアが大きく成長したのが感じ取れて、ハードでブラックな世界観を圧倒する爽快感がありました。
あとがきよりこの作品はここで終わりの予定とのことですが、まだまだまだまだ読み足りないしこれから先どうなっちゃうの!?というポイントも多いので、もしも機会があれば続編にも期待したいところですね……!


竹宮ゆゆこ「心が折れた夜のプレイリスト」

めちゃくちゃ凄え青春小説でした。
とにかく疾走感がハンパなく、臨場感もハンパなく、何が起こってるのかすべてを理解するのは難しく、けれどめちゃくちゃ力強い青春小説でした。
主人公の萬代は「自宅の窓が閉まらない」という事実に恐怖を覚え、自宅に帰れなくなってしまいます。
そんなメンタルの弱った状態で出会ったのは、正体不明の変態、あるいは先輩。
メンタル的に弱っていた萬代が先輩に引っ張り回されていく中で、恐怖で凝り固まっていた彼の心が少しずつ動き出していきます。
物語は2編収録されており、どこか「世にも奇妙な物語」染みた、かたちの見えない恐ろしさが、萬代の心理描写を通じてこれでもかと伝わってくる恐ろしい作品でした。
そのうえで、彼を窮地から引きずり出してくれる変態、否、先輩とのテンポの良いやり取りや、スピード感たっぷりのクライマックスも刺激的でした。
竹宮ゆゆこさんの痛みを伴う青春小説の本領を久しぶりに浴びて、めちゃくちゃ興奮しています。
とにかくこの作品は、すごい!
あと、キラキラしてない泥臭い青春小説なので、それだけご注意を!


杉井光「楽園ノイズ2」

1巻で完全に虜にされてしまいましたが、2巻もとてもおもしろかったです。
女3男1のロックバンド「PNO」として活動を始めた真琴たちですが、凛子の母親がバンドをやめさせようとしたり、詩月の祖父が真琴を拉致ったりとトラブル満載。
しかしバンド仲間同士の絆がある今、様々なトラブルをたやすく乗り越える姿が頼もしい。
文化祭ライブを前にして大物ミュージシャンのキョウコさんとの対立も描かれ、PNO一致団結して音楽で殴っていく展開はとても熱かったです。
真琴にとって、まさかのオチも含めて……。
文化祭パートは文化祭パートで楽しく、特に真琴の女装が完全に公のものとなってきていて、どんどん後戻りできない沼に沈められている感じが良かったですね。
余談ですがキョウコさんは杉井さんの別作品からのクロスオーバーで、あの世界からこの世界まで歴史が続いていたのだと思うと感慨深いです。


徳山銀次郎「厳しい女上司が高校生に戻ったら俺にデレデレする理由2 ~両片思いのやり直し高校生生活」

夏休み。七哉は透花を含めた仲良しグループと一緒に、プールに行ったり、田舎に行ったりして夏を満喫します。
そしてこの巻では、七哉がひょんなことから知り合ったギャルの先輩である琵琶子が初登場。
この琵琶子がギャルながら正義感が強く、ほどよくポンコツで、そしてめちゃくちゃイイやつっていう最高キャラでした。
ただひとつ指摘するなら、琵琶子の胸のサイズがシーンによって変わってたのは気を付けてほしいですね……、大事なので(カラオケのシーンで小ぶりって書いてあったけど設定集ではDカップとあるので、たぶん大きいのが正)。
(※後日徳山さんのツイッターにて言及があり、作者が巨乳脳だったためDカップでも小ぶりと描写してしまったそうです)
七哉と透花のラブコメとしても成長や進展がありつつ、楽しい1冊でした。
ほとんど印象的には琵琶子のインパクトが持っていってしまいましたが……。


有象利路「賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求 〜愛弟子サヨナのわくわく冒険ランド〜」

これは、ひっどい……(褒めてない)。
賢勇者であるシコルスキとその弟子のサヨナの元に集まる、様々は困りごとを抱えた変態たちの物語。
最初の依頼人からしてすぐ全裸になる変態のおっさんだし、中身は下ネタのオンパレード、ファンタジー世界だという前提を一切無視して現実世界をイジりまくり、ラノベ界隈やなろう系に喧嘩を売りまくり、メタ発言が気軽に飛び交う、目がチカチカするくらいぶっ飛んだギャグラノベでした。
ここまで知性のないギャグラノベ、初めてです。
正直、めちゃくちゃおもしろいんですけど、これをオススメとか言ったりするのは致命的なまでに間違ってる行為な気がしてならないです。読むなら自己責任で、どうぞ。


伊坂幸太郎「マリアビートル」

「グラスホッパー」の続編という位置づけですが、話として独立しているので、前作のことを知らなくても読めると思います。
盛岡を目指して走る東北新幹線を舞台に、それぞれの目的で乗り込んだ裏稼業の人間たちがトラブルに見舞われまくるお話です。
時間にしておよそ2時間ちょっとの旅程ですが、その中で信じられないくらいの量のトラブルが起こるわ起こるわ。
ひとつのトラブルが引き金となってまた次のトラブルを引き寄せ、時にはそれが解決策を呼び込むも、他の人物の思惑から妨害されたりと、とにかく読みごたえがたっぷりの大満足な1冊でした。
中学生ながらに切れる頭脳と悪魔のような心を持つ「王子」が、とにかく言動が腹立たしく、こいつが最後どんな目に遭うのかを確認したいというのが読みすすめる最大の原動力になっていた感もありました。
あとは、とにかくついてない男、七尾は(裏稼業なのに)好ましいキャラクターでしたね。


西尾維新「結物語」

23歳、大学を卒業し警察官になった阿良々木暦の、“将来”の物語。
かつて高校時代を共にした仲間たちが、それぞれの未来に羽ばたいているのを見守ることができてとても感慨深かったです。
特にその、なんというか、羽川がずば抜けてヤバいというか、ひとりだけ作中世界観をぶっちぎった未来に羽ばたいていましたが……。
「つづらヒューマン」のラストシーンはシリーズを追っかけてきたからこそグッとくるものがあり、ここで〈物語〉シリーズが完全に幕が下りても納得するくらい綺麗でした。
しかし物語は続き、モンスターシーズンへ……!



個人的な今月のお気に入り作品トップ5

第1位/マリアビートル

第2位/結物語

第3位/心が折れた夜のプレイリスト

第4位/君が、仲間を殺した数II ‐魔塔に挑む者たちの痕‐

第5位/楽園ノイズ2