2021年9月に読んだ本まとめ

2021年9月に読んだ本を多少の備忘録とともにまとめるやつです。


てにをは「また殺されてしまったのですね、探偵様」

特異体質により、殺されても生き返る探偵の追月朔也が主人公。
犯人により殺された探偵が生き返るわけだから、本来の殺人事件なら知り得ない情報から推理をしていく感じの作品です。
この作品は探偵でありつつも、ミステリやトリックよりも、犯人を追いかけるアクションシーンや史上最悪の犯罪者集団との敵対関係を楽しむ作品なのかなと感じました。
蘇る探偵やバトルシーンの映えるリリテア、そして《最初の七人》と規格外な存在がゴロゴロ登場するのもワクワクさせられますね。
なんというか、厨二心をうまくくすぐられるタイプの作品でしたね。


藤本タツキ「ルックバック」

ジャンプ+に掲載され話題となった藤本タツキさんの読切漫画が、それ一本のみ収録の単行本として登場。
掲載しているのは表題作『ルックバック』のみで、ストイック。
自分よりも技術のある京本の存在に一度は筆を折った藤野が、再び筆を執るまでの流れはかなり印象的でした。
やはり創作において、褒めてくれる人……という存在は大きいと思いますね。
物語のクライマックスの展開も衝撃的で、漫画や創作と向き合ってきた人生の青春をひとつの作品としてぶちかましてきたという印象です。
とても良かったです……。


知念実希人「久遠の檻 天久鷹央の事件カルテ」

かつてアイドルとして活動していた、16年の時を経て一切歳をとっていないという不老不死の少女の物語です。
今回のエピソードでは鴻ノ池が本格的に統括診断部レギュラーメンバー入りし、桜井や成瀬といった警察組も序盤から鷹央たちと共同戦線を張るなど、オールスターがっぷり四つでの捜査が楽しめました。
ついに鴻ノ池が鷹央の無茶ぶりの毒牙にかかるなど、楽しいエピソードも盛りだくさん。
事件の謎を解き明かしてからさらにもう一山があり、最後までハラハラさせられます。
医療トリックはもちろん、たくさんの事件が繋がってできた事件の作り込みの細かさにも驚かされました。
『久遠の檻』というタイトルの意味の重さと、ひとりの少女のために奔走した鷹央の成長も感じられるエピソードだったと思います。


岬鷺宮「三角の距離は限りないゼロ7」

秋玻と春珂の入れ代わりが終わる……前に、矢野が自分の性格を見失い、改めて自分自身というものに向き合う1冊でした。
矢野自身だけでなく、これまで近くから彼を見ていた秋玻と春珂、さらには様々な立場の友人知人たちからの“矢野像”を聞いて回る様子は、小説というよりも自己啓発本じみた雰囲気のお話になっていました。
思春期特有の精神状態のあやふやさを、真っ向から描いてきた印象です。
そして“矢野とはどんな人間か?”という問いに答える秋玻/春珂に、ついに入れ変わりの最後のときが……。
最終巻でどうまとめるかに、期待が高まります。


協力:福本伸行、原作:萩原天晴、漫画:上原求、新井和也「1日外出録ハンチョウ 第12巻」

家主不在の宮本宅でパラサイトする話と、パフェ食べる話がおもしろかったです。
宮本が違反切符切られる話では、路地に張ってる警察官がちょうどよく腹立つ感じなのがまた……。
日本でゴールド免許で居続けるのなんて、ペーパードライバー以外は難しすぎるので、宮本も心を強く持ってほしい……。
同じくカイジからのスビンオフ作品・イチジョウとのコラボでは、深夜のファミレスで駄弁る感じが好きでした。
こうして見ると、一条って本当にただの苦労人アルバイト青年……。


秋桜ヒロロ「悪役令嬢、セシリア・シルビィは死にたくないので男装することにした。」

これはめっちゃおもしろかったというか好きな作品でした!
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したセシリアが、死亡フラグを回避するために男装して学園生活を送る話です。
が、男装してようが次々とトラブルが巻き起こり、読んでてとても楽しいです。
セシリアの正体を知る義弟のギルバートと、正体を知らない王太子のオスカーが、それぞれセシリアに惹かれていって、倒錯した恋愛感情を次々摂取できるのがとても良いです。
個人的にはリーンのキャラがとても良いので、これからセシリアとたくさん絡んでほしいですね。


紗池晃久「GHOST GIRL ゴーストガール 第3巻」

中級者となったクロエが参加したのは、悪霊の掃討作戦。
ここでもショゴスと共闘することとなるわけですが、クロエとショゴスがかっこよかったりかわいかったりでとても良かったです。
一方でストーリー的には謎の存在、オスカー・クトゥルーが初登場。
冒涜的な強さにクロエたちも大苦戦ですが、彼女の才能、そして成長を強く感じるエピソードにもなりました。


伏見つかさ「俺の妹がこんなに可愛いわけがない17 加奈子if」

俺妹のPSPゲームに収録されていた加奈子ルートの加筆小説化版。
自分は俺妹では加奈子がいちばん好きだったので、ゲームもやってなかった身としてはとてもありがたいノベライズ作品でした。
とにかくまあ加奈子の魅力的なとこ詰め合わせみたいな内容で、とても良かったです。
京介との交際を誰からも祝福されない中で啖呵を切るあたりは加奈子らしさに溢れていました。
あとはやはりこのifルートでも最後に立ちふさがるラスボスは麻奈実でした。
本当に……麻奈実って人は。
最後に幸せそうな加奈子を見れて終われて良かったです。


杉井光「楽園ノイズ3」

PNOにベースの新メンバーが加わり、真琴が一時脱退をする話。
今回もめっちゃくちゃ、良かったです。
親のコネを嫌って憧れのPNOに飛び込んできた伽耶のエピソードも、一時脱退中にソロ活動をしようと模索する真琴のエピソードも、そのどれもが印象的でした。
拓斗さん、蒔田さん、そして真琴が時代を超えて作り上げた音源のエピソードも、音楽の持つ力のひとつとして強く胸を打つものでした。
ギャグパートとしてはクリスマスイブに4人の女の子と連続デートをするはめになっていましたが、完璧に真琴ハーレムを構築しててヤバかったです。
音楽への熱さも、女の子たちのかわいさも、胸を襲う切なさも、その全てが「楽園ノイズ」の魅力で、心から堪能させていただきました。


徳山銀次郎「厳しい女上司が高校生に戻ったら俺にデレデレする理由3 〜両片思いのやり直し高校生生活〜」

今回の新キャラは七哉がネトゲを通じて知り合った年下の女の子、右色小栗ちゃん。
控えめな性格ながらも七哉にたびたびアピールをする、いまいち報われない系後輩……という感じの印象でした。
タイムリープ前にも、そしてやり直し後の今回も七哉への告白イベントがあるのですが、そこでの展開が非常におもしろかったです。
前述の印象をガラリと塗り替えるほどの小栗ちゃんイベントが発生して、俄然続きが気になりました。
アナザーローグで、世界が一変するような感覚でした。


白鳥士郎「りゅうおうのおしごと!15」

内弟子と恋人を失った八一は、供御飯さんと棋書を執筆。
そこで描かれる供御飯さんの長年思い続けた略奪愛は、その想いの深さもあってとても印象的な恋物語でした。それと同じくらい、八一の出した答えも……。
一方であい・供御飯さん・たまよんの激突する女流名跡リーグも息もつかせぬ熱い展開が素晴らしかったです。
今回のエピソードでは何が何でも名人を倒したい山刀伐尽や、実績の欲しいたまよんなど、初タイトルを望む棋士たちの熱い想いが描かれており、とても感動的でした。
夢が叶うのはひとりだけの厳しい世界で、どう幸せに生きていくのか。
あと、手料理をたくさんつくって待ってる晶さんが可愛かったので、もっとあの人にも注目してあげてほしい……。


武田綾乃「響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のヒミツの話」

久美子が1年生として過ごした北宇治高校の吹奏楽部の日常短編集。
なんてことない日常を切り取っているのですが、それでもはっと胸に迫る描写がたくさんあるのは上手いなと。
個人的に好きなのは、吹奏楽部を辞めた葵が物思いにふける「あの子には才能がある」、優子と夏紀の犬猿の仲の話「犬と猿とおかん」、秀一が見栄を張る「背伸び」、文化祭で盛り上がる「北宇治高校文化祭」など。
巻末の「とある冬の日」は、2年生へと進級する前の久美子にとって大きなターニングポイントとなる冬の日の短編でした。


個人的な今月のお気に入り作品トップ5

第1位/楽園ノイズ3

第2位/りゅうおうのおしごと!15

第3位/悪役令嬢、セシリア・シルビィは死にたくないので男装することにした。

第4位/久遠の檻 天久鷹央の事件カルテ

第5位/ルックバック