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すみだメタ観光祭(2021)報告

すみだメタ観光祭の概要

「すみだメタ観光祭」は当機構の考えるメタ観光の実践として計画した。文化庁の委託事業「ウィズコロナに対応した文化資源の高付加価値化促進事業」として、共催:墨田区、後援:一般社団法人墨田区観光協会、連携:「隅田川 森羅万象 墨に夢」実行委員会で墨田区内で2021年9月~2021年12月に開催した。
メタ観光の実践を通じて、①従来の文化・観光資源の高付加価値化と、②地域の価値の可視化により観光資源の増加を目的とした。また単なる地図の作成に留まらず、「メタ観光祭」という地域イベントとして実現することを通じて、5つのテーマの実現を目指した。

観光DX:地域の文化資源・観光資源を緯度経度を軸に統合したデータベースとして、様々なアウトプット可能な形にする
ダイバーシティ:旅行者のニーズが多様化した時代の多様な価値を可視化する
マスから個性へ:「100万人を集める1カ所」から、「1万人を集める100カ所」へ。ウィズコロナ時代の分散型観光&マイクロツーリズムに対応した観光。
サスティナブル:必ずしも新たに文化・観光資源を作る必要がなく、見えない価値を可視化する観光
シビックプライド:可視化により自分たちの地域のことをあらゆる価値から見直すことにより、地域のことをより知ることができる

墨田区は東京スカイツリーへ⼀極集中し、周辺施設や他の地域への分散が課題としてある。一方で、墨田区は世界的に注⽬されている「葛飾北斎」ゆかりの地であり、「向島百花園」、「旧安⽥庭園」、「向島花街」などの江⼾からの⽂化資源に加え、ユニークな個性も多く存在する地域で、メタ観光が考える観光資源の宝庫である。そうした墨田区の多様な地域の⽂化資源・魅⼒を可視化して、観光振興に繋げるために、墨田区での「メタ観光祭」の実現となった。

メタ観光祭で展開した事業について

メタ観光祭は「地域の人たちと、多様な文化資源・魅力を可視化して観光振興に」をテーマに「メタ観光開発」「メタ観光振興」と2つのグループで6つの事業で構成した。
「メタ観光開発」としてはメタ観光の多様な価値を可視化するメタ観光マップを作成するために、「データベース整備」「地域の人による魅力の紹介」「地域の魅力の発掘」を実施。また、完成したメタ観光マップを活用した観光振興のために「メタ観光振興」としてモニターツアーの開催、完成報告会「観光会議」、作品展「すみだ新景」を開催した。
それぞれの事業については以下の通り。

「メタ観光開発」

1.「データベース整備」:インターネット上の公開情報や墨田区、墨田区観光協会等の提供情報を元に、位置情報に基づく多様な価値をレイヤー(層)としたデータベースを作成した。

2.「地域の人による魅力の紹介」:「地域の人による魅力の紹介」として3つのワークショップを開催した。ワークショップは墨田区で開催し、対象は墨田区在住在勤在学の方または墨田区を好きな方とすることで地域の人への参加を促した。ワークショップの成果はすべてメタ観光マップに各レイヤーとして掲載した。

● ワークショップ① 「写真で紡ぐ街の物語 in すみだ」
「今治今昔写真プロジェクト」ファシリテーターである森隆大朗氏を迎え、地域の人による魅力の発掘:地域の思い出の写真を持ち寄っていただたき、個⼈的な思い出・物語を⽂章に書き起こして相互に共有し合うワークショップを実施。墨⽥区の「昔」や「今」を語り合いながら、地域の魅⼒を「メタ観光資源」にした。
2021年10月24日(日) 13:00-16:30に墨田区みどりコミュニティーセンターで開催。

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● ワークショップ②「メタ観光スタディーズ〜暗渠、電線、ドンツキからすみだを⾒る〜」
専⾨家による地域の魅⼒の発掘:専⾨家を招き、新たな街の魅⼒を掘り起こす視点のレクチャーを受けながら、地域の⼈たちが専⾨家と⼀緒に地域の魅⼒を⾒つけていくワークショップを実施した。専門家としては暗渠マニアックス、電線愛好家⽯⼭蓮華氏、ドンツキ協会・会⻑齋藤佳氏が参加。
2021年10⽉17⽇(⽇)13:00~16:30にユートリヤ すみだ学習⽣涯学習センターで開催。

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● 「ワークショップ ③すみだ見立て観光地図」
現代アーティスト鈴木康広氏が「見立て」についてのレクチャーを行い、参加者が街中で発見した「見立て」を集めて発表するワークショップを実施した。
2021年10月9日(土)、31日(日) の2回、それぞれユートリアすみだ生涯学習センター(10月9日)、すみだ産業会館(10月31日)で開催。

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3.「地域の魅力の発掘」:「地域の魅力の発掘」として、3名のアーティストによる墨⽥区をテーマにした作品制作を実施した。 街の新たな魅⼒付けとして 制作された作品の成果をレイヤーとして地図に表⽰した。参加アーティストは⼤村雪乃氏架空荘 果無夏⼦氏本城直季氏の3名。

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「メタ観光振興」

1.モニターツアー:モニターツアー「メタ観光街歩きツアー」を日本語版(2021年11⽉21⽇(日) )、英語版(27⽇(土))の2回を開催しそれぞれ2時間の街歩きを鐘ヶ淵・東向島エリアで行った。ツアーガイドパートナーとして株式会社ノットワールドがメタ観光ツアーの内容を制作。ツアーを作成するにあたり、①1つのスポットの多様なレイヤー(歴史的なものからポップカルチャーまで)を楽しむ、②観光スポットでない場所が新たな見方で観光スポットになる、③特定テーマでなく、複数テーマで街を歩く、をメタ観光のツアーの特徴とした。

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2.観光会議:観光会議「メタ観光マップで考えるこれからのすみだ」を2021年12⽉4⽇(土) 14:00~16:00にすみだ産業会館ホールで開催。すみだメタ観光祭のメインイベントとして、「メタ観光マップ制作報告」「パネルディスカッション 「メタ観光の開発〜振興へ」」の2部構成で、登壇者にはすべての参加専⾨家&アーティストの他、キュレーターとして日本美術を主な領域とするライター、エディターの橋本麻里氏、 東京スリバチ学会 会長の皆川典久氏を迎えた。シンポジウムには一般社団法人メタ観光推進機構 代表理事 牧野 友衛、墨田区産業観光部 部長の鹿島田 和宏氏、一般社団法人墨田区観光協会 理事長森山 育子氏も登壇した。YouTubeでのオンライン配信も実施した。

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3.展覧会「すみだ新景」:「すみだ新景」は2021年12月4日 (土) 〜12日(日) 7日間、すみだ北斎美術館の講座室 MARUGEN100で開催した。「地域の魅力の発掘」として参加した3名のアーティストによる墨⽥区をテーマにした作品の他、鈴木康広氏の「すみだ見立て観光地図」のワークショップの成果の作品も展示した。

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以上の6つの主要事業に加え、2つの事業を展開した。
1.オンライントークシリーズ「すみだ新視点」:YouTubeのメタ観光推進機構チャンネル(https://www.youtube.com/c/metatourismjp)で2021年11⽉16日〜12月14日の毎週火曜20:00-20:30 の30分番組を機構理事とすみだメタ観光祭の出演者をゲストに迎えたライブ配信を実施。すみだメタ観光祭の振り返りと墨田の魅力について語った。
スケジュール:11月16日電線愛好家石山蓮華、11月23日ドンツキ協会会長 齋藤佳、11月30日暗渠マニアックス、12月7日橋本麻里、 12月14日東京スリバチ学会会長 皆川典久。

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2.メタ観光公式ガイドツアーの発売:初のメタ観光公式ガイドツアーとして東京スリバチ学会会長 皆川典久をキュレーター・ガイドに迎えて、ガイドツアー「スリバチ会⻑、墨⽥区のマナイタに現る?!」を5,000円(税込)で発売。
2021年12月12日(日)13:00-15:30で曳舟から向島、押上エリアを回った。

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すみだメタ観光祭の成果物であるすみだメタ観光マップは観光会議の開催日である2021年12⽉4⽇(土)に公開した。レイヤー数60、タグは1700にのぼり、レイヤーは8つのカテゴリにわけた。地図にはオープンソースとなるumapを使った。 結果として、これまで約440件だったタグが、メタ観光開発による情報収集や観光資源の掘り起こし、新たな観光資源の開発を行うことで1700件以上となった。
詳しくはこちらの記事をご参照のこと。
すみだメタ観光マップ
すみだメタ観光マップ / umap用Tips / データのダウンロード

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すみだメタ観光祭の結果報告

アンケート結果
すみだメタ観光祭では、3つのワークショップ、「メタ観光街歩きツアー」、展覧会「すみだ新景」、観光会議の6つの参加者にそれぞれアンケートを実施。90%以上が「満足」と回答、88%以上が「墨田区の新たな魅力に気付いた」と回答、94% がメタ観光マップを「使えそう」、「メタ観光マップで墨田区を観光したい」と回答した。「墨田区の新たな魅力に気付いた」については墨田区民が93%が、それ以外が86%と、墨田区民により多く新たな魅力への気付きが多いという結果になった。
男女比では男性61%、女性39%となり、男性が多めとなったが、墨田区に限ると56%、44%と女性の比率がややあがった。全体的に57%が40代以下と比較的若い人たちに関心を持ってもらうことが出来た。参加者の20%が墨田区在住となり、区民の参加が少なかったことが今後の改善点となった。

全体的な振り返り

事業を通して、ワークショプ、ツアー、展覧会、観光会議のすべてにおいて一定数の参加者数を確保することが出来た。これは専門家、アーティスト、キュレーターと知名度があり、企画意図を理解して協力的なメンバーが揃ったことがその成功要素として大きかった。特にTwitterでの広がりは橋本麻里氏(7.5万フォロワー)、石山蓮華氏(1.2万フォロワー)をはじめ一定数以上のファンを持つ登壇者の協力によるところが大きい。また今回登壇者の協力として、石山蓮華氏がラジオ番組のゲストに登場した際にすみだメタ観光祭を紹介。同時期に開催していたドンツキ協会の展覧会「すみだドンツキクエスト展」や暗渠マニアックスの「すみだでふたつの水路上観察入門展」での紹介もあった。
メタ観光マップの制作には墨田区、墨田区観光協会の協力によって多くのデータ提供(観光情報、紹介文、画像など)がされたことで制作時間を短縮することが出来た。
メディア露出として一定の記事が掲載があったのは、事前にメディアパートナーとして、トラベルボイス、タイムアウト東京、アスキーの3媒体の参加が結果につながった。また、共催による墨田区の40施設、墨田区観光協会の観光案内所でのポスターやチラシの配布、区報への掲載、連携のすみゆめのチラシでの紹介なども行ってもらうことで区民へのプロモーションにつながった。
今後の課題としてはマップに掲載されているコンテンツにおいて、墨田区やインターネットに公開されている情報、専門家視点のタグの掲載が出来たが、地域の住民しか知らないような情報を吸い上げる仕組みがワークショップ「写真で紡ぐ物語」しかなかった。町会や地元で活躍するグループ等との連携を通じて明文化されてないような情報も今後は掲載していきたい。
事業の展開後の成果物の利活用としては、観光会議の会場となったすみだ産業会館でのメタ観光マップの掲出、墨田区観光協会のウェブサイトでのメタ観光マップの掲載につながった。今後もメタ観光マップのコンテンツの充実と活用について協議している。

※本記事は、「ウィズコロナに対応した文化資源の高付加価値化促進事業」実施報告書および「メタ観光推進機構2021年度会報誌」の内容を加筆・修正・編集したものである。



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