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【第16話】〜「学校を辞めよう」躊躇うことなくそう思った。〜

“高校教師、生徒を深夜のライブハウスに無理矢理連れ出す――!”
そのニュースはあっという間に校内外で噂になった。

なぜ、悪意はこんなに人を惹きつけ、力があるのだろう。と高島は思う。
本村のライブ出演と高島の話はそれくらい、驚くべきスピードで、どんどん歪曲されながら広まっていった。

本村たちの校長室でのやり取りを外で聞いていた生徒が、SNS に拡散したのだ。創作を足し、インパクトのあるニュースに仕立てて。
そこに、二人のライブハウスでの写真が現実味を加えた。
あの時、ステージを終えた本村と高島が話しているところを、隠れて撮影した誰かがいた。
学内の生徒なのか、それとももっと違う誰かが写真を提供したのか、とはいえ、その写真が合成などによるものでないのは確かだった。

本村は校長に、自分が出演するライブのことを偶然知った高島が聴きに来てくれただけだと説明した。
それに時間はせいぜい夜の8時前とかで、深夜という時間では決してない。それを伝え処分は保留になっていた。
だが「こんなことを他の生徒に知られたらどうなるか」と校長が渋い顔で言っていた時にはすでに、それを聞いている生徒がいたのだ。

それも最悪な形で広まった。
SNS に拡散された写真を見た本村は、教師である以上、自分が好きでしたことに生徒たちを巻き込むわけにはいかない。
彼らの負担になるなら、なんの意味もない。
自分でも驚くほどためらうことなく、「学校を辞めよう」そう思った。