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【第24話】-夕陽のチカラ-

放課後、呼び出された高島は、隣のクラスのベランダに行った。
「なに、用事って。またあの話?」
そこにいたのはマリンだった。
最近肌寒い日が増え、今日は風が強いのもあって彼女も制服のジャケットをしっかりと着込んでいる。

あれ以来マリンと高島は、時々放課後に話すようになっていた。と言っても話題はいつも本村のことで、高島は本村の連絡先を知ってることもあり、本村をもう一度学校に戻したいと思っているマリンは、時々高島を呼び出しては作戦を練っているのだ。

そこに関しては高島も同じ気持ちだ。
「でも先生の意思も固いし」と高島がいうと、マリンはまた深くため息をつき、ベランダの柵にうなだれた。と、グランドに大きな木材やペンキを運んでいる生徒たちが見える。

ざわざわと教室越しの廊下やグランドに生徒たちのはしゃぐ声が響く。
もうすぐに迫った文化祭の準備でバタついているのだ。
去年、一昨年はいつものようにはできなかった。
高3のマリンたちにとっては最初で最後の、高校の文化祭だ。
みんなかなり気合いが入っている。
「文化祭で歌えないかなって、言ってたのに」
マリンは、あみの言ったことを思い出していて、ふと閃いた。
「そっか、先生も……」
「え?」
「高島くん、協力して!」
マリンは、あみと本村と、もう一度一緒ステージに立つアイデアを思いついた。
空を見ると、以前本村と見た夕陽に似ていた。
夕陽はいつだって、負けそうになった心に火をつけてくれる。