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【第28話】-4人をつなげた場所-

ステージを降りるマリンと本村を、生徒たちの大歓声が迎えた。
「先生、ヤバいですね!」「人格変わり過ぎ」
「なんで辞めちゃったんですか、戻ってきてください」
と囲まれるなか、本村は友人らしき男の姿を探したが見つからない。

マリンを見ると、彼女もその歌声に興奮した生徒たちの中心にいた。
生徒たちからようやく少し解放されたとき、高島とあみがやってきた。
二人とも、何も言わなかった。ただ少しだけ微笑んで、誇らしそうだった。

「先生」とマリンがやってくる。
キョロキョロと周りを見回しながら。
「これ、さっきの人が先生に渡してくれって言ったらしくて……」
とマリンが本村の手のひらに一枚の白いカードを置いた。

「え、これって……」
そこには“SCREAM!!”と書かれていた。
去年拾った、謎の男からもらったものと同じだとすぐに気づいたマリンは、
「あの人って……最初にカードを拾ってあのシャッターの前に行った時会った……え?髪切っただけ? 別人?」と混乱している。

本村はさっきの男が高校時代の唯一の友人であるとも言えず、ただ驚いていた。
「SCREAM!!ってあのVRのライブハウス?」と高島が言う。

するとあみも、少し前に中学の頃音楽を教えてくれた知り合いに誘われて行ったことがある、と。
「じゃあみんなSCREAM!!で繋がってたってこと?」

モリヤはどこまで関係していたのだろう、キラーAは姿を変えた彼だったのだろうか。どこまでが昔の友人の仕業なのか、本村にはわからなかった。
でも彼のことを考えると、モリヤがあの場を作っていたとしても不思議じゃないような気がした。カードの裏を見る。以前QRコードのようなものが書いてあったそこに、
『今度ゆっくり飲もう!』とだけ、ペンで書かれていた。

「モリヤの字だ」と本村はつぶやいた。
「モリヤ……?」とマリンが聞いたが、それには答えず本村は苦笑いのような、困ったような、不思議な表情をしていた。

その時、グランドに映る自分たちの影が動くのがわかるほど日が傾いて、本村とマリンは空を見上げた。高島とあみもまぶしそうに目を細める。

同じ色の空は二度とないように、今日という日は一度きり。
似たようなことを繰り返すだけの日々に思えたとしても。
でもまた、今日のような日が来てほしい。
それぞれがそう思いながら沈む夕陽を見送った。