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【最終話〜ボーナストラック〜】-『今こそSCREAM!!』-

マリンたちが卒業して数年後、春――。
本村は教師をしながらラップで気軽に英語を学べる動画を配信していた。
学校側も公認だ。

放課後、教室で配信用の撮影を終えた本村は、駅へと向かう。
地下鉄の九段下の出口で高島が待っている。
「待たせてごめん」と本村が言うと、
「全然大丈夫です。いつもなかなか外に出ることないんで、人間観察してました」と笑った。
「締め切りは大丈夫なのか?」と聞く本村に、
「どうにか間に合わせました。今日は外せないんで」と高島は話しながら、歩いていく。

桜の道を抜けると武道館が見えてくる。場内は観客でいっぱいだ。
歓声を受けステージに登場したのは、マリン――。
ギターを抱え、微笑みながら歓声に手を振って応える。
ステージの袖には、マニピュレーターとして演奏しているあみの姿。
大きなステージでライトを浴びるマリンを見つめている。
いつだったか、駅で一人鼻歌をうたっている彼女に声をかけた時を思い出しながら。

客席からは本村が、堂々と歌うマリンの姿を誇らしそうに見つめていた。
マリンはステージの上で深くお辞儀をし顔を上げると、客席にいる本村の姿に気づいた。
言いたいことはいっぱいあるのに、声にならない。
何度も語ろうとしてはやめ、深呼吸してを繰り返し、やっと一言、言葉にできた。
「今日のことを、ずっと忘れない」
――と、ステージの上のマリンを、タブレットで描いている高島。

漫画家になった彼の初の連載は、歌うことを見つけた女子高生マリンと、ラップと教師どちらもやろうと奮闘する本村の物語。
仮想空間、SCERAM!!で出会った二人の、ファンタジーのようで、でもどこかにありそうなリアルな話でもあり……。

本屋で平積みされた漫画『今こそSCREAM!!』を買っていく、学校帰りの高校生。
「もう全部読み終わったー!」
「結末言わないでよ! これから読むんだから」
次々に減っていく漫画。帯には“感動の実話――!”と書かれている。

(おわり)