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今こそSCREAM!!

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“metanoteシリーズ”の最初のオリジナルストーリー、 『今こそSCREAM!!』という作品になります✨ 約2年間、誰もが感じてきた自分を表現すること、 人と繋がることがで…
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2022年2月の記事一覧

【第3話】 どんより雲が広がった夕方の空は、大人になっても変わらない

 「先生には僕の気持ちはわからないと思います」  最近様子がおかしいからと放課後教室で話しを聞こうとした男子生徒にそう言われ、本村はドキッとした。それは自分が高校時代、教師に対して思っていたこととまったく同じセリフだったから。  こういう時、だいたい次にどう言われたかも覚えている、そして今度は自分がそのセリフをなぞってしまいそうな気がして、ギリギリのところで踏みとどまる。  「俺も高校の頃はそんな風に思ってたから、無理にとは言わないけど」そう前置きをして、窓の側に立っている生

【第2話】 来たことのない道に迷い込むと、なぜか嬉しくなった

 白いカードの裏に書かれた地図を頼りに、マリンは初めての駅に降り立った。  学校の最寄駅から、いつもと反対方向に二つ。たったそれだけの距離なのに、改札を出るといつもと違う匂いがした。この街の匂い……不思議と懐かしい気がする。  地図の住所をアプリに入れてみた。知らない町を歩くのは、子供の頃から好きだ。ちょっとだけ不安だけど、来たことのない道に迷い込むと、なぜか嬉しくなった。  「たぶん、この辺なんだけど……」近くまで来てるのは確かなのに、アプリが赤くマークする場所には、シャッ

【第1話】 教室から見えるのは、いつも曇った空ばかり

 「朝の日差しってなんでこんなにイライラするんだろう」  校舎へと向かう坂道の最後を登りながら、マリンは思う。無神経にキラキラを押し付けられている気がして、なんだかムカムカするのだ。  坂の上にある高校に入学して、もう一年半が経った。だけど、高校生になったんだ。そう思えたことはまだ一回もない。  入学式の前の春休み、突然現れた“コロナ”の三文字がどーんと立ち塞がった。姿の見えないボスキャラは、これまでの“あたりまえ”を驚くほど簡単に壊していったのだった。  やっと学校に通える