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めたさんの音語り - 1. エスプリ、気品、お茶目_”フランシス・プーランク”


VRChatを楽しみまくってる音楽オタクが長々と語ります。どうも、めたです。

さて、突然ですが僕はクラシック音楽が大好物です。いきなりなんのこっちゃというお話ですが、かつてはクラリネットを吹き、現代音楽を作曲し、19世紀末ごろから20世紀初頭くらいのフランス音楽を中心に古今東西の作曲家を調べあげ、死ぬほど音源を聴きあさり、楽譜を読み漁る程度には大好物です。オタ活。

そんな僕がちょっとオタク語りをしようと思います。最初に取り上げますのは、1899年〜1963年に生きたフランスの作曲家、フランシス・プーランクです。

まあ作曲家がどういう人物だったかとか、エピソード的な部分は調べたらいくらでも出てくるので、ここでは

『学術的な話』
というよりも
『おまえさんに新しい世界への誘いのきっかけを与えてやるぐっへへへへ』
くらいの空気感でやろうと思います。

カジュアルにやった方が続きやすいだろうし、専門的なことは本当に音楽学を学んでる人たちや学者に任せたい。そんなわけで目次に行くぜっ!

プーランクって誰よって話

フランシス・プーランク(Francis Poulenc)は、冒頭にも述べたとおり1899年生まれのフランスの作曲家です。

音楽史的に言うと1910年代末から第二次世界大戦までの間に出てきたムーブメントである「新古典主義」に属する作曲家で、「フランス6人組(Les Six)」の一人としても知られています。詩人のジャン・コクトーとつながりが深いグループですね。

室内楽、オーケストラ、歌曲まで幅広く作曲活動を展開しましたが、ピアニストでもあり、作曲家として残した作品にも多くのピアノ作品があります。

個人的には笑顔の素敵な人だなーとおもいます。ググったら顔写真とか出てくるから気になる人はググってみて。

作品の特徴

ここは完全に僕の主観的な意見ですが、プーランクの作品の特徴を短く表すと

『エスプリ、気品、お茶目』

かなーと思っています。ウィットに富んでる部分と、気品のある部分と、悪戯っ子っぽいお茶目な部分、それらが混在しているというか。そんな感じ。

『さっきまでめちゃくちゃ美しい凛としたメロディーを奏でていたのに突然そんなふざけたリズムで!?!?!?』みたいな裏切りが随所にあって、聞き手を全く飽きさせない作品が数多く残されています。

また、初期から晩年に至るまで一貫してメロディーを大事にした作曲家です。

1912年にシェーンベルクの『月に憑かれたピエロ』、1913年にストラヴィンスキーの『春の祭典』、1950年にはブーレーズが『ピアノソナタ第2番』を発表してることを考えるとなかなか激動の時代だったのではと思うわけですが、そんな中で死ぬまで美しいメロディーを作り続けてます。すごいぞプーランク

というわけでおすすめの曲紹介〜!Spotifyのプレイリストも載せとくぞ!


おすすめの作品5選

1. 劇付随音楽「城への招待」 (L'Invitation Au Château, FP.138)

プーランクファンから刺殺されそうなくらいマイナーな選曲ですがマジでおすすめです。なぜかって?

・ 一曲一曲がマジでクソ短いから忙しいあなたでも聴く時間がとりやすいぞ!
・ クソ短い時間のなかに最高のメロディーが詰め込まれているぞ!!

と、まあプーランクのいいところを詰め込みまくった尊いポイントが短い時間に凝縮されてるからです。そんないいことある??

優雅でいいメロディーお茶目で洒落っ気の高い展開が光るね!

プーランク作品の良いところが存分に堪能できます。ティータイムのお供としてもいかがでしょう。優雅な時間が過ごせるんじゃないかしら。

編成はヴァイオリン、クラリネット、ピアノの3重奏。

劇付随音楽で全部で23曲、一見長そうですがなんと全部聴いても17分くらいで終わります。曲の短さがもはやバグレベル。でもいい曲。ずるくない?

脚本はフランスの作家であるジャン・アヌイの手によるもの。
演奏機会がとにかく少ない作品なので人生で一回くらい脚本も込みで生で聞いてみたいものです…



2. フルートソナタ(Flute Sonata, FP.164)

僕はこれを聞いた時にマジでフルートやっとけばよかったと自分の運命を呪いました

プーランクは晩年に3つ、木管楽器とピアノのためのソナタを残しています。そのうちの一つ。(残りの2つは最晩年に書かれたクラリネットソナタとオーボエソナタ)

「ソナタ」というのは昔からある音楽の形式の名前でして。あえて晩年にそういう昔ながらのテーマで曲を作る辺りが、プーランクが「新古典主義」だと言われる所以かもしれませんね。

全体的に優雅でメランコリックな美しいメロディーが光る作品。特に第二楽章の気品に満ちながらも陰鬱な雰囲気を持つゆったりとした音楽は、聞き手の心をぐっと掴んできます。

ただ、僕がこの作品がプーランクらしいなと思う点は、第3楽章でその雰囲気が一転してパッと明るく軽快になるポイント。「うっそだろ」ってくらい明るくなります。いやオメーさっきまで病んでたやんけ、みたいな。

ちなみにこの作品が作られた前年の1955年には、同じ6人組として活動した友人であるアルテュール・オネゲルが死去しており、最晩年のクラリネットソナタには賛辞として「à la mémoire de Arthur Honegger(オネゲルの思い出に捧ぐ)」と書かれてたりします。

クラリネットソナタもフルートソナタと展開がちょっと似てるんですよね。そういう辺りの妄想の余地があるのも面白いなと思っています。

[追記]YouTubeの方もご紹介。演奏者によってのニュアンスの違いもよくわかるかなと。



3. 2台のピアノとオーケストラのための協奏曲 二短調(Concerto for 2 Pianos and Orchestra in D Minor)

これぞプーランクの大編成の真骨頂だと僕は思っています(主観)

協奏曲というのは、ざっくり言うと一つ以上の独奏楽器とオーケストラが掛け合いをする楽曲のこと。大規模な作品が多く、大体は1つのソロの楽器とオーケストラなのですが、この曲はピアノ2台とオーケストラというベラボーにデカい編成で書かれております。

とにかく音の迫力がすごい。2台のピアノだけでも割とオーバーキル気味なのに、そこにオーケストラが混ざるもんだからえらいこっちゃです。

しかも、この作品、プーランクの悪戯小僧っぷりが全開なんですよね。まず冒頭にエグい不協和音が出てくるあたりからすでにそうなんですが、その後の展開がメロディーの大洪水

メロディーメーカーとはこのことよ。ちなみに2楽章では一転して美しく優雅になり、第3楽章では軽快にスキップ踏むかのようにめちゃくちゃ明るくオシャレになります。

『なんなんだオメーは』っていいたくなるくらい面白い曲です。

[追記]YouTubeに演奏的にも映像的にも眼福なものがあったのでこちらも紹介しておきます。

第1楽章

第2楽章

第3楽章



4. ピアノのための15の即興曲 (Impromptus)

即興ってすごいね。この即興曲集は全部好きなんですけど、いかんせん15個もあるのでその中でおすすめの曲をいくつか紹介します。いや、本当は全部聴いてほしいけども。

まずは第15番 ハ短調「エディット・ピアフを讃えて」

エグいくらい美しくない?????????

メロディーだけで永遠に聴けると思う一曲。プーランクのお洒落で美しくてメランコリックなメロディーの傑作じゃないかと思っている。

さっきからメロディーの話ばかりですが、僕は和声(コード、伴奏的なの)付けも含めて最高だと思っています。めちゃくちゃ豊かな響きの和声で、メロディーの良さがめちゃくちゃ引き立っているなあと。

ちなみにエディット・ピアフはフランスでは超有名なシャンソン歌手です。僕はシャンソンとかにはあまり明るくはないんですが、「ばら色の人生」とかは有名ですよね。どっかで聴いたことあるって人は多いんじゃないかしら。

次は第12番 変ホ長調「シューベルトを讃えて」

三拍子のワルツですわね。シューベルトを讃えて、と副題に書いてあるけど、どこがシューベルトやねんと突っ込みたくなる程度にはプーランクだなあと思う。

お洒落で軽快なメロディーがここにも活かされてますねえ。悪戯小僧というよりは気品があって真っ直ぐなプーランクの一面が覗けるなあと思います。

最後に第7番 ハ長調

こんな穏やかなメロもかけるんですプーランク(迫真)

田園風景とか子供の頃の思い出とか、そういうなんかめちゃくちゃ穏やかな映像が浮んできそうな雰囲気の作品だなーと思います。好きすぎる。

ちなみに全部聴きたい人向け↓



5. モンテカルロの女 (La Dame de Monte-Carlo)

「この短さでもオペラなのか…」と困惑した記憶がある。昭和音大のオペラ研究センターによると1幕のオペラらしい。

オペラというと数時間をつかって何人もの歌手が出てきて演技をしてオーケストラが伴奏をして……というイメージだけど、なんとこの曲は7分半くらいしかないんですわ。

その短い中に、プーランク最大の武器である美しいメロディーと、それを引き立たせる繊細なオーケストレーションが光る作品。本当にモナコのあの海岸の光景が目に浮かんできそう…

ちなみに台本…というか、詞はジャン・コクトーによるもので、ざっくりいうと『多分なんか人生でいろんなことを経験しすぎたんであろう女の人が、錯乱しながら自分語りをしてモンテカルロに行き、海で身投げする』という内容。

詩は調べると出てくるのですが、まあ狂気じみた内容です。人間の闇の部分というか、そういう部分が丸出しで…なんというか………衝撃的な内容。こらそこ、メンヘラとかいわない。(コクトーは一体どんな人生経験を積んだらこんな詩が書けるんだ…?)

まあそんな狂気な内容なのに音楽はめっちゃ美しいんですよね。そこがまた狂気なんですけど(笑)

最後の最後とか「あー………今多分……ああーー……」ってなります。

[追記]これは僕も初めて知ったんだけどピアノ伴奏版もあるみたいです。こっちはこっちでいいな…🤔



おわりに:プーランクはいいぞ

そんなわけで個人的おすすめプーランク作品を紹介しました。割とマイナーどころ攻めちゃった説はありますが、どれもいい作品なので是非聴いてみてください……!!

僕はマジで青春の大半をフランスの近現代音楽を漁るために費やしていますが、その中でも5本の指に入るくらい大好きな作曲家です。多大な影響を受けました。我の青春ぞ。

そんなわけでまた次回。

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これは全く関係ないPCVRを楽しむめたさんです。島には行きましたが決してモンテカルロに来たわけではありませんよろしく。

ちなみにそんなめたさんはMusicVket 2に出るよ。

もうすぐ!楽しみ!!


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