2023年注目すべきアフリカ音楽! African Music on J-WAVE "SONAR MUSIC"(Senkulive, Tyla, Kombonka)
皆さん、ご機嫌如何でしょうか?アフリカ音楽キュレーターのアオキシゲユキです。
年明けからありがたいことに、今年もあっこゴリラさんがナビゲートするJ-WAVEの音楽番組「SONAR MUSIC」に出演させて頂くことができました。1月3日のOAでは、私が今注目するアフリカ音楽のアーティストとして、ガーナのハイライフ・アフロポップバンド「Senkulive」を紹介しました。
聴いて下さった皆さん、ありがとうございました!そしてまだ聴いてないという方は、ぜひRadikoのタイムフリー機能でお楽しみ頂けたら嬉しいです。
番組内では紹介しきれなかったSenkuliveの音源は勿論、それ以外にも今注目して頂きたいアフリカのアーティストは盛りだくさん!というわけで、今回は「2023年注目のアフリカ音楽アーティスト」と題してご紹介していきたいと思います。
Senkulive
ガーナのアクラを拠点に活動する5人組バンド。Afro Funk、Hi-Life、Hip-Life、Afrobeatなど伝統的なガーナのアフリカンポップスを融合させて現代に蘇らせている若手音楽家たちです。
基本的にはシンガーのレコーディングやライブサポートが彼らの主な活動で、これまでにM.anifest、Cina Soul、Adomaa、Worlasiといったアーティスト達と仕事をしています。
ちなみにM.anifestはガーナのベテランラッパーで、これまでにガーナミュージックアワードやAFRIMAなど数々のアワードで多数の賞を獲得。過去にはDamon AlbarnやTony Allen、Erykah Baduとの共演を果たしており、ナイジェリア勢ではBurna Boy、Simi、Patoranking、Adekunle GoldらがM.anifestのアルバムにゲスト参加しています。
また、ココで敢えてご紹介したいのは、僕が敬愛するケニア人アーティストのBlinky Billが昨年11月にリリースしたシングルでM.anifestをフィーチャーしてるんですね。この件については今回は曲の紹介だけにします。
さて、ここで大事になってくるのがガーナのシンガー/ラッパーWorlasiの存在。彼が毎年ガーナで主催するライブイベント「Worlafest」でのライブサポートをSenkuliveが一手に担っているんですが、まずは先ほどのM.anifestのバックでSenkuliveが演奏している映像がありましたので紹介します。
Worlasiについてはバイオグラフィの記述が少なく、ガーナのボルタ州出身で音楽家であり画家でもあると書いてありました。ってことはもしかすると、シングルやアルバムのアートワークのうちいくつかは本人が手掛けた作品なのかも知れませんね。
Worlasiがその存在を認められるようになったのは2017年頃。14トラックを収録したミックステープ「Nuse」から数えてリリースしたアルバムの総数は5枚。そしてその5枚目が今回SONAR MUSICで紹介した曲「Animate」を収録したアルバム「Worla(The Man and the God)」です。
つまり今回紹介した「Animate」はSenkuliveの曲というよりも、WorlasiがSenkuliveをバックバンドに起用し共同制作したダブルネームアルバムの収録曲というわけです。共同とは言いつつも、状況からいくと主導権は7:3でWorlasiなのかなと個人的には思っていますが。調べた限り、彼はクリエイターであると同時にプロデューサーやオーガナイザーでもあり、彼の表現活動の一環としてこのアルバムでは、普段バックバンドであるSenkuliveのことを全面的に押し出した「企画盤」なんだろうと思いました。
なので普通なら「Worlasiの曲でAnimateです。」と紹介してもいいところを、今回敢えて「Senkuliveの曲でAnimateです。」と紹介させて頂いたのは、そんなWorlasiのプロデューサーとしての意図を勝手に僕が汲み取らせて貰った形です。
古今東西、素晴らしい音楽が生まれる場所には必ずと言っていいほど素晴らしいバックバンドがいました。モータウンサウンドを支えた名バンドといえばファンク・ブラザーズですし、ボズ・スキャッグスのバックメンバーが結成したバンドがTOTOでした。日本でも井上陽水のバックを務めていたのは安全地帯でしたし、東京事変は元々椎名林檎のバックメンバーです。また最近のアフリカ音楽ではナイジェリアのTiwa Savageのバックを務めていたAlternate Soundが有名ですね。
DTMの進化によって依然と比べ手軽に音源制作が可能になりましたが、そうなればなるほど人間の身体という究極のアナログから生み出される、ゆらぎを伴ったグルーヴが益々魅力的に聴こてきますし、それらデジタルとアナログはきっとお互いに相互補完関係なのではないかと思います。ガーナ音楽の魅力をバンドサウンドで届けてくれる貴重な存在Senkulive、実は昨年12月に「Money」という新曲をリリースしました。今回は完全にピンです。彼らの活躍をこれからも是非応援して頂けたら嬉しいです!
さて、ここからは今回SONAR MUSICの紹介候補に上がりながら(あくまで僕個人のセレクションです)、惜しくもOAが叶わなかったアーティストを一挙にご紹介します!
Tyla
Tylaは南アフリカ・ヨハネスブルグ生まれ。今Amapianoシーンで大注目の新人シンガーです。インスタでオリジナル曲やカバー曲を歌う動画を発信し現在のプロダクションに見出されたという、世界中で最近よくあるパターンのデビュー秘話。南アフリカの若きDJ/ProducerのKooldrinkが手掛けた「Getting Late」でデビューを果たします。(注;執筆当時「南アフリカ生まれUK育ち」という誤った記載がありました。訂正しお詫び致します。)
そして続く第二弾シングル「Overdue」ではKooldrinkに加え、なんとあのDJ Lag様まで登場!!MVでTylaが履いてるネクタイのミニスカート、あれヤバいっすね。
そして最新シングル「To Last」ですが、
この曲に至ってはDJ MaphorisaとYoung StunnaがRemixに携わってます!
何でしょう、この前のめりな3段構えのリリース攻勢。すでに「南アフリカのアリアナ・グランデ」の異名を持ち、ルックスも歌声もダンスも文句なし。Tiktokでも爆発的な人気を誇るTylaですが、南アフリカのAmapianoシーンといえばKamo MphelaやSha Shaなど個性豊かな女性シンガーが勢ぞろいしています。その中でR&BスタイルのTylaのボーカルスタイルがどのように受け入れられていくのか非常に興味深いところです。
Kombonka
実はOA前日まで、僕が紹介する予定でいたのがこのKombonkaでした。前日の深夜になって急遽Senkuliveにチェンジした為、彼にはどうお詫びしたらいいのか分からないんですが、Senkuliveの「Animate」を聴いた途端僕の頭の中は「これアカンヤツ!」ってなってしまったので、Kombonka様、もし恨む時は僕じゃなくSenkuliveを恨んで下さい。お願いします。
さぁ、いきましょう。Kombonka様はガンビア様のアーティスト様です。
ガンビアの伝統楽器を取り入れた彼らの音楽スタイルを「Afro Manding」と呼ぶらしいんですが、「Manding」とは昔この地に栄えた「マリ帝国」の末裔であるマンデ人(およびマンデ語)に由来するらしく、Kombonka様はガンビアの主要言語であるマンディンカ語と英語をミックスしたラップスタイルで「King of Afro Manding Rap」とも呼ばれているそうです。どうやら僕はとても怖い人を敵に回してしまったかも知れません。
ガンビアの伝統楽器に「コラ」という、ハープや日本の琴に近い美しい音色の楽器がありまして、今日ご紹介する曲「Kelo Mang Nyee」の中にも実はこの「コラ」の音が取り入れられています。イントロで流れる琴のような音色がそれですね。
せっかくなのでコラの演奏も観て頂きましょう。
コラは半分にカットした大きなひょうたんに牛や山羊などの皮を張り、長いネックとその両脇に握り棒がついた西アフリカ発祥の楽器で、弦の数は右に10本・左に11本、合わせて21本。数あるアフリカ民族楽器の中で最も美しい音色だと言われています。
コラだけではなく、例えばジャンベという太鼓やバラフォンと呼ばれる木琴なども、先程ご説明した「マリ帝国」の時代から続く西アフリカの伝統音楽伝承家である「グリオ」が今もその文化を継承し続けています。最近ではUKのアフロジャズバンド「Balimaya Project」の中にもグリオのコラ奏者がメンバーとして参加しています。
Balimayaのメンバーたちがアフリカに行ったドキュメントムービーも凄く素敵だったのでシェアしますね。
話をKombonka様に戻すと、彼のアルバム「Yalong Ngalong」の曲で特に僕が好きなのがこの「Falling in Love」です。アフリカ特有のポリリズムで一瞬リズムカウントを失いそうになる疾走感と、ゲストボーカルのMiss Jobizzが歌うメロウで美しいコーラスがアフリカ的でもありまたR&B的でもあり、強く心に残る1曲です。
アメリカのヒップホッププロデューサーDr.Dreの名盤「2001」を初めて聴いた時に、日本の琴の音色が取り入れられていたことに僕は強烈なインパクトを覚えたんですが、ガンビアのKombonka様は自分たちの伝統音楽に対しリスペクトを払い、それらを積極的に音源に取り込んで「俺たちらしさ」を表現しているめちゃくちゃクールなアーティストだと思っています。今年新作アルバムが出そうな情報がネットに出てたので新作期待してます!
最後はYoutubeでみつけた「Still D.R.E」の琴カバーをぜひ。
というわけで今回はSenkulive、Tyla、そしてKombonkaの3組をご紹介しました。
ちなみにナイジェリアのAfrobeatsシーンは今年どうかというと、過去にご紹介したTemsやAmaaraeのようにブレイクを果たしそうな存在として筆頭に上がるのは、おそらくAyra Starrだと思います。また女性シンガーでは他にもFaveが国内で頭角を表しそうな予感。Amaaraeに近い声質と存在感でいえばMoliyもこれから様々なアーティストとの共演が増えそう。
男性アーティストではBurnaBoy、Wizkid、Ckayの後に次いでFireboy DMLが抜ける(というか越える)のがほぼ確実だと思ってます。あとはタイアップするプロジェクト次第だと思ってて、その点では設立10周年を迎えたMavin RecordsのDon Jazzyが次に何を仕掛けてくるのか気になるところですね。
そんなわけで、2022年を彩ったナイジェリアのAfrobeatsを厳選して50曲にまとめたSpotifyプレイリストを作成しました。聴いて頂けたら嬉しいです。
今回も最後までお読み頂きまして誠にありがとうございました。アフリカ音楽キュレーターのアオキシゲユキでした。
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