見出し画像

AFROPOPを聴いてて時々耳にする「ロンドン!」の謎。

皆さんこんにちは!アフリカ音楽キュレーターのアオキシゲユキです。

Afropopの曲を聴いていると、曲が始まる前奏のパートで「前にもこのフレーズ聴いたことあるなぁ」という印象的なワードを耳にすることがよくあります。

例えばRema
彼の曲が始まる前には必ず「Another Banger」というフレーズが聴こえてきます。この「Ginger Me」だと曲が始まってちょうど17秒ぐらいのところですね。

Another Banger」ってどういう意味なのかと調べてみると、元々「Bang」には「騒がしい」とか「ドンドンうるさい」みたいな意味があって、「Banger」になると「古くてうるさい車」とか「爆竹」とか「ソーセージ」(焼くと弾けて割れる時の音)という意味があるようです。そこからスラング的に「弾けてるヤツ」とか「かっこいい曲」のような意味で使われるようになり、「Another Banger」になると「オレの曲は他よりもヤバイよ」とか「オレは周りとは違うよ」みたいなニュアンスになるんでしょうか。

ちなみに「Ginger Me」もアフロポップでは必ず出てくるワードで、個人的な意訳になってしまいますが「私を刺激して」とか「彼女(彼)は私に元気をくれる」のようなニュアンスになるんじゃないかと解釈しています。

またSimiの場合だと「Can You Simi Now」というフレーズが入ります。10月にリリースされたばかりのMs Banksとのコラボ曲「There For You」や、私の個人的なBangerである「No Longer Beneficial」でも冒頭に入ってきます。「See me」と「Simi」をかけてるわけですね。

このように、Afropopではアーティストそれぞれのサウンドロゴ的な決め台詞が曲の冒頭に入ってくるのが割と一般的です。もちろんそうじゃないアーティストもいて、Tiwa SavageYemi Aladeは自分のアーティスト名をメロディに乗せながら挿し込んできますね。

AfropopAmapianoの曲を数多く手掛ける名プロデューサーJulsは、必ず女性の声で「Juls Baby」というフレーズが入ります。大体Youtubeの自分のチャンネル名がまさに「Juls Baby」ですからね。


で、私がこの1年Afropopを聴いてきてずっと謎だったのが、

「ロンドン!」

なんです。

例えば最近のリリースで言えばWizkidのアルバム「Made in Lagos」の収録曲「Gyrate」とか、

あるいはTiwa SavageSam Smithをフィーチャーした「Temptation」とか

同じくTiwa Savageの「Koroba」だってそう。

この渋い声でつぶやく「ロンドン!」が一体何なのか、初めは全くわかりませんでした。ロンドンでレコーディングしたからなのか、あるいはもしかしたら単純にロンドンが好きなだけなのかも知れない。しかし、誰の曲だったとしても必ず同じおっさんの声で「ロンドン!」が入ってくる。だとしたらコレには何らかの意味があるはずだ。私の中の金田一少年がロンドン事件の真相を明かさずには居られなくなりました。

まず最初に立てた仮説は、とあるスタジオでレコーディングすると特典としてもれなく「ロンドン!」が付いてくるという説。しかし、同じアルバムなのに「ロンドン!」が入ってる曲と入ってない曲があることから推測すると、イマイチ合理的な解釈ではないような気がしました。
そんな時に偶然見つけたのがCrayonの「One Code」という曲。

Crayon - One Code Ft. London」ってフィーチャーリングされてる!!



「ロンドン!」って人なんだ!


もはや衝撃でした。世の中に「ロンドンさん」という人がいたんです。
つまり楽曲の製作に関わっているアーティストもしくはプロデューサーの「ロンドンさん」が曲の冒頭に自分のサウンドロゴを差し込んでた訳です。

じゃ、その「ロンドンさん」って一体どんな人なの?という興味が自然と湧くわけなんですが、これがよくわからない。手がかりを探してTiwa Savageのアルバム「Celia」のWikiを調べてみたところ、確かにプロデューサーの欄に「ロンドンさん」のクレジットはしっかり出ていました。

画像1

どうやら「ロンドンさん」はプロデューサーらしい。しかし、Googleで「London producer」と検索してみても、一発目に出てくるのはLondon On Da Trackというプロデューサーで、彼はTiwa SavageWizkidとは関わっていない。そこでさっきのCrayonを手がかりにしようと思い調べてみたら、なんと「ロンドンさん」ご本人をTwitterで発見することができました!

画像2

https://twitter.com/thisizzlondon?s=20

間違いない!Tiwa Savageの「Temptation」と「Koroba」はオレがプロデュースしたって言ってるし。更にスクロールしていくとWizkidも出てきたしCrayonも出てきた。

良かったー。とにかくすっきりした。謎は全て解けた。

それはそうと、Crayonは天下のMarvin Records期待の新人でRemaとはほぼ同期入社のレーベルメイトです。Remaが先に好スタートを切って今年大躍進を遂げましたが、MarvinからAfropopシーンに送り込まれる次なる刺客は間違いなくこのCrayonのはず。すでにTiwaWizkidとの楽曲制作でも良い成果を残してる「ロンドンさん」は今後のCrayonの、あるいはAfropopアーティスト達全体のクリエイションにおいても欠かすことのできない名参謀役になるのかも知れませんね。彼らの今後の活躍に期待大です!
もし偶然聴いていたAfropopのイントロで「ロンドン!」が聴こえてきたら、それは間違いなくNext Bangerです!

という訳で今日はAfropopを聴いてて時々耳にする「ロンドン!」の謎でしたが、結局のところ「ロンドンさん」についての詳しい情報はほとんどなくて、彼のバイオグラフィーについては未だ謎に包まれたままという結果でした。

そして余談になってしまいますが、今回色々と調べていた中でTiwa Savageの「Temtation」にはソングライターとしてFireboy DMLが参加していたことも知りました。元々デビュー当時からソングライティングの評価が高かったFireboyですが、今年リリースされた新作を聴いていても実験的な要素を意欲的に入れてきてる印象が強かったので、彼の作曲家としての今後の活躍もかなり期待できるんじゃないかと思ってます。

以上、金属製蝶ネクタイ「Metal Butterfly」プロデューサーでアフリカ音楽キュレーターのアオキシゲユキでした。

画像3


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?